BUSINESS | 2023/10/10

テンセントが「世界一のゲーム企業」である納得の理由――これでテンセントゲームズを正しく評価できるようになった


この記事は中国ゲームメディア『游戏葡萄』にて2023年5月17日に公開された記事「现在我们可以好好评价一下腾讯游戏了...

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この記事は中国ゲームメディア『游戏葡萄』にて2023年5月17日に公開された記事「现在我们可以好好评价一下腾讯游戏了」(これでテンセントゲームズを正しく評価できるようになった)の翻訳転載となります。

 文:修理
翻訳:藤本智惠

「テンセントゲームをどう評価すべきなのか?」これは、しばらくの間、頭を悩ませる問題であった。

新しいヒット商品が市場に登場するたびに、多くの人が無意識にテンセントに対し疑問の声を投げかける。しかし、実際にビジネスの全体像をみれば、また違った印象を受けるかもしれない。

『Sensor Tower』の最新データでは、4月の中国スマホゲーム興行収入トップ30の1位はテンセントだった。世界スマホゲーム売上トップ10にて、唯一1位、2位を獲得している。さらに中国iOSベストセラートップ100の中の3分の1をテンセントグループが占めている。『Newzoo』の統計によると、テンセントゲームズの売上は長期にわたり、世界1位である。

なぜわざわざテンセントゲームズについて話す必要があるのか、そんなことに意味があるのかと思う人もいるだろう。ゲーム会社はどのように評価するべきなのか?あるゲーム会社の成功は、他社の失敗を意味しているのだろうか?これは、テンセントゲームズだけのことではなく、多くのゲーム会社が直面している問題だ。私は、これこそまさに中国のゲーム業界を揺るがす問題が含まれていると考えているのだ。

すでにテンセントゲームズは、業界でこんなにも成功しているにも関わらず、人々のテンセントに対する期待は収まることを知らない。昨夜のテンセントの発表会や、馬曉軼(※編註:Steven Ma テンセントグループ高級副総裁。ゲーム事業責任者)のインタビューのコメント欄にも「新たな成長分野はなにか?」「次のヒット作はいつでるのか?」「新たな競合にはどのように対策していくのか?」等の声が寄せられた。

そこで、この記事ではテンセントゲームズの新作発表会や、近年の彼らの動きとともに、これらの問題の答えを探ってみることにする。

01.「テンセントゲームズ」は連盟である

テンセントゲームズと他社の主力商品を比較するとき、企業規模を忘れ、単純に一つのゲームだけを比べ良し悪しの結論を出そうとする。しかし、忘れてはならないのは、テンセントゲームズの最大の強みは、“合同作戦”という強みだ。

1.T0レベルの商品だけをみてはいけない

あたりまえであるが、T0レベル(※編註:ティア0の略。最高レベルの意)の商品はゲーム市場全体の収益上限を左右するようなゲームである。テンセントでいえば、『伝説対決 -Arena of Valor-』と『Game for Peace』は紛れもなくそれにあたるであろう。もちろん、テンセントから次に発表される商品がT0商品であることを期待するが、それに届くほどのゲームではなかったとしても、すべてを失敗だと評価する必要はない。

実際のところ、テンセントゲームズの収益を支えるゲームたちを、もし他の会社から発売したとなれば、それらのゲームは、その会社の主力商品になるに違いない。

2020年からみていくと、テンセントゲームズは毎年いくつかのヒット商品を打ち出している。もちろん、ゲーム業界の記録を打ち破るようなものではなかったが、どのゲームも確実に実績を残し、記録を更新している。

例えば2021年の『Battle of the Golden Shovel』と『リーグ・オブ・レジェント:ワイルドリフト』は、ベストセラーの常連だ。他にも昨年登場した『Arena Breakout』は、9カ月もしないうちに5000万人がユーザー登録した。いわばアクセル全開で突っ走ったかのような、期待以上のユーザーを猛スピードで獲得したといえる。同年の『LOL Esports Manager』では、テンセントの「海老で鯛を釣る」の顕著な例が見られる。

