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ミニ四駆やLEGOに似た感覚で学べるプログラミング教材。深セン発・Makeblock日本支社代表に直撃インタビュー!
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  • 2019.12.05
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ミニ四駆やLEGOに似た感覚で学べるプログラミング教材。深セン発・Makeblock日本支社代表に直撃インタビュー!

写真左に写っているのはマーケティング・広報を担う東野万美氏。ベンチャーキャピタル「500 Startups Japan」で起業家コミュニティづくりに携わった後、深センのスタートアップコミュニティに惚れ込みMakeblockに入社。

子どもの頃に遊んだおもちゃというのは一生覚えていたりするものだ。筆者もLEGOやダイヤブロックが好きで色んなものを組み合わせて作って楽しんだ記憶があるし、プラレールに没頭して自分だけの街を作っている気分に浸ったこともよく覚えている。

未来の子どもたちにとって、そんな思い出のおもちゃの一つになるかもしれないのが中国は深センからやってきた「Makeblock」である。好きなパーツを組み合わせてロボットを作り、動作をプログラミングすることでおのずと基礎が学べるというものだ。

今回、日本支社の菊池裕史代表にインタビューを行ったのでその様子を紹介する。

聴き手:高見沢徳明、米田智彦、神保勇揮 文・構成:高見沢徳明 写真:神保勇揮

菊池裕史

Makeblock Japan株式会社
カントリーマネージャー

GoogleにてGoogle for Education 日本統括責任者として勤務した後、ソニー・グローバルエデュケーションにて、ロボット・プログラミング教材 KOOV の事業責任者として勤務した。NPO法人 Collable 理事および札幌新陽高等学校 CIO を兼任。

はじめてのプログラミング、はじめてのロボットになれる存在

菊池裕史氏

ーー まずはMakeblockの成り立ちを教えていただけないでしょうか。

菊池:2013年にCEOの王建軍(ワン・ジェンジュン)が深センで創業しました。今、従業員は全世界で600人ほどです。現在の事業の切り口はハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、大会の4つで取り組んでいます。

最初はロボティクスとプログラミングを一緒に学べるよう「mBot」を作っていましたが、その後ドローンや未就学児向けのプログラミング教材、あとは子どもたちがモノづくりをしやすいようにレーザーカッターでデジタルファブリケーションができる仕組みを作ってきました。

ーー 菊池さんはMakeblockに入社するまでの間、どんなキャリアを辿ってこられたのでしょうか?

菊池:学生の頃は教育工学を専攻していて、インターネットやデジタルデバイスによって教育をいかに効率よくするか、何をどうすれば生徒や学生のモチベーションが上がるのかといったことを研究していました。

大学時代にGoogleの教育事業(G Suite for Education)の立ち上げを手伝い、日本での事業統括を担当し、次にロボット・プログラミング学習キットの「KOOV(クーブ)」の開発や、世界規模のオンライン算数大会「世界算数」の運営などを行うソニー・グローバルエデュケーションに入社して、Makeblockに転職したという流れです。

ーー 菊池さんとしては「教えること」と「教えるためのツールや仕組みづくり」のどちらにより興味関心が強いと考えていますか?

菊池:自分は大学の教員もやっていましたので、両方ですね。ただツールづくりに携わるのは、より多くの人に活用してもらい、生活や学び方を変えてほしいという思いがあるからです。教師は素晴らしい仕事ですが、影響を与えられるのは直接教えた生徒のみに限られます。自分としては1億人、2億人に影響を与えられる仕事もしたいということです。ただそう言いつつ5年後には先生をやっているかもしれません(笑)。

あと今はMakeblockの仕事以外にも札幌新陽高等学校のCIOもやっているのですが、ITを使った、生徒の学習を促進するような環境づくりのお手伝いもしています。色々なことをやりながら軸足はMakeblockというところです。

ーー それではMakeblockが提供する、ハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、大会の4つについて教えていただけますでしょうか。

菊池:まずハードウェアですが、当社で最も有名なプログラミングロボットキットが「mBot」シリーズです。

Makeblockを一躍有名にしたmBotシリーズ。スターターキットは家電量販店やネット通販などで購入可能

アルミで作られていて、拡張パーツもたくさんあるので、アイデア次第でいろんな動作をさせることができます。例えば腕にマレット(バチ)をくくりつけて、木琴を叩かせたりだとか(笑)。

ーー 腕のパーツにくっついている輪ゴムを見ると、良い意味でのアナログさも感じますね(笑)。

菊池:そうですね(笑)。ただ何もかも最新テクノロジーだけで対応しなければいけないわけではないですし、デジタル・アナログ問わずいろんなアイデアを試してクリエイティビティを養ってほしいという気持ちもあります。

次にドローンの「Airblock」ですが、発泡スチロールでできており、200gを切るほどの軽さで、日本の航空法の規制にも引っかからないようにしています。見た目は重そうですがすごく軽いんです。

知育ドローン「Airblock」。スマホやタブレットにダウンロードしたアプリを通じて操作ができ、もちろんプログラミングも可能。もし壁にぶつかってもすぐに組み立て直せる。

ーー すごい! 各パーツは何でくっついているんですか?

菊池:磁石で連結しています。組み合わせ方によっては、水陸両用のホバークラフト、機動性のある小型ジェットにもできるんです。

加えて、当社ではロボットだけでなく、「Neuron」という音声センサー、光センサー、人感センサー(赤外線センサー)などの30個以上の電子モジュールからなる製品も販売しています。これもモジュールとモジュールが磁力でくっつくようになっていて、ボタンを押したら光る、センサーに手をかざすとブザーが鳴るといった動作を通して、IoTの仕組みを簡単に学べるツールとなってます。レゴブロックなんかとも組み合わせられますよ。

遊びながらIoTの仕組みを学べる「Neuron」。全部で30種類以上のブロックがあり、こちらも専用アプリやmBlockを使ってプログラミングできる

複数の製品にまたがってビジュアルプログラミングできる「mBlock」も開発

ーー これらの製品はどうやってプログラミングするんですか?

菊池:プログラミングする時には「これにはソフトA、これにはソフトB」といった製品に紐付いたソフトを使わないといけないことが多いのですが、私たちは「mBlock」という、複数の製品にまたがってビジュアルプログラミングができるソフトウェアを開発しました。「○○を✕✕秒動作させる」といったそれぞれの命令内容がブロックのようになっており、ドラッグアンドドロップでブロック同士をくっつけるだけで実行できます。これをPython(プログラム言語)で書き換えることもできます。

mBlockの操作画面

またmBotはArduino(アルドゥイーノ)という、Raspberry Piのような電子工作向けのオープンソースの基盤を採用しており、プログラミング言語もC/C++言語をベースとしているのでとっつきやすく、本格的なプログラミングの第一歩を踏み出したいという子にも対応できるようにしています。

ーー これはPepperのプログラミングをするツール(Choregraphe)に似ていますね。

菊池:mBlockは「Scratch」というプログラミング言語学習で最も有名なシステムに強い影響を受けているので、ビジュアルプログラミングのプラットフォームという意味では似ているのかもしれません。ScratchはPC上でアニメーションを動かすための言語ですが、Makeblockの場合はキットを自分で組み立てるところから始めるのが大きな違いです。

ーー なるほど。ただ子ども向けということは、学習プログラムみたいなものもきちんと揃えているんですよね?

菊池:はい。ただハードウェアがあるだけでは子どもたちがどう学んでいいかがわからないので、教材をいろいろ作っています。深センに「STEMエデュケーションセンター」という30名ほどの教材開発の部署があるんですが、例えば「1時間の授業で先生がどうやって説明していくか」というところまで設計したプログラムを用意しています。

ちなみに、10月に発売した新製品「mTiny」は4歳以上の幼児向けなんですが、動作を命令する司令カードと地図パネルを組み合わせて、プログラミングソフトも不要でパズルのような感覚で「機械に命令を与えて動かす」ことが学べるんです。

mTiny本体の下にあるマップは、絵の内容と連動して動作する仕掛けになっている

mTinyの場合は、絵本のストーリーのように「次はこの動作で動かしてみよう」という流れで各機能が学べるようになっています。

mTinyのレッスンブック。本体コントローラーも兼ねているタッチペンで触れるとタスク内容が音声で再生される

世界中の子どもが集う大会を年に1度開催

ーー ここまでハードウェア、ソフトウェア、コンテンツのお話をうかがってきましたが、大会はどんなものを開催されているのでしょうか?

菊池:深セン・杭州で毎年12月に「MakeX」という世界大会を開催しており、今年は約50カ国が参加しています。これを始めたきっかけとしては、STEM教育の領域は学習の評価をするのが難しいということがあるからなのです。

例えば国語や算数などはペーパーテストによって成果を測ることはできます。ですがプログラミングに関しては機能やコードを暗記できたからといってイコール技術や創造性があるとは言えません。そこを評価するのが大会というのが位置づけなのです。

ーー 大会では何を競うんですか?

菊池:毎年異なる課題を出して、その得点を競い合います。今年のテーマは「シティガーディアン」でした。マップ上に赤と青の異なる地域があって2人が対戦形式で競います。

2019年のMakeXで使われた競技マップ

競技は「老朽化した発電所の解体」「障害物除去」といったテーマに基づく、事前に発表された指令を実行するためのプログラミングをあらかじめ組んで動作させる「オートマティックステージ」と、2チームが共同でロボットをその場で動かし、ミッションを攻略する「マニュアルステージ」の2つの獲得得点の合計を競い合うというものです。

例えば「廃棄物の分別」というミッションがあるんですが、色を識別するセンサーがを用いて片付けたりします。mBotは腕も付けられますので「木を植える」といった動作も可能です。あとは火力発電所は環境に良くないから倒すとか(笑)、そういったことで加点されます。また、対戦相手同士で協力しないとポイントにならないというタスクもあります。

MakeXの模様

プログラミングに触れた子どもが、大人になってどんな創造性を発揮するか

ーー 日本では2018年にメディアで深センブームが到来して「こんなに活気が溢れて起業もどんどん増えているのに日本は何をやっているんだ…」みたいな“日本スゴイ”の逆バージョンみたいな記事がたくさんバズりましたけど、菊池さんから見て深センはどのように映っていますか?

