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AIがキュレーションしたアートを企業のオフィスに。老舗ギャラリー出身者が立ち上げた「ArtScouter」
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  • 2019.11.01
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AIがキュレーションしたアートを企業のオフィスに。老舗ギャラリー出身者が立ち上げた「ArtScouter」

オフィスにアートを導入したい企業向けに提携する国内大手ギャラリーの作品を提案するプラットフォーム「ArtScouter」が5月21日に開設した(現時点ではパートナー企業のみがログインしてサービスを利用できる)。

TAGBOATを筆頭に、気軽にアート作品を購入できるECサイトはここ数年でいくつも登場しているが、ArtScouterがユニークなのは、主にリノベーション会社や什器メーカー、空間デザイナーなど、アートの導入を提案する企業に向けたサービスである点だ。また、作品を選定するプロセスにAIを導入することで、アートに疎い人間であっても、空間に合ったアートを提案できる。

同サービスを運営するアートアンドリーズン株式会社代表の佐々木真純さんはどういった経緯で、国内のギャラリーとアートの提案を望む企業とをつなぐプラットフォームの立ち上げに至ったのか。今、ビジネスマンから熱い視線を受ける現代アートブームへの思いについてもお話いただいた。

聞き手・写真:神保勇揮 構成・文:石水典子

佐々木真純

アートアンドリーズン株式会社
代表取締役社長

高校卒業後、米国・カリフォルニア州に留学後、出版社、広告代理店にて勤務した後、日本初の現代美術ギャラリー、東京画廊+BTAPでの勤務を経た後、Fm(エフマイナー)にてアーティストマネージメント、ギャラリーの企画運営を主に担当。2018年にアートアンドリーズン株式会社を設立。5月21日からサービスを開始したArtScouterには、老舗ギャラリー東京画廊+BTAPをはじめ、小山登美夫ギャラリー、ANOMALYといった国内のトップギャラリーが参加。ビジネスパーソン向けウェブマガジン・ART HOURSも運営する。

アートアンドリーズン株式会社

 

「アートの専門家」でなくとも企業に提案できるサービス

ArtScouterのホーム画面

―― ArtScouterのようにアートを販売するBtoB向けオンラインサービスはこれまで、国内でなかったんじゃないでしょうか。ギャラリー向けのサービスとも言えるわけですよね。

佐々木:トップギャラリーが複数提携して企業向けにアートを提案しているウェブサイトは、確認した限り国内にはまだないと思います。ArtScouterはNTTドコモさんの協力のもとで始めたプラットフォームで、基本的にパートナー企業様が使うサイトです。もちろん、提携ギャラリーにとっても販路が増えるというメリットがあります。

―― 具体的にどういった内容のサービスなのでしょうか?

佐々木:パートナー企業は、オフィス空間を提案する企業です。ヒアリングを重ねるうちに、そういった企業の担当者は必ずしもアートの専門家ではないため、お客さんから「オフィスに絵を飾りたい」と言われた時に、どうすればいいのか分からないことが多いことが分かりました。ArtScouterはそういった悩みを解決するサービスです。

ペインティング、写真、プリント作品といったいろいろなジャンルの作品を揃えつつ、日本のトップギャラリーと提携し、そのギャラリーが扱う作品を登録することで作品の質を担保しています。

ArtScouterが2019年10月現在で作品を扱っているギャラリー一覧

―― 空間のプロデュースの希望には、具体的にどうやって対応されているんですか?

佐々木:提案内容はパートナー企業によって、ゼロから空間を提案するパターンと、すでにある空間に絵を入れるパターンと、色々と考えられると思いますが、CADで組んでいくゼロの時点からでも使えるサービスにしています。

―― 佐々木さんはキュレーションのプロですよね。キュレーターではなくAIがアートを選ぶメリットとはなんでしょうか?

