LIFE STYLE | 2025/11/21

冬空を黒い波が覆う壮観の群舞 ミヤマガラスが導く蔚山の都市型エコツーリズム

約4万羽が描く圧巻の“空のショー”と、自然音に浸る体験型プログラムが共存する三湖渡り鳥公園の魅力

FINDERS編集部

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都市の中心で広がる自然のダイナミズムと学びの場、蔚山南区・三湖渡り鳥公園

韓国・蔚山広域市南区にある三湖渡り鳥公園は、市街地のすぐそばに豊かな自然が広がる都市型のエコツーリズムスポットである。冬になると太和江の下流域に約4万羽のミヤマガラスが飛来し、夕暮れの空に大きな黒い波を描く群舞を披露する。この現象は10月初旬から翌年3月初旬まで観察でき、国内外から多くの観光客が訪れるほどの人気を集めている。

温暖な気候や豊富な餌資源、天敵の少ない環境が整っていることから、この地は渡り鳥にとって理想的な休息地として知られている。公園は単に野鳥を観察する場所にとどまらず、自然や文化、観光が交わる学びの場として、市民にとっても心を休める空間となっている。

公園内に広がる三湖竹林では、指向性マイクとヘッドセットを用いた 「サウンドウォーキング」 が体験できる。風が竹を揺らす音、水のせせらぎ、鳥の声など、普段は意識しない自然の響きを拾いながら専門解説員と歩くこのプログラムは、訪れる人の感性を静かに刺激し、自然との一体感を深めてくれる。

三湖竹林で実施される「サウンドウォーキング」は、指向性マイクとヘッドセットを装着し、竹林の風の音、水のせせらぎ、渡り鳥の鳴き声など自然の音に耳を傾けながら歩く体験型エコプログラムである

南側入口に位置する渡り鳥広報館は、太和江流域の生態文化やミヤマガラスの習性を学べる5階建ての施設である。展示ホールやVR体験、5D映像館などが整備され、子どもから大人まで幅広く楽しめるつくりとなっている。2023年からは地元小学校と連携し、児童が野鳥観察や生態日誌の記録を行う 「太和江こどもバードクラブ」 も始まり、生態教育の拠点としての役割も担いつつある。

渡り鳥広報館は、ミヤマガラスの群舞をはじめ、太和江流域の生態文化について学び、体験できる施設である

広報館の近隣には三湖渡り鳥ゲストハウスもあり、屋上デッキからは夕暮れ時の群舞を間近で見ることができる。早朝には自然散策やバードウォッチングも楽しめ、宿泊と体験が融合した滞在型のエコツーリズム拠点として評価されている。

蔚山南区では、ミヤマガラスとの共生を目指した環境保全にも力を入れている。糞害対策としての清掃車両の運用、生息地の保全や生態研究の推進など、持続可能な観光地づくりの基盤を整える取り組みが続けられている。こうした努力が積み重なり、三湖竹林で見られる壮大な群舞は冬の南区を象徴する自然景観として定着し、エコシティとしての魅力を確かなものにしている。


Ulsan Namgu
https://www.ulsannamgu.go.kr/cmm/main/mainPage.do