スマホゲーム商品以外にも、テンセントのPCゲームの商品寿命の長さ、そしてゲーム売上は誰もが羨むようなものである。テンセントの2022年決算報告によると、世界でのPCゲーム売上は9740億円に達した。今のところ国内PCゲームで『League of Legends』『CrossFire』『アラド戦記』に勝るライバルはいない。

2.テンセントゲームズは、自社開発商品だけではない

中国国内で、テンセントは「~シリーズ(ゲーム)」の会社だと記事にされる数少ない会社だ。この背景には、テンセントだけで得られる勝利ではなく、パートナー会社の成功、それがテンセントの成功を意味している。

公開されている資料によると、ここ数年でテンセントは少なくとも189のゲーム会社に投資している。投資先には、業界のトップメーカーから、有望なベンチャーまで名を連ねている。中でも話題になったのは、2011年にテンセントが投資したRiot Gamesだ。両社は以降12年で、『League of Legends』を500億元以上の価値を持つ世界的IPゲームへと成長させた。

『Battle of the Golden Shovel』『(LOL Esports Manager』などの商品で根強いファンを獲得したことで、『Arcane』、『孤勇者』(※中国版『Arcane』オープニングテーマ)といったコンテンツを提供することを可能にした。

Supercellでも似たような事例が挙げられる。近年Supercellの革新的な路線には、行き詰まり感を受けているかもしれない。しかし実際のところ、依然として2億5000万人の月間ユーザーを抱えており、すべての製品が少なくとも10億ドルの売上がある。中でも『Clash of Clans』の売上は累計100億ドルを超えている。

テンセントは、国内でもいくつも成功事例がある。例えば、2016年に投資したHappy Elementsの『あんさんぶるスターズ!! Music』と『あんさんぶるスターズ!! Basic』は日本でも多くのユーザーを獲得した。現在ではHappy Elementsは中国海外売上Top30の常連である。Sensor Towerによれば、『あんさんぶるスターズ!! Music』と『あんさんぶるスターズ!! Basic』は、会社に10億ドル以上の売上をもたらしているという。

中国国内市場では、Happy Elementsの『开心消消乐』は、カジュアルゲームの主力商品である。『DataEye』のデータによると、2021年『开心消消乐』の累計売上は100億元を超えたという。これは国内の類似商品の総売上の53.7%を占める。ゲームのベストセラーランキングの順位では20~30位を未だにキープしている。

テンセント集団 副総裁である馬暁軼は、「毎年のゲームランキングを見比べてみれば、ランキング内にテンセントの関連商品が年々増えていることがわかるはずだ」と言う。

3.国内市場だけを意識していない

2018年から、テンセントは海外市場での売上をより重視し始めた。2022年の決算報告では、海外売上は468億元に達した。これは、全ゲーム売上の27%に相当する。

この数年、テンセントの海外での成績は好調である。しかし、あまりに遠い話で実感が湧かない。例えば、リリース3年で総売上15億ドルを記録した『Call of Duty:Mobile』は、アメリカ市場での売上は、6.47億ドルであり、総売上の43%を占め、次いで日本、そして中国市場となっている。

他にも、『Tower of Fantasy』海外版は、リリース初日にアメリカ、日本などの22カ国でiOSフリーゲームランキングでトップに躍り出た。Sensor Towerのデータでは、リリース後20日で3億元超、8月の中国スマートフォンゲームランキングでは5位だった。中でも日本市場売上は海外売上の42%を占めるまでに至った。

最近、テンセントゲームズの海外ヒット商品『勝利の女神:NIKKE』は、ゲームがリリースされた当日、韓国iOSベストセラーランキングでトップにランクインした。日本、アメリカなど21ヵ国のランキングTop10にもランクインした。Sensor Towerのデータによると、ゲームリリース2ヶ月の総売上は1.7億ドルに達したという。また日本や韓国では依然としてゲームランキングトップ3をキープしている。

