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年間500冊以上をレビューする書評家が明かす、強制テレワーク時代に必須の「文章力」を鍛える方法【印南敦史『書評の仕事』】
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  • 2020.05.04
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年間500冊以上をレビューする書評家が明かす、強制テレワーク時代に必須の「文章力」を鍛える方法【印南敦史『書評の仕事』】

印南敦史

作家、書評家

1962年東京生まれ。 広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、 音楽雑誌の編集長を経て独立。一般誌を中心に活動したのち、2012年8月より書評を書き始める。現在は「ライフハッカー[日本版]」「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「マイナビニュース」「サライ.JP」「WANI BOOKOUT」など複数のメディアに、月間40本以上の書評を寄稿。
著書は新刊『書評の仕事』(ワニブックスplus新書)、『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』 (星海社新書)をはじめ、音楽関連の著書も多数。

はじめまして。このたびFINDERSに寄稿させていただくことになりました、作家/書評家の印南敦史と申します。どうぞよろしくお願いします。

まずは簡単な自己紹介から。上記のプロフィールにもあるように、僕は広告の仕事をしていた30代のころ音楽ライターになり、音楽雑誌の編集長を経てフリーランスになった人間です。

独立したのは1996年ごろですので、かれこれ25年近くひとりで仕事をしてきたことになります。独立後はライターとして、おもに大手出版社の男性向けクオリティマガジンを中心に活動していましたが、リーマンショックと前後して、それらの媒体が相次いで休刊。時代の流れではあるのですが、相当な地獄を見ることになったのでした。

当時を思い出すといまでも気が滅入りますが、2012年の夏に「ライフハッカー[日本版]」から「書評を書きませんか?」と声をかけていただいたことから、流れが変わっていったのです。

ちなみに、そののち「ライフハッカー[日本版]」の編集長になられたのが、FINDERS編集長の米田智彦さん。ですから、またご一緒に仕事ができることになったことをうれしく感じ、同時になんだか不思議な話だなぁと思ったりもしています。

ところで僕は実を言うと、そんな経緯で声がかかるまで、自分が書評を書くことになるなどとは思ってもいませんでした。にもかかわらず予想以上の多くの方に読んでいただけるようになり、以後も書評家としての実績を積み上げていくことができるようになったので、正直なところ感謝しかありません。

別に人より秀でていたわけではなく、目の前にある“やるべきこと”を愚直に続けてきただけだと思っているのですが。

いずれにしても、毎日コツコツと執筆を続けてきた結果、気がつけば今年の夏で8年。ありがたいことに書評家としての知名度も多少は上がったようで、ワニブックスPLUSの編集長から「書評についての本を書きませんか?」という提案をいただいたのでした。

そうして生まれたのが、今年4月の初旬に発売された新刊の『書評の仕事』。前置きが長くなりましたが、今回は僭越ながら、本書についての“セルフ・ライナーノーツ”を書かせていただこうと思います。

多くの仕事に応用できる「要約力」を身につける

この本はタイトルからも想像できるとおり、出版業界の事情、書評のあり方、書評家としての考え方、本の選び方や読み方、まとめ方、文章の書き方、その他いろいろなことを、自分の経験に基づいて綴った一冊です。

もしかしたら、「別に書評なんか書かないから関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際のところ、書評に関するいろいろなテクニックは、書評を書かない人にとっても有効なものだと思っています。

書評を書くにあたっては、「読みかた」「書きかた」「選びかた」「接しかた」「考えかた」など、さまざまなことが必要とされます。そして重要なポイントは、そういったすべてのことが多くの仕事に応用できるということ。

書評を書くにあたっては、本の内容を簡潔にまとめなければなりません。その過程で用いるスキルは、要点を短時間で伝えることが求められる企画書の作成などにも活かせることでしょう。それはほんの一例ですが、応用できることは決して少なくないのです。したがって、多様な仕事に携わる読者の方に役立つ、ちょっとしたスキルを提供することもできるのではないかと考えているわけです。(「はじめに」より)

もっと言ってしまえば、僕らは基本的に日本語を用いているわけです。だとすれば、どんな仕事をしているにせよ、「押さえておくべき点」にさほどの差はないとも言えるのです。

たとえば僕は本書のなかで、書評を書くにあたって「要約力」が必要であるという主張をしています。そして、以下の7つのポイントを踏まえ、実践し、習慣化できれば、無理なく要約力は身につけられると断言してもいます。

1:誰に向けるのか、ターゲットを明確にする(自分なのか、他人なのか)
2:そのターゲットが求めているもの(ニーズ)を見極める
3:当該書籍の目次をチェックし、ニーズにかなった部分を探し出す
4:その部分を、どう伝えるべきかを“具体的に”考える
5:“わかりやすさ”を意識しながら、その部分を簡潔にまとめる
6:書き終えたあとで推敲し、問題があれば修正する
7:「あれが足りなかったのでは?」などと考えず、よい意味で割り切る
(149〜150ページより)

僕も、書評を書くために要約をする際には、これらを常に意識しています。こうした流れに沿って進めていけば、たいがいの本をまとめることができるからです。

そして、お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、これら7つのポイントはどのような仕事にも活かせるものであるはず。

逆に言えば、対象がなんであれ、ターゲットやそのニーズが不明瞭で、伝えかたが曖昧で、説明が過度で難しく、ツメが甘かったとしたら、それはもう話にならないわけです。したがって“どんな仕事にも活かせる”という考え方は、あながち的外れなものではないと確信しているのです。

繰り返しになりますが、日本語という“ことば”を使っているという共通項があるのですから。

「読む人を想像する」とはどういうことか

それから、すべての仕事に共通する、もうひとつの重要なポイントについても触れておきたいと思います。それは、「読む人を想像する」ということ。

書評を書き始めたときから、僕は読者像を具体的にイメージしてきました。年齢は何歳くらいか、どんな性格か、仕事についてどんな考えを持っているか、どのような姿勢で仕事に臨んでいるか、目標をどこに設定しているか、書評になにを求めているかなど、いろいろ具体的なことを細かく(勝手に)想像したのです。(191〜192ページより)

マーケティングのようなことをしたわけではなく、あくまで“感覚的に”思い描いてみただけの話。しかし結果的に、長所だけでなく短所や弱点までを細かくイメージしたことは無駄ではなかったようです。

なぜならそのイメージは、あとから確認した媒体資料に書かれていたこととほぼ合致したから。自慢したいわけではなく、「相手」のことをなるべく具体的に考えることは、すべてのコミュニケーションに好影響を与えるものだと訴えたいわけです。

「相手」は本における“読者”だけではなく、ビジネスの場で関わる“クライアント”、 “(プレゼンテーションの)オーディエンス”などにもあてはまるということ。だから、「書評なんか書かないから関係ない」という問題ではないのです。

そう確信するからこそ、読んでいただければ、ピンとくる部分がきっと見つかるのではないかと思っています。

などと、やや熱が入ってしまいました。ただし、決して硬い内容ではないのでご安心を。「文筆業は儲かるのか?」「書評家の『収支』」などの裏話や、ヒップホップ/ラップ、あるいはDJカルチャーから学ぶべきものなどにも触れていますので、純粋に読み物としても楽しんでいただけると思います。

ぜひ、手にとってみてください。


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