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「もったいない精神」の日本人がドレスコード「サステイナブル」でチーズ飲み会をやってわかった興味深い傾向【連載】オランダ発スロージャーナリズム(20)
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  • 2020.01.24
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「もったいない精神」の日本人がドレスコード「サステイナブル」でチーズ飲み会をやってわかった興味深い傾向【連載】オランダ発スロージャーナリズム(20)

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吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

今年の仕事始め早々の1月8日。FINDERSのイベントスペースをお借りして、「オランダチーズの会 supported by FINDERS」を開催しました。

「オランダチーズの会」とは、オランダ在住の筆者が、日本に一時帰国する際、チーズをお土産として持ち帰るので、それを肴にみんなでお酒を飲みましょう、という会。もともとは筆者が入居していたシェアオフィスでの内輪の飲み会だったのですが、チーズは沢山あるし、芸達者な人たちが集まるので、せっかくなら広く声をかけてみようか?というごくごくかるーい気持ちで始めた飲み会。ほぼSNSのみでお声掛けをしていますが、なぜか毎回大盛況。今回も会場のキャパマックスの40名ほどが集まりました。

そもそも開催場所自体、東京だったり、福岡だったりとまちまち。また筆者の帰国タイミングに合わせて行うので時期も不定期。しかも、もともとは「内輪の飲み会」だったので、もちろん営利目的でもなく、各自飲み物持参、なんなら食べ物もお願いしますといった感じ。もちろん準備、片付けも全て参加者みんなで行い、誰でも参加してもらえるように参加費用もできるだけ安くしています。

こんな感じなので、今までの参加者は下は赤ちゃんから、上は70代までと年齢も幅広く、参加者も多種多様。それでいて多才で多彩な人が集まります。

日本企業の間でもようやく「サステイナブル」「SDGs」の関心が広がる

さて、そんなオランダチーズ会ですが、今回はなんと我らがFINDERSが会場を貸してくれるというではないですか。

ということは、この会のことを当連載記事にしない手はない。そのためには、少しネタがあったほうがいいのでは?と考えて、今、ヨーロッパで吹き荒れている「サステイナブル」を、ドレスコードに設定してみました。

ドレスコードといえば、通常は「フォーマルな装いで」、「何か黒いものを着用してきてください」といった感じだったりするわけですが、今回のドレスコードは「サステイナブル」という謎めいた指定をしてみました。

実はオランダチーズの会の参加者は、職業に関わらず一様にクリエイティブな人が多いのです。しかも、今回は我らがFINDERSのサポート。そう、FINDERSといえば、創刊時から「クリエイティブ×ビジネス」がテーマだったりもします。ということで半ば強引な理屈づけですが、参加者は何かしらの工夫をして来てくれるだろうという独断と偏見、いや完全に参加者頼みというノリで、勝手にドレスコードを「サステイナブル」にしてみました。

さてさて、このサステイナブル。実は、今までにもこの連載で何度がテーマにしています。2015年以降、ヨーロッパではカルチャーとしてもビジネスとしても完全にこの概念にシフトしており、すべての経済活動や仕事の前提はこれ、と言っても過言ではないほどです。

ちなみにここで言うサステイナブルとは、「地球環境を壊さず、資源も使い切らず、できるだけ持続可能な状態を維持し続けながら経済活動をしていく社会」のことを指しています。

日本でも昨年9月あたりから、2019年TIME誌の今年の顔に選ばれたスウェーデンの気候問題の活動家グレタ・トゥーンベリさんの話題や(この連載でも「女子高生がたった1人で始めた抗議を学校や政府が公認。「フライデー・フォー・フューチャー」は世界を救えるか?」と題して取り上げました)、立て続けに日本を襲った大型台風などの影響から、持続可能な地球環境を目指すSDGs(国連が定めた2030年までの持続的な開発目標)などが急に注目されるようになっています。環境破壊などによる気候変動の影響が実際に、世界中の人が実感できるほどになってきてしまっているからです。