スマートフォンゲーム商品以外にも、テンセント自社開発、パートナー会社のPC、コンシューマー機の『VALORANT』『Warhammer 40,000: Darktide』『V Rising』があるが、中でも@VALORANT』の成績は突出している。リリースしてから2年の6月、月間アクティブユーザーが1400万人を超えたと公表している。Newzooのデータでは、2022年アメリカ国内での売上は3.1億ドルを超した。

ゲームは、eスポーツ、ライブ配信などでも勢い良く成長している。ーーライブ配信プラットホームTwitchの2022年のデータにると、『VALORANT』に関する配信は、1年間で累計11.5億時間も再生され、ゲーム部門では『League of Legends』と『GTA5』に次いで第3位、シューティングゲーム部門では第1位だ。これは、ライバル商品『CS: GO』の2倍に近い結果になる。

こうして、売上層別の商品数、世界市場、各部門の売上トップ商品を並べてみていくと、テンセントゲームズの現時点での実力は疑いようもない。しかし、これこそがテンセントに対して関心が持てない真の理由なのかもしれない。規模が大きすぎて、商品が多すぎて、儲かりすぎていて、議論の余地がないのだ。

それにも関わらず、我々はテンセントが新世代T0商品を生み出すことができるのか、はたまた王者(テンセント)の衰退、新たなる覇者の誕生など、まるで古典小説のような展開を期待してしまっている。だからこそ、テンセントゲームズは更なる答えを準備しなくてはならないのだ。人気が衰えたとき、新たなヒット商品が現れたとき、彼らがどのような手を打つのかを。

02.トップを維持しながらも、地盤はしっかり

昨晩(※編注:2023年5月16日)、テンセントゲームズは、30余りの商品を発表した。その数は決して少なくないように見えるが、すでにテンセントについて理解している方なら、これが、数多くある商品のほんの一部に過ぎないことがおわかりだろう。

しかしながら、近年の彼らの発表やその他の動き、馬暁軼のインタビュー内容からテンセントの傾向が見えてくる。

まずはじめに明らかなことは、テンセントゲームズは、今後どんな機会も逃すつもりはないということだ。

馬暁軼が口にした戦略は、中国本土、成熟市場(アメリカ、日本、ヨーロッパ)、新興市場(中南米、東南アジア、中東)の三大市場、スマートフォン、PC、コンシューマー機の三大プラットフォームの全方面で攻めようとしている。これは単なる口先だけの発言ではなく、近年のテンセントゲームズの、実際の動きに現れている。

同発表会では、テンセントゲームズはPCゲームの人気回復を提言しており、実際に多くの商品をリリースしている。先ほど挙げた『VALORANT』以外に、早々に累計売上1000万を突破した『ディビジョン2』、オンラインプレイヤー人数がSteam史上2位(132万人)を記録した『LOST ARK』、そしてテンセントNExT自社開発初の大型タイトル『SYNCED: Off-Planet』だ。

テンセントゲームズの出版、投資会社は早い段階からあちこちで活動をしてきた。もちろん、これらが必ずしも成功するとは限らない。しかし、目先の利益よりも、パートナーを探し出し、潜在的な成功のチャンスを掴み取ることにこそ価値があると考え行動してきた。現在、新興のゲーム会社の報告書のほとんどに「テンセントの投資を得た」という字が見られる。

テンセントゲームズのパートナーたちは、今や全方位を固めている。コンシューマー機、PC、モバイルといった3大プラットフォームに、買切制、課金制、広告制などのビジネスモデル、そしてシューティング、カジュアル、二次元、MMO、RTS、オープンワールド、ホラー、パズル、スポーツといったように全方位をカバーしている。

カバー範囲が広いことに加え、From Software、Netmarble、育碧、Sumo Group、Remedyなどの大手レーベル会社や、有名企業の存在も欠かせない。少し前に爆発的なヒットを起こした『Atomic Heart』の開発元であるMundfishも含まれている。

