実にさまざまなNFTを使ったアイテムが、流通するようになってきました。先日も、『香取慎吾NFTアートチャリティプロジェクト』が開催され、1万点のNFTアートが1日で完売しました。出品されたNFTアートは、2015年に日本財団にパラサポセンターが開設されたことを記念し、香取さんが描いた壁画(縦2.6m×横6.1m)をデジタル化したもの。シリアルナンバーが振られていて、1万点限定になっています。
3,900円という手頃な価格だったこと、クレジットカードでも購入できること、チャリティだったこと、そして、香取慎吾という有名人だったこともあって、すぐに完売したのでしょう。このイベントで、NFTアートというものを多くの人が手にしたのは、今後の動きが気になります。
さて、今回は、8月末から急激に広がってきているLoot(ルート)について見てみたいと思います。たった8行のテキスト、しかも、単語が並んでいるだけの画像なのですが、これがNFT市場で取引され、とんでもない勢いで広がっています。一体、何が起きているのでしょうか?
足立 明穂
ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家
シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。
Lootは、ゲームキャラクターの初期設定?
8月28日、Twitterで、@domというアカウントが謎のツイートを行いました。8000個のNFTアイテムを作り、画像には8行のテキストが書かれているだけで、これだけ見ると、何が面白いのか分かりません。
実は、これ、あの6秒動画のSNS「Vine(ヴァイン)」の共同創業者 Dom Hofmann 氏のツイートで、新しくファンタジーゲーム『Loot』を立ち上げ、そこで利用できるアイテムが記入されているNFTアイテムなのです。8つのアイテムが書かれた画像を『bag』と呼んでいて、まさにアイテムが入った袋として表現されています。
8つのアイテム(勇者の手や足に装着するアイテム、指輪など)は、ファンタジーゲームに登場するキャラクターの初期設定として扱われ、が書かれていて、これをベースにして、物語が始まります。始まると言っても、ゲームはまだできておらず、どんな世界なのか、何がミッションなのか、そもそも、キャラクターの顔や服装も設定されていません。アイテムが書かれた8000枚の画像だけしかないのです。
Lootのアイテムをベースにして、コミュニティが世界を創作していく
これまでのファンタジーゲームというと、ゲーム会社が世界観を作り、ストーリーを作り、キャラクター設定、ミッション、敵、謎、人間関係、会話などなど、すべて、映画のように作られた世界の中でプレイします。『なんか、このキャラクター、違和感あるなぁ・・・』と思っても、変更することなどできません。
Lootの面白いところは、キャラクターの初期設定だけしか決まっていないので、ゲームそのものは何も作られていません。Lootに興味を持った人たちが集まり、キャラクターの絵を描いたり、世界を想像して文章にしたり、さらには、音楽を作ったりするといったことが始まっています。
それらが、組み合わさり、世界が作られていき、あるいは、途中から2つに分かれていくなど、これからのLootから始まるゲームの世界観が、どのように変化していくのか誰も分かりません。ただ、そこには、これまでなかったファンタジーゲームの作り方が展開されていて、急激に人気が高まっているのです。
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