佐々木:僕らのような専門家が作品を選ぶことはもちろんできるのですが、いかにキュレーターではなく販売パートナーさんが安心して最適なアートの提案をできるか、ということにこだわりました。その一つの解がAIだったんです。

今、NTTドコモの持っている画像認識の技術をAIと組み合わせて、例えば「明るい絵が欲しい」とか、「空間をもっとエレガンスにしたい」とか、そういった視覚的なキーワードから作品が抽出できるようにしています。さらにその作品やアーティストの背景や文脈などをブランドイメージにつなげていって提案できる仕組みになっています。

ArtScouterの画面より

また、パートナー企業に向けてセミナーやメールマガジンの配信、トークイベントなどを度々開いたりして、オフィス向けのアートの販売を担当する方が少しでもアートを身近な商品として扱えるような取り組みもしています。

―― アートを選ぶことであったり、オフィス空間に合ったキュレーションを佐々木さんやアートアンドリーズンに相談することはできるんですか?

佐々木:はい。会社のブランドや経営理念、企業文化などを表現し、かつ視覚的にもその会社の空間に合う作品を選ぶために、まずなるべく多くの対話を重ねるように心がけています。どのような社風で、どのような歴史があるのか、どのような空間なのか、などをコミュニケーションさせていただきながら把握をして、展示内容を見つけていくことが多いですね。

――一方で、ArtScouterには作家の説明や作品の背景がされていて、担当者が自分ひとりでも適切な作品を選べるということでしょうか。

佐々木:そうです。会社の稟議を通す時に、ただ「この絵、かっこいいですよね」だけではどうしても通りにくいので、納得してもらうための説得材料が必要な場合が多いです。ArtScouterを活用していただくことで、求められる作品のイメージ、サイズ、価格を簡単に抽出することができ、作品や作家の背景も知ることができます。この作品を抽出するプロセスは、AIでも代行できると思っています。肝心なのは、その後の担当者とお客様とのコミュニケーションです。つまり、抽出された「納得してもらうための説得材料」をお客様に合わせて提供できるか、という点です。

例えば、以前開催したトークイベントで、僕がかつて働いていた「東京画廊+BTAP」というギャラリーの代表の山本豊津さんが写真作品の説明をしていましたが、そのアーティストは元版画家で、ニューヨークに渡った時に今の恩師に出会い、写真家に転身します。白黒の写真は、白い部分と黒い部分のグラデーションがすごく綺麗だし、光をきちんと撮ることができる作家です。

この作家が版画家から写真家に転向して自らの世界観を表現するに至ったという背景と、新しいことに常にチャレンジし続けていくという企業文化とをつなげて提案することができるかもしれません。

オウンドメディアのART HOURSも、“使える”情報を意識して掲載しています。単純にアートのニュースを伝えるというより、絵を飾ることがどういう風にビジネスの役に立つか、アートを見ることが生産性にいかに作用するかといったことを専門家にインタビューしたり、作品を飾っている会社の事例などをカタログ的に紹介しています。もちろん、オフィスにアートの導入を提案する営業の方にも読んでいただける内容にしています。

手軽にアートを買えるオンラインを入口に

―― 日本ではオンラインでアートを買うことに、今だにピンと来ていないというところがあるんじゃないでしょうか。例えば洋服もオンラインで商品を見たときと店舗で見たときでは、若干印象が違いますよね。ネットでアートを買うことについて、あまり積極的ではないように思うのですが。

佐々木:海外ではアートを扱ったウェブサイトが根付いている事例はあるし、日本でもそういったサービスは増えてきています。まだネットでアートが爆発的に売れている状況ではないのですが、アートを取り扱ったオンラインサービスの導入は避けられない時代だと思っています。

それに感覚的なものですけれど、追い風のようなものは肌で感じています。これからはヒューマニズム、人間の倫理観や道徳観がより大切になってくる時代になると思っています。そのためにも、心の豊かさにつながるアートや物語のようなものが必要とされてくる時代なんじゃないでしょうか。

―― 実際にギャラリーに来て見て買う人と、オンラインで購入するユーザーの層は違うんですか?

佐々木:少し違う気がしますね。アートに関心を持ち始めた人たちにとって、ギャラリーで作品を買うのは敷居が高いという話をよく耳にします。それよりも気軽に数万円の絵をネットで買ってみる方はいらっしゃいます。それから、どんな商品でも何十万、何百万円とするものなら、実際に見て買うと思いますよ。車や不動産を買うときのように。入口のような立ち位置にオンラインのサービスがあると思います。

国内のアートブームへの懸念

神楽坂のシェアオフィスFARO神楽坂にはアートアンドリーズンが運営するギャラリーがあり、定期的に展覧会を開催している。写真は今年5月から6月にかけて開催された我喜屋位瑳務・高木真希人・寺本愛によるグループ展「Grand Menu」の模様
@Isamu Gakiya @Ai Teramoto @Makito Takagi Courtesy of Art and Reason Ltd.

―― この数年、日本でもアートブームを仕掛けようとしている動きがある気がします。山口周さんが東京国立近代美術館でビジネスパーソン向けのアート鑑賞のワークショップをやって、チケットは即完していましたし、そうした趣旨の本もたくさん出ています。ただアートの文脈を理解することが、なぜビジネスパーソンの実践的なプラスになるものなのか、おぼろげにわかるようでイマイチ見えてこないところもあるのですが。

佐々木: ビジネスに活用できる要素はアートにはあると思います。ただ、デザイン思考や右脳思考という思考方法があって、その次はアート思考、のようにアートを思考法のツールのみで捉える動向があるとしたら、それはどうだろう、と疑問に思います。アートは人間の精神から作り出されるものです。道具のように単純に使いこなせるものではないと思っています。

アーティストが職業として自立するための一助に

11月にオープンした複合ビル、渋谷スクランブルスクウェア内にある会員制の産業交流施設「SHIBUYA QWS」にてArtScouterを活用したキュレーションを行った。
Artwork: @Masahito Koshinaka Courtesy of nca | nichido contemporary art

―― これまでギャラリーを取り巻く経済について伺ってきましたが、アーティストに対してのArtScouterのようなサービスの効用について伺おうと思います。作家って夢を追うためにアルバイトして生計を立てるというようなステレオタイプ像がありますよね。海外では違うんでしょうか?

佐々木:欧米や中国などは日本国内よりもマーケットが大きい分、自立しているアーティストの数は比較的多いと思います。ですがやはり全体の人数の中の一部の人なのではないでしょうか。アートに限らず芸事はそうだと思います。

―― 美術展とか美術館に展示されるだけでは基本的にアーティストにお金は入ってきません。ギャラリーでも売れないとお金は入ってこないですよね。

佐々木:いろんな形でアーティストにお金が、経済が回る形にしていかないといけないですね。今は美術家を職業として選ぶこと自体、難しい。芸術大学を卒業した人が夢としてアーティストを選ぶのかという状況で、収入のことを考えて諦める方は当然います。アーティストになることが夢になりやすい環境ではないですね。

―― こういったプラットフォームを運営することは、アーティストを支えるサステナブルな環境をつくることともつながると思いますが、そういった狙いはあるんでしょうか。

佐々木:そうです。もう少し評価されるべき、まだ世に出ていない実力のある作家がいます。そういう作家が確実にいるんです。マーケットがもう少しボトムアップすれば、アーティストがもう少し頑張ろうと思えるくらいの経済が回ると思います。そういった状況になるための助けになるのなら、僕がこれをやることの意義はあると思います。

―― 最後に、今後の展開はどのようにお考えですか。

佐々木:ArtScouterについて言うと、提携するギャラリーを増やそうと考えています。そして登録作品ももっと増やして、プラットフォームとしてさらに充実させていきたいですね。営業と広報にもより力を入れていきます。

サイトはバイリンガルにすることを検討しています。今のところ日本企業向けのサービスですが、海外向けにしない理由は全くないですし、海外のギャラリーを入れるのもありだと思っています。


ArtScouter

ART HOURS

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    • テック×カルチャー 異能なる星々|深沢慶太|フリーライター・編集者
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    • 令和時代のオープンイノベーション概論|角勝|株式会社フィラメント代表取締役CEO
    • 松崎健夫の映画ビジネス考
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    • オランダ発スロージャーナリズム|吉田和充(ヨシダ カズミツ)|ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director