研究開発においては、テンセントは、この2年で、TiMi StudiosのF1Stusio、G1Studio、LIGHTSPEED STUDIOSのLightSpeed LAなど、海外オフィスにも投資し、かなりの規模となった。そのなかで、『HALO』『Battlefield』などの有名なAAAゲームが作られた。海外のシングルプレイヤーゲームや、ゲーム機ソフト開発にも相当額の投資をした。例えば『デス・コネクション』のCruby Entertainmentや、『Mordhau』のTriternionなどである。

高品質なシングルプレイヤーゲームの体験+GaaSで、常にゲームに新鮮味を味わえる。これが今後さらに成果を出せば、この業界には大きな波が押し寄せるに違いない。そして、大きな成果を得た会社は、次の新たな機会を容易につかみ取ることができる。これこそがまさにチャンスだと馬暁軼は考えている。

次にmiHoYoが新たに開発したゲームは、プレイ主導、IP主導とが共存している。

馬暁軼のインタビューで、miHoYoを例に挙げ、IP主導でのゲームは、業界にとてもいいアイデアを与えてくれたことを語った。テンセントはこれまでMOBAやRTSのジャンルでチャンスを掴んできた。今後はIPをより充実させる必要があるだろう。

発表会では、テンセントは現在も『白夜極光』『荆回廊 Ash Echoes』『七人传奇(7つの大罪)』などの2Dゲームに投資を続けている。スタンダードな2Dもの以外にも、韓国で相次いでヒットした『クッキーラン:キングダム』『二ノ国:Cross Worlds』のような、IPに特化したゲームにも投資を始めている。

近年のテンセントの商品は、どれも「IP化」を意識していることは明らかである。「Leageu of Legend」はこの成功事例だ。『伝説対決 -Arena of Valor-』と『Game for Peace』のどちらも、このIP化を推し進めている。

すでに『伝説対決 -Arena of Valor-』のIP化した動きは、多くの人が目にしているだろう。今後『代号:破晓』『王者万象棋』のようなスピンオフ作品を市場で多く見かける日も近い。『Game for Peace』は「和平精英想像力冒険計画」という企画を経て、ゲームの世界観やブランド理念をプレイヤーに浸透させ、「オアシスワールド」のデザインを採用し、コンテンツの可能性を広げている。

テンセントが新たに打ち出した商品たちは、コンテンツを重要視している。TiMi Studio Groupの『王者荣耀·世界『王者荣耀·世界 Honor of Kings: World』のようにトレイラーの冒頭からキャラクターや世界観を押し出す意図は明白である。Morefun Studios『一人之下』の新作は、PVP対戦がゲームの主体ではあるが、シングルプレイのストーリー性、雰囲気、没頭感などの方面に力を入れている。

IP主導による開発は、テンセントの新世代商品へ影響を与える戦略的なアプローチとなっている。

最後にテンセントはより多くのユーザーを確保するために、ゲームの境界線を探求し続けている。

テンセントは現在UGCサンドボックスゲームを最も重要視している会社であることを伝えたい。今回リリースした『创造吧!我们的星球』からも、テンセントが未だにこのジャンルに期待していることがわかる。

『创造吧!我们的星球』は、以前のUGCゲーム商品から得た教訓を生かし、かなりの手を加えられたことが明確にわかる。例えば、宇宙探査、農業、釣り、家づくりや飼育、個性あふれる装飾に装備、戦闘などより成熟したプレイが必要となり、マルチプレイをより強化した。

テンセントは実写映像のインタラクティブゲーム『晨昏线』、フィットネスアプリ『舞动极光』のように、実生活に良い影響をもたらすゲームを強化している。『晨昏线』は、普段から危険で最も警戒すべきである、麻薬の現状について語られている。『舞动极光』は、スマートテレビとスマートフォンだけで、自宅で手軽にフィットネスが可能となった。

それ以外にも『舞动极光』で用いられている、クラウドコンピューティング、レンダリング、AIによるモーションキャプチャーや物理的現実と仮想現実のインタラクティブ技術は、まさにテンセントのこれまでの技術の蓄積の賜物だ。

馬暁軼はインタビューの中でテンセントはゲーム開発のソフトウェアを解体し、AIを効果的に使用する場面を増やしている。UIデザインや原画の調整、人物の動作デザインや動きの補填などにはAIを用いている。テンセントはすでにGame AIR、Art hubなど運用システム、AI系のチームをサポートしている。

