EVENT | 2023/08/25

X(Twitter)のコミュニティノートは「バカ晒し上げ機能」ではない。より良いインターネットをつくるために「あなたの力」が必要だ

誤解を招きそうなポスト(ツイート)に対して X (旧Twitter)ユーザーが背景情報を書くことができるコミュニティノー...

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誤解を招きそうなポスト(ツイート)に対して X (旧Twitter)ユーザーが背景情報を書くことができるコミュニティノート機能が2023年7月に日本でも正式リリースされました。

このコミュニティノート機能、フェイクニュースや陰謀論などに対して多面的な判断をしやすくなる背景情報が付与されるという、とても意義深いものです。

しかし、この機能自体に対する誤解も多く、僕が見て残念な使われ方をしているコミュニティノートも増えてきているように思います。

そこで、本記事ではコミュニティノートの仕組みを解説しながら、いかにこれが超絶スゴい複雑さで「インターネットっぽい仕組みか」を語っていこうと思います。Xが好きな人も嫌いな人も、どうか最後まで読んでもらえれば嬉しいです。

※本稿は、個人ブログ「フジイユウジ::ドットネット」に書いた記事をリライトしたものです。

フジイユウジ

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自社の経営やら大手企業からスタートアップまで複数社の事業開発や経営、プロダクトマネジメントなどなど。
最近は、仕事のチームコミュニケーションをテーマにしたメディア「Agend」の編集長もやっています。
個人ブログ:https://fujii-yuji.net/
Twitter:https://twitter.com/fujii_yuji

コミュニティノートは書いただけでは表示されない、複雑な仕組み

コミュニティノートは、誤解を招きそうなポストに対して Xユーザーが背景情報を書くことができる機能です。参加方法はこちらのヘルプページに記載されています。

ノートが表示された例。個人的には、この記事タイトルだけで誤解が大きく広まることもなさそうなのでコミュニティノートをつけるほどではないと思うのですが、わかりやすいので

コミュニティノートは、書いてからすぐ表示されるわけではなく、他の複数名のコミュニティノートユーザーから一定の評価を受けたものだけが表示される仕組みになっています。

「役に立った」または「役に立たなかった」という評価をされ、役に立った評価スコアが高くなることで一般の Xユーザーに表示されることになります。

この評価の仕組みは複雑で、多くのノートは一般ユーザーには表示されていません。ほとんどは評価が集まらないか、スコアