「能力不足で仕事が続かないというのが申し訳ないという気持ちで…」
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弁護人「寮を出てからはどこに?」
E被告人「愛知、神奈川のネットカフェを転々としてました」
弁護人「仕事は?」
E被告人「所持金が減ってきて探してたんですが、住所がないと無理で。それで犯罪でお金を得ようと思うようになりました」
いつから職探しを始めたのかははっきりしないけど、収入がない中で働き口がない焦りが強盗に向かわせてしまったようです。
弁護人「事件のことを訊きますけど、夜に店に入って事件起こす朝までどんな気持ちでした?」
E被告人「緊張してました。ホントにできるとだろうかと」
弁護人「不安や迷いはありました?」
E被告人「はい。刃物出すまで迷ってました」
弁護人「防犯カメラ映像を見るとね、レジのカウンターテーブルは結構幅があって、隣には男性店員もいて、近くには客もいて。強盗やれます?」
E被告人「レジに立った時、無理だろうなって…」
「やる前から諦めるヤツがあるか」と鼓舞激励する言葉もありますが、それはケースバイケーイケース。犯罪行為と無理そうな時は断念するのが正解ですね。
弁護人「男性店員に『あなた何なんですか!』と言われてどう思いました?」
E被告人「これは成功しないなと思いました」
普通の子と親に言われたけど、普通に仕事を辞めることもできない男に突き付けられた「あなた何なんですか!」。意味深な質問にも聞こえてきます。
弁護人「それで『警察を呼んでください』とお願いしたと」
E被告人「これ以上被害を増やさず捕まろうと」
弁護人「男性店員は調べで『警察を呼べ』と言われたと。どっちがホント?」
E被告人「緊張で声が出てなくて、語尾の『ください』は聞こえてないんだと思います」
かなりガクガク震えながらの犯行だったわけですね。それが普通ですよ。店員はもっと怖かっただろうけど。
弁護人「警察が来てどう思いました?」
E被告人「人を傷つけずに済んだのと、これ以上ネットカフェに出入りしなくて済むと思い、ホッとしました」
違う形で普通にSOSを発信してくれればよかったものを。もう再犯しないと約束して弁護人からの質問は終了です。
続いて検察官から。
検察官「示談が済んでますけど、そのお金はどうしたんですか?」
E被告人「両親に立て替えてもらいました」
検察官「今後はご両親と同居すると。今までと何が変わるんですか?」
E被告人「実家で一緒に暮らせば相談ができます。あと住所があるので働けます。人と接するのが得意じゃないので、サービス業は避けて工場勤務の仕事を探します」
検察官「同居しても自発的に相談しなければ同じことですよね」
E被告人「どれだけ狭い視野しか持ってなかったかを思い知ったので、今回の事件を胸に刻んで生きていきます」
と誓って検察官の質問は終了。
最後は裁判官から。
裁判官「よくわかんないのが、家族に悩みを相談するのって抵抗があったの?」
E被告人「今まで普通に生活していると思ってたので、能力不足で仕事が続かないというのが申し訳ないという気持ちで…」
裁判官「こうやって捕まる方が申し訳ないよね」
E被告人「はい…」
これにて被告人質問全て終了です。
このあと検察官が懲役4年とナイフ2本没収という求刑をしました。
すると裁判官が、
裁判官「このまま判決を言い渡します」
と、即決です。
結果は懲役3年未決勾留日数30日算入の執行猶予4年。あとナイフ2本没収でした。
反省してて示談済で初犯ということでこの結果だそうです。相場から比べると普通の判決ですかね。母親のいささか呑気にも見えてしまう雰囲気から察するに、E被告人としては普通の子供を演じる必要があったのかなぁと感じました。
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