最後に馬暁軼は、テンセントはさらなる高みを目指し続けると表明している。そのためにさらなる投資、さらなる研究開発の品質向上、大規模商品の制作にあたっていくという。テンセントは、トップクラスの商品の追及に余念がない。

三大プラットフォーム、三大市場、プレイとコンテンツの関係、AI等、最先端技術の探求、継続してトップを保持し続けながら、カテゴリー細分化、グローバル化を推し進めている。テンセントゲームズは混乱している様子を見せることなく動き始めている。

当然、テンセントゲームズがすべてにおいて王者になることは不可能であろう。テンセントでなく、誰にもできないことだ。しかし、少なくともテンセントの将来への判断力は今も健全である。

03 テンセントゲームズ次のヒットはどこで巻き起きるのか?

これまで多くのことを見てきた。これだけのことをやってきたのに、テンセントは、なぜ次のヒット作がでてこないのだろうか。これだけは、どうしても解決できずにいる。

テンセントは、特にヒット作を出すのに急を要していないのだろう。テンセントはすでに繰り返し成功することで自分たちの実力を証明してきた。単純にいわゆる金儲けを重視しているわけではない。テンセントゲームズの爆発的なゲームは他社のものとは違う。テンセントの多くの商品を他社で考えたら紛れもなくすべてが爆発的なヒット作に値するだろう。それにも関わらず、業界ではテンセントへのヒット作に大きな期待を寄せている。テンセントが次のさらなるヒット作を出すということは、まさに「青天井」ということになる。

同時に、人々はテンセントが各ジャンルすべてでトップになることを期待している。しかし実際にはどんな企業も、全てのジャンルにおいて真の勝者になることはできない。それは、ゲーム以外においても同じことがいえるだろう。テンセントはすでに多くの失敗や機会を逃しており、相当数の敗北を経験している。

テンセントは今日まで業界をリードする位置を保ってきた。それは、いくつの勝負に勝つことができたのか、機会をできるだけ逃さないでこれたか、そしてどれだけ最良の選択ができたかということを表している。そしてそれは、ゲームだけではなく、会社の組織変革、戦略の方向転換においても同じことが言える。

以前ある上場企業のCEOは、テンセントの自己反省力に感服したという。「テンセントは多くの問題を抱えている。誰でも彼らの問題をいくつか挙げられるだろう。しかし、テンセントは外野から取り残されそうになるたびに、必ず適切に調整してきた」。

テンセントはただの投資会社で、過去には細かなジャンルを重視しなかったために長期的な蓄積ができていないと吹聴する人がいる。しかし、会社が最初から最後まですべて完璧にこなすことなど不可能だ。2Dゲーム会社大作のMOBAやFPS商品を作れという人はいない。

今日、テンセントゲームズも変化を求め、新たな選択を試みている。馬暁軼も会社内部では、垂直カテゴリー、少量生産、革新的商品の決定についてフィードバックチームによる見直しを行っており、持続可能な選択がより重要だと考え、すでにインセンティブやPML(Probable Maximum Loss、予想最大損失率)の調整を行っている。

これこそが、テンセントが評価される最大の点だ。これだけのグループ規模と、成功の道筋を知っているからこそ、組織内部では率直に議論ができる環境が維持されている。そしてこれは、テンセントの大規模な制度改革で会社の実行力を証明している。

これまで、人々はゲーム帝国テンセントのことを、水漏れすることもなく、どんな風も通さない鉄壁の企業と思っていただろう。しかしだからこそ、ひとたびライバルとなりうるような企業があらわれれば、このゲーム帝国の城壁に亀裂が入り、建物の基礎がゆらぎ始め、崩れるものだと考える。しかしそうはならない。テンセントゲームズの形態は、閉鎖されたような独立した立方体ではなく、すべての人をつなぐウェブなのだ。

つまりそれは、水密性や気密性を必要としない、風通しの良いウェブなのである。