CULTURE | 2022/01/29

「どう食べるか」を意識するだけで変わるこれだけのこと【連載】格闘家・松田干城が伝授!サイエンス・ヘルスケアの極意

文・構成:文・構成:友清晢

松田干城 Tateki Matsuda
現役プロ総合格闘家株式会社スポーツゲインUS...

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文・構成:文・構成:友清晢

松田干城 Tateki Matsuda

現役プロ総合格闘家株式会社スポーツゲインUSA・Boston支社長

現役プロ格闘家の傍、パーソナルトレーナー、ヘルスコンサルタント、ビジネスコーディネーターとしてボストンを拠点に活動中。ヘルス&ウェルネス分野(BtoB・BtoC)の事業、物販、日本と海外のコンテンツ輸出入を展開中。

食事は“どう食べるか”を重視するべき

規則正しい生活、適度な運動、そして理想的な栄養バランスが健康を維持する秘訣であるのは言わずもがなです。しかし、多忙なビジネスパーソンにとって、規則正しいサイクルを守ることや、運動の時間を確保することは難しいもの。

ならばせめて、毎日の食事くらいには気を配りたいところです。ただ能動的に食べたいものを食べるのではなく、栄養面などを工夫して、少しでも健康的な食生活を送りたいと考えている人は多いのではないでしょうか。そこで私がアスリートとしてこれまで研究を重ねてきた、スポーツ科学の知識が役に立ちます。

食事や栄養を取り巻く分野は、日進月歩で研究が進んでいます。最新の情報を元にまず皆さんに意識してほしいのは、食事とは“何を食べるか”よりも、“どう食べるか”が重要であるということです。

単に栄養価の高い食材を求めるだけなら、手元のスマホで検索すれば誰でも簡単に知識を手にすることができるでしょう。しかし、どんなに体にいい食材であっても、不健康な食べ方をすればかえってマイナスに働いてしまいます。

その最たる例が「ながら食べ」です。最新の研究によると、たとえばスマホやテレビを見ながら食事をすると、食事だけに専念している場合と比べ、カロリーの過剰摂取が起こりやすいことがわかっています。つまり、無自覚に食べすぎてしまうわけですね。

最近ではマインドフルイーティング(丁寧に食べる)という言葉も聞かれるようになりましたが、一口ごと食事に全集中することには、実はさまざまなプラスの作用があります。食材をよく噛むことで腸内の善玉菌が増えたり、脳内の報酬系が活性化されて満足感が高まったり、多くの効能が科学的に認められているのです。

人はどれだけ多忙な時期でも食事だけは摂るのですから、こうした知識を押さえておくだけで、高いダイエット効果が得られるでしょう。仮に1日しっかり3食摂る人であれば、1週間で21回、1カ月で80回以上の積み重ねになるのですから。

ダイエットの鍵はインスリンにあり

さらにダイエットに本腰を入れるなら、確かな知識に基づいた食事改善が必要です。たとえばお腹まわりが気になりだしたため、食事をコンビニのサラダチキンで済ませたり、炭水化物の摂取をやめたりといった対策をする人は少なくありません。これらは決して無意味なことではないものの、根本的な解決策にはなりにくいので注意が必要です。

重要なのは、インスリンをしっかりコントロールすること。インスリンとは膵臓から分泌されるホルモンの一種で、糖の代謝を促して血糖値を一定に保つ役割を担っています。

人は食事で糖質を摂取すると、一時的に血糖値が上昇します。そこで血糖値を下げるためにインスリンが分泌されるわけですが、問題はこのホルモンには糖を脂肪細胞に貯蔵しようとする働きを持っていることです。

そのため、急激に血糖値を上昇させると、インスリンの分泌量も多くなり、結果として脂肪を蓄えやすくなってしまいます。これが肥満の大きな原因の1つです。早食いや大食いは血糖値を急上昇させてしまうので、避けるべきでしょう。

こうしてインスリンと上手に付き合うことが肥満を防ぐコツなのですが、多くの現代人は日常的な飽食により、インスリンが正しく機能しない状態に陥っています。インスリンが血液中に分泌されていても効き目が悪く、血糖を下げる働きが十分に発揮されないのです。これをインスリン抵抗性と呼びます。

インスリンの働きを正常化する方法

インスリンはいわば、ドアマンのようなもの。血糖値が上がってくるとドアを開け、糖を外に逃してくれる役割を果たします。ところが、飽食の時代に生きる現代、インスリンがそのドアマンとしての役割をサボってしまうことが多々あるわけです。

ドアマンがドアを開けず、血糖がどんどん上がってしまうのがいわゆる糖尿病です。日本人は欧米人と比べて肥満が少ないものの、糖尿病患者が多い特徴があります。これも前述のインスリン抵抗性に原因があります。

では、そんなインスリンの働きを正常化して、血糖費を理想的にコントロールするにはどうすればいいか?

答えのひとつは、意識的に空腹時間を設けること。食事を摂らず、空腹を感じている間は、インスリンも分泌されません。この時間が長く続くと、たんぱく質がアミノ酸に分解され、そのアミノ酸を栄養源に成長ホルモンが分泌され、結果として肌ツヤが良くなるなどのアンチエイジング効果も生まれます。

そこで近年注目を集めているのは、「Time Restricted Feeding(食事時間制限法)」という手法です。これはカロリーではなく時間を制限するダイエット法で、たとえば1日のうち食事ができる時間を8時間から12時間(女性の場合は10−12時間)などと制限し、食事はすべてその時間内に収め、それ以外の時間は水分などノンカロリーなもののみに留めるやり方です。

これは一時期流行った「プチ断食」と同じものと考えていいでしょう。こうした手法はダイエット効果もさることながら、根本的な体質改善に繋がります。

といっても、こうした時間制限はハードルが高いのも事実でしょう。そこで、ハーブなどの栄養素によって、ドアマンとしてのインスリンの働きを活性化させることも可能です。具体的にはお酢全般や海藻類、セイロンシナモン、ゴーヤなどが代表的です。

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