CULTURE | 2024/04/13

出版160周年記念「不思議の国のアリス展」 アリスの原画250点が日本初公開

横浜高島屋ギャラリーにて4月17日(水)から5月6日(月・振休)まで開催

FINDERS編集部

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4人の著名画家の集大成、マクミラン・アリスの原画約250点が日本初公開

「不思議の国のアリス」 の誕生は、今から160年余り前の1862年に遡る。チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン(ペンネーム:ルイス・キャロル)が友人の娘アリス・リデルに即興で語ったお話しがはじまりとされている。その後、1864年のクリスマスにキャロルは挿絵をつけた手作り本 「地下の国のアリス」 を彼女にプレゼントし、この本の出版をアレクサンダ ー・マクミランに依頼。そして著名な風刺挿絵画家のジョン・テニエルの手によって 「不思議の国のアリス」 は完成し1865年に出版、1871年には続編となる 「鏡の国のアリス」も出版された。

そして、1903年英国のマクミラン社がジョン・テニエルの挿絵に色付けしたカラー版を出版、その後、テニエルの挿絵をもとに、1911年には水彩画家ハリー・シーカーによる16点、また、1927年には英国マクミラン社で活躍していた画家ジョン・マックファーレンによる34点の彩色画が掲載された本をそれぞれ出版。さらに1995年には出版130周年を記念し、ハリー・シーカーが描いていなかった挿絵76点が女流画家ディズ・ウォリスによって描かれ、「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」のすべての挿絵がカラー化したという。

今回開催される「不思議の国のアリス展」の企画制作を担当した東映株式会社の展覧会プロデューサー西澤寛によると、「アリス展の開催については、2002年頃より何度もとなく挑戦を試みてきたが、なかなか所蔵元のオリジナル原画にたどり着くのが困難だった。」 といい、2019年に日本のエージェントが英国の出版社と契約することがわかり、ようやく実現に至ったという。

このような経緯を経て、本展ではマクミラン社が有するハリー・シーカー、ジョン・マックファーレン、ディズ・ウォリスのカラー原画などを日本ではじめて紹介できる貴重な機会となった。そのほか、ルイス・キャロルの関連資料や「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」の書籍およびカラー原画と再プリント版画なども紹介されるなど、その全貌が明らかとなる。

『不思議の国のアリス』挿絵 ハリー・シーカー/彩色(1911年)© Macmillan Publishers International Limited. THE MACMILLAN ALICE™

「不思議の国のアリス」のカラー原画など約250点、日本初公開

ハリー・シーカー、ジョン・マックファーレン、ディズ・ウォリスによるカラー原画のほか、ルイス・キャロルがアリスにプレゼントした 「地下の国のアリス」(復刻版)、「不思議の国のアリス」 のオリジナル木版から再プリントしたジョン・テニエルの挿絵集、またルイス・キャロルの貴重な資料が展示される。

ルイス・キャロル、ジョン・テニエル、ハリー・シーカー、ジョン・マックファーレン、ディズ・ウォリスによる約160年の挿絵の変遷

「不思議の国のアリス」のはじまりの挿絵から最近のもの(一部の原画)までを、照らし合わせてみることができる貴重な機会だ。

『不思議の国のアリス』挿絵 ジョン・テニエル/画(1988年 再プリント版画)© MPIL THE MACMILLAN ALICE™
『不思議の国のアリス』挿絵 ジョン・テニエル/画(リトル・フォークス版)(1907年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™
『不思議の国のアリス』挿絵 ハリー・シーカー/彩色(ジョン・テニエル原画)(1911年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™

貴重な原画・再プリント版画に物語を添えて展示

カラー原画には、物語の一説が添えられて紹介されているので、物語を知らないという方も楽しめる展示構成となっている。

『鏡の国のアリス』挿絵 ハリー・シーカー/彩色(ジョン・テニエル原画)(1911年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™

そうして、耳から耳に届くかと思われるほど口を開いてニカァと笑うと、前に身を乗りだして(もう少しで塀へいから落ちそうになりながら)アリスに手をさしだしました。
(『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』河合祥一郎訳/角川文庫より)

関連年表

1862年 
数学講師のルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン)がテムズ川で舟遊びをしていたリデル家の三姉妹(次女)から面白い話をせがまれ、即興でお話を作った

1864年
ルイス・キャロルによる挿絵をつけた手作り本『地下の国のアリス』をアリスへプレゼント

1865年
ロンドンのマクミラン社が、『不思議の国のアリス』を出版。挿絵は、人気挿絵画家のジョン・テニエルが担当。

1871年
続編となる『鏡の国のアリス』出版

1903年
ジョン・テニエルの挿絵の一部を色付けしたカラー版『不思議の国のアリス』を出版

1911年
アーティスト ハリー・シーカ―が16点を彩色、出版。 青いドレス、白いエプロン、金髪、青いリボンというアリスのカラーイメージが確立。

1927年
画家ジョン・マックファーレンによる34点の彩色画が完成、出版。

1995年
出版130周年記念として、ハリー・シーカーが描いていなかった、テニエルの挿絵76点の彩色を女流画家であるディズ・ウォリスに依頼して、『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』全ての挿絵がカラー化


「不思議の国のアリス」 あらすじ
1865年、ロンドンのマクミラン社により出版。主人公のアリスが白ウサギを追っているうちに入り込んでしまった「不思議の国」で、時間が進まないお茶会やハートの女王様とのクロケーの会にも参加するなど、へんてこなキャラクターたちと出会う奇想天外な物語。

「鏡の国のアリス」 あらすじ
「不思議の国のアリス」 の続編として6年後の1871年に出版。「不思議の国」から半年後の雪の日。アリスは、暖炉の上の鏡をくぐり振り抜けて、キングやクイーンのいるチェスの世界へ。おしゃべりする花々や卵みたいなハンプティ・ダンプティも登場。チェスをモチーフに物語は進みます。


展示作品紹介(一部)

『不思議の国のアリス』口絵 ジョン・マックファーレン/画(ジョン・テニエル原画)(1927年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™
『不思議の国のアリス』挿絵 ディズ・ウォリス/彩色(ジョン・テニエル原画)(1995年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™
『鏡の国のアリス』挿絵 ディズ・ウォリス/彩色(ジョン・テニエル原画)(1995年) © MPIL THE MACMILLAN ALICE™
ルイス・キャロル © MPIL THE MACMILLAN ALICE™
マクミラン・アリス ロゴ © MPIL THE MACMILLAN ALICE™

開催概要

出版160周年記念 「不思議の国のアリス展」

会場:横浜高島屋ギャラリー〈8階〉
会期:2024年4月17日(水)~5月6日(月・振休)
入場時間:10:00~18:30 (19:00 閉場)  ※最終日は~16:30 (17:00閉場)
入場料:一般1,200円(1,000円)/大学・高校生1,000円(800円)/中学生以下無料、()内は前売主催:「不思議の国のアリス展」 実行委員会
特別協力:英国マクミラン社、株式会社タトル・モリ エイジェンシー
訳:河合祥一郎『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』(角川文庫)
後援:日本ルイス・キャロル協会
企画制作:東映株式会社
ホームページURL:https://www.takashimaya.co.jp/store/special/alice160th/index.html


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