筆者のところへも、ヨーロッパでの「SDGs」や「サステイナブルエコノミー」の話をして欲しい、セミナーをして欲しいという企業・団体からの依頼が昨年9月以降、急に増えてきました。実は筆者の住むオランダは、ヨーロッパの中でもサステイナブルエコノミーをリードする国の一つでもあるからです。イギリスやドイツ、そしてフランスなど列強に囲まれたオランダは、歴史的に「実験国家」という側面が強いのですが、今はどこの国より早く「サステイナブル」という方向に舵をきっています。列強に囲まれている小国なので、どの国よりもいち早く取り組み、それを他の国に使ってもらう、買ってもらう、などしていかないと生きていけないことを歴史的に自覚しているからです。

ということで、こういう前提があるヨーロッパやオランダと、日本とでは果たして「サステイナブル」に関して、どのくらい差があるのだろうか? いや、実は個人レベルではそんなに意識の差がないのか? といった反応を見てみたい、などと思ったことからドレスコードを設定してみました。

ドレスコード「サステイナブル」の実態はいかに?

当日は自己紹介も兼ねて、一人一人がどんな「サステイナブル」で参加したのか?を発表してもらいました。

ちなみに、はじめにお伝えしておくと筆者は今回のドレスコードの発案者でもあるので、責任を持ってしっかりとサステイナブルファッションを着て行きました。上下ともに、ARMEDANGELSというドイツのサステイナブルブランドのもの。化学肥料フリーのオーガニックコットンなど環境に配慮した素材のみを使用し、労働環境への配慮やフェアトレード、そしてチャリティーなどを経営哲学として持っているブランドです。特に筆者も当日着用していったデニムは、「デトックスデニム」という、環境だけではなく、人間の肌にも優しい素材だけを使用している逸品です。

オランダやドイツ、そして北欧などでは、ファッションに関しても、こうしたサステイナブルブランドが非常に増えてきており、若者も「そのブランドがどういう哲学を持っているのか? ポリシーを持っているブランドか?」ということを吟味して買う傾向があります。ファッション業界は、染料などの化学汚染の問題や、大量に出る端切れ、リサイクルに回されたとしても結局は大量に破棄されている洋服の現状や、シーズンごとに破棄されるファストファッションの影響、劣悪な労働環境などなど、実はサステイナブルからかなり程遠い業界といわれています。

ヨーロッパではこうしたファッション業界の改善に積極的に取り組むブランドの人気があったりするのです。実は筆者も以前、オランダで通っていた大学院の友人に、こうしたブランドを教えてもらったのがきっかけで、今では持っている服も、これ系のブランドのものが増えてきています。

サステイナブルエコノミーと「もったいない精神」

まず参加者の中で一番多かったのは、古着やリサイクルショップで購入したもの、そしてお母様からの譲り受け、中にはお祖母様からの譲り受けを着てきた、というパターンでした。もしかしたら、今回はたまたま良家のお嬢様が多く参加してくれていたのかもしれませんが、一つのものを大切に、長く使用する、というパターンが多く見られました。確かに、これも立派なサステイナブル。古着なんかは、今風にちょっとしたアレンジをしたりして、とてもお洒落でもありました。

ただ、面白いのは、実はこれは極めて日本的なサステイナブルかもしれないということです。オランダやヨーロッパでも、もちろん古着やリサイクルという文化もありますが、最近は特に、「サステイナブルブランド」なるものが、興隆してきています。デニムでもサブスクリプションモデルが導入されていたり、もともと100%リサイクルされる仕組みが導入されていたりします。アディダスやH&Mといった有名メーカーでも新しい取り組みを始めており、ヨーロッパのサステイナブルは「持続可能な環境を作りながら経済的にも発展する」ということを大きな目標としているので、この辺は、単に古着としてリサイクルするだけではなく新しい経済モデルが導入されていたりします。もしかしたら、この辺が少し日本と違うのかもしれないなあ、と感じました。

また、男子というか、おじさんに多かったのが、「ファッションには興味がないので、20年同じものを着ています」「同じ服をできるだけ着るようにしてます」「妻と兼用しています」「これから、この服をながーく着ようと思います」といったようなファッションには興味ない=結果的に節約的なサステイナブル、というパターンでした。

