CULTURE | 2021/09/16

たった8つの単語が書かれた画像のNFTが8000個も取引されているLootとは?【連載】NFTが起こすデジタルアートの流通革命(7)

実にさまざまなNFTを使ったアイテムが、流通するようになってきました。先日も、『香取慎吾NFTアートチャリティプロジェク...

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実にさまざまなNFTを使ったアイテムが、流通するようになってきました。先日も、『香取慎吾NFTアートチャリティプロジェクト』が開催され、1万点のNFTアートが1日で完売しました。出品されたNFTアートは、2015年に日本財団にパラサポセンターが開設されたことを記念し、香取さんが描いた壁画(縦2.6m×横6.1m)をデジタル化したもの。シリアルナンバーが振られていて、1万点限定になっています。

3,900円という手頃な価格だったこと、クレジットカードでも購入できること、チャリティだったこと、そして、香取慎吾という有名人だったこともあって、すぐに完売したのでしょう。このイベントで、NFTアートというものを多くの人が手にしたのは、今後の動きが気になります。

さて、今回は、8月末から急激に広がってきているLoot(ルート)について見てみたいと思います。たった8行のテキスト、しかも、単語が並んでいるだけの画像なのですが、これがNFT市場で取引され、とんでもない勢いで広がっています。一体、何が起きているのでしょうか?

足立 明穂

ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家

シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。

Lootは、ゲームキャラクターの初期設定?

8月28日、Twitterで、@domというアカウントが謎のツイートを行いました。8000個のNFTアイテムを作り、画像には8行のテキストが書かれているだけで、これだけ見ると、何が面白いのか分かりません。

実は、これ、あの6秒動画のSNS「Vine(ヴァイン)」の共同創業者 Dom Hofmann 氏のツイートで、新しくファンタジーゲーム『Loot』を立ち上げ、そこで利用できるアイテムが記入されているNFTアイテムなのです。8つのアイテムが書かれた画像を『bag』と呼んでいて、まさにアイテムが入った袋として表現されています。

8つのアイテム(勇者の手や足に装着するアイテム、指輪など)は、ファンタジーゲームに登場するキャラクターの初期設定として扱われ、が書かれていて、これをベースにして、物語が始まります。始まると言っても、ゲームはまだできておらず、どんな世界なのか、何がミッションなのか、そもそも、キャラクターの顔や服装も設定されていません。アイテムが書かれた8000枚の画像だけしかないのです。

Lootのアイテムをベースにして、コミュニティが世界を創作していく

これまでのファンタジーゲームというと、ゲーム会社が世界観を作り、ストーリーを作り、キャラクター設定、ミッション、敵、謎、人間関係、会話などなど、すべて、映画のように作られた世界の中でプレイします。『なんか、このキャラクター、違和感あるなぁ・・・』と思っても、変更することなどできません。

Lootの面白いところは、キャラクターの初期設定だけしか決まっていないので、ゲームそのものは何も作られていません。Lootに興味を持った人たちが集まり、キャラクターの絵を描いたり、世界を想像して文章にしたり、さらには、音楽を作ったりするといったことが始まっています。

それらが、組み合わさり、世界が作られていき、あるいは、途中から2つに分かれていくなど、これからのLootから始まるゲームの世界観が、どのように変化していくのか誰も分かりません。ただ、そこには、これまでなかったファンタジーゲームの作り方が展開されていて、急激に人気が高まっているのです。

次ページ:Lootの最低取引額、2000万円!?

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