菊池:よく言われていることですが、技術者というかタレントが揃っていて、かつエコシステムが存在しているのでプロトタイプの生まれる速さが圧倒的です。ハードウェア作る企業にとってはものすごくいい環境です。

ーー 2年前に深セン行った時にやはり華強北に行ったんですが、ドローンが5000円ぐらいで売られていて、それでもちゃんと動いたので驚きました。でもきっと1、2カ月ぐらいで故障するんでしょうが(笑)。

菊池:製品になる前のプロトタイプがそのまま売られている感じですね。

ーー 中国、というか深センと日本の子どもでプログラミング教育における違いはあるものなんでしょうか?

菊池:中国は国主導でやっているところ大きいですね。特に北京、上海、深センあたりが熱心です。モノ作るにも粘土とかじゃなくて3Dプリンターを使ったりと、テクノロジーに対する親和性が高い。

とはいえ、これも良し悪しなんですよね。日本でも「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」という、加盟国の15歳の生徒を対象にした学力テストやると必ず数学や理科ではTOP3に入るんです。アナログな教育やっているけど識字率も高いし、算数の掛け算が全員できるのは未だに一部の国だけです。テクノロジーにすごく強いわけでないものの、そういうところの良さはあります。

ーー 今後、Makeblockはどんな展開を考えていますか?

菊池:2020年度には小学校でプログラミングが必修になりますが、そこの市場に入っていけるようにしたいというのは考えています。その後も2021年度の中学校の指導要領の変更でやはりプログラミング教育が取り入れられたり、2024年の大学入試にもプログラミングが採用されたりすることが決まっており、日本で高度教育を受けている人は何かしらプログラミングに関わっているようになります。そこにも関わっていけるような製品やサービスをリリースしたいと考えています。

ーー 具体的にこんな戦略で、こんな風に動いているというのはあるのでしょうか?

菊池:もっとプログラミング教育やメーカー教育が世の中に広まってほしいと考えています。ですので、学校教育だけに留まらず、一般のコンシューマーユーザーや塾のような学校外の教育施設にもしっかりツールを届けられるようにしたいですね。

ーー 今の30歳前後の世代は、中高生の頃に個人ホームページ作成が流行ったので男女問わずHTMLやCSSの知識がある人がわりといる、みたいなことがあって実際仕事にも役立つことがあるんですが、Makeblock製品で遊んだ子どもたちも大人になった時に「プログラミング、そういえば昔やったな」という感じで活躍しそうですね(笑)。

菊池:自分も同世代なのでわかります(笑)。今の子どもはもっとすごくって、iPhoneアプリを自分で作るためにプログラミング教室に通うことも当たり前なんです。Unityで3Dモデリングをやってたりもして。

ーー 「子ども時代にLEGOブロックで遊んだよね」というような共通経験を、今後は「Makeblockで遊んだ」という世代にしていきたいというわけですね。マインクラフトが子どもの間で流行っている、という現象に驚かされたのもつい最近のことですし、「教育」という堅いイメージだけではなく、例えばミニ四駆のようなエンタメとしても広がっていきそうな気がします。

菊池:そうなるようにしたいですね。今、うちの3歳の子どもがmTinyで遊んでいますので、今後の成長がすごく楽しみです(笑)。

頭の中に浮かんだイメージを具体化し、動かすことがサポートする会社がMakeblockである、というのが会社のビジョンです。21世紀は創造性の時代であるとよく言われますが、そうした能力を具体的に育める企業として頑張っていきたいと思います。

筆者は小学生の頃、組み立てるだけのラジオを作ったものの動かなかった経験がある。はんだの付け方がよろしくなく、電子回路に熱が入ってダメにしてしまったことが原因だった。今思えば気にせず作り直せばよかったのだが、とても自信をなくす苦い経験であった。

そんな自分が今やっているのは、ウェブサービスのコードを書いては日々テストし続ける仕事だ。ものづくりは日々の失敗の上に成り立つ活動でもある。動いた時の感動があるからまた続けられる。楽しく学べる教材があれば、モノづくりで挫折する人は減るだろうし、もっと今までにない新しい価値を生み出す人の割合も増える。そこにコントリビュートする人たちの姿には夢があると感じた。この熱狂は、ぜひ大人にも体験してほしい。


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