上記のリサイクルや古着の利用も含めて、どうしても「節約」的な傾向が強いのが日本の特徴かもしれません。中には、「お母さんはケチだから、そもそもそれがサステイナブルじゃない?」とお子さんに言われました、という参加者の方もいました。おそらく、これらはどちらかと言うと、「ダウンサイクル(素材の価値が損なわれる方向で再利用すること)」と呼ぶのに対して、ヨーロッパは同じリサイクルでも、そこに新たな付加価値をつけたり、環境に配慮した新たな商品に変化させたりする「アップサイクル」が本流になっている感じがします。この辺は、いわば「もったいない」という価値観を持っている国、日本の本流発揮かもしれません。

ほかには「単純にデザインが気に入って買ったけど、今日のために調べたら、なんとサステイナブルブランドの靴でした」という人がいたり、「端切れや、譲り受けられるボタンなどを使って自作の服を着て来た人」がいたりと、かなりのサステイナブル上級者もいました。ちなみに、靴はフランスのブランド、自作の服で来てくれた人は、「前日にデンマーク留学から帰ってきました」という人だったり。また、インドから一時帰国のタイミングで来てくれた人は、「インドの自宅には、サステイナブルなインドの衣装がある」「インドはビニール袋が一気に禁止になった」といった話を教えてくれたり、また台湾から来てくれた人は、トラックの帆をリサイクルした製品で知られるフライターグ(FREITAG)の財布を見せてくれたり。この辺はやはり海外在住者や、海外に何かしら繋がりがある人には、比較的馴染みのあるテーマなのかな?と思えたりした点でした。

その他には、「自転車でここまで来ました」という人、「再生プラスティックでつくったイヤリング」をつけて来てくれた人、「今まで自分で使用していた眼鏡を溶かして、新しい眼鏡を作って」きてくれた人など、サステイナブルなドレスコードの解釈も多彩で非常に面白い会になりました。

おそらくオランダとは、だいぶ違う形のサステイナブルなドレスコードかもしれません。しかし、ヨーロッパからの、あるいは古の日本の文化や考え方などに影響を受けたりしながら、日本独自のサステイナブルな解釈や、ファッションが生まれる可能性は十分にあるのではないか?と感じました。そもそも日本建築や里山的な暮らしなど、日本は元来世界に誇るサステイナブル文化の宝庫だったはずのですから。

そうそう、風呂敷をバンダナ風に、あるいはスカーフ的に、あるいはハチマキ的に?身につけて来てくれた人もおり、ちょっとしたバッグ代わりにもなるし、こんなのヨーロッパでも流行るのでは?と思いました。

また、極めつけは「今までは、こうしたことをあまり考えたことがなかったけれど、そして何もサステイナブルな服を着ていませんが、今日、こうした会に参加して、みなさんの話を聞いたことで、すっかり自分もサステイナブルな気分を身に纏うことができました」という話をしてくれた人がいたこと。

もしかしたら、このような発言が出てくること、また周りでそれを聞いた人が、その意見に大きく賛同したこと。こうしたささいなきっかけが生まれただけでも、「サステイナブル」なドレスコードで開催した「オランダチーズの会」は成功だったのではないか?と感じました。

みなさんも、身近なところからサステイナブルな活動、始めてみるのはいかがでしょうか? きっと新しい発見があると思います。

最後に、ここまで一言もオランダのチーズの味には触れませんでしたが、「まあ、普通に美味しい」という感じでしょうか。美食の国日本には、粗食の国オランダのチーズは逆立ちしても敵いませんので。

ということで、ご参加いただいたみなさんのおかげで楽しい会になりました。本当にありがとうございました。そして最後になりましたが、会場を提供いただいたり準備や片付けなどをしていただいた、編集長の米田さんをはじめ、FINDERS編集部のみなさん、本当にどうもありがとうございました。

みなさんも次回はぜひ参加してください。みなさんのサステイナブルを見てみたいです。開催するかわかりませんが…。


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