LIFE STYLE | 2025/12/04

里山の荒廃がもたらす現代の環境問題に迫る『一冊でまるごとわかる 「里山」 入門』が刊行

“変わりゆく里山”の背景を科学的・歴史的視点から読み解く入門書が登場

FINDERS編集部

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人と自然が共生してきた 「里山」 を、基礎から保全まで立体的に理解できる新刊

獣害の増加、外来種の侵入、都市部への野生動物の出没が各地で問題となっている。こうした環境変化の背景には、かつて暮らしと深く結びつき、多様な生態系を支えてきた 「里山」 の急速な荒廃がある。本来、里山はムラ (居住)ノラ (生産)ヤマ (資源採) が重層的につながり、人と自然が互いに影響し合う仕組みとして機能してきた。薪や炭、肥料の供給から生物多様性の維持まで、その役割は幅広い。

「里山」 は人と自然が共生する仕組み

しかし近年、農業人口の減少や都市化の進行により、耕作放棄地は全国で42万ヘクタールを超え、雑木林の管理放棄や竹林化が進む。結果として農作物被害は年間164億円に達し、地域社会と自然環境に深刻な影響が現れている。これらの現象は、里山が本来持っていた循環が崩れたことと無関係ではない。

こうした状況を踏まえ、有限会社ベレ出版は『一冊でまるごとわかる 「里山」 入門』(著者:富田啓介) を刊行した。本書は、里山の成り立ちから構造、生態系、現代の課題、さらに各地で進む保全の取り組みまでを体系的に整理する。科学的データに基づきつつ、歴史的・社会的背景を丁寧に紐解くことで、里山とは何か、その価値をどのように再評価できるのかを立体的に理解できる構成である。

著者の富田氏は、長年にわたり地理学の立場から実地研究や保全活動に携わってきた研究者。ため池や湿地の保全、地域住民と協働する取り組みなど、現場で得た知見が随所に盛り込まれ、入門書でありながら実践的な視点も得られる。また、SDGsの17目標すべてに関連する里山の意義や、国際的な保全の潮流にも触れ、国内外の観点から環境問題を考える視座を提示している。

里山を初めて学ぶ読者はもちろん、環境分野に関心を持つ人や教育現場で自然と人の関係を扱う場面でも活用できる一冊である。失われつつある地域の知恵と自然の関係性を、未来へとつなぐための基礎を与えてくれる。まさに今、手に取っていただきたい新刊だ。

富田 啓介 (とみた けいすけ)

里山湿地研究所代表

1980年愛知県生まれ。名古屋大学大学院環境学研究科修了、博士 (地理学)。法政大学文学部助教、愛知学院大学准教授、愛知教育大学准教授等を経て、2025年よりフリーランス研究者 (里山湿地研究所代表)。専門は自然地理学、特に地生態学。里地里山における生物生息地の成り立ちや、人と自然の関わりに関する研究を行いつつ、ため池や湿地を中心とした自然環境の保全・活用に関する業務を実施。地域住民と協働した里山再生活動や、行政・企業との連携プロジェクトにも多数参画。 主な著書に『里山の 「人の気配」 を追って』(花伝社)、『東海地方の湧水湿地を楽しむ』(風媒社)、『その日常、地理学で説明したら意外と深かった』(ベレ出版) など。趣味は家庭菜園と山歩き。保育園児と小学生の3児の父。


一冊でまるごとわかる「里山」入門
著者:富田啓介
定価:2,090円(税込)
発売日:2025年11月20日
 ISBN:978-4-86064-807-7
発行元:有限会社ベレ出版

URL
https://www.beret.co.jp/book/48077

里山湿地研究所
https://hoshikusa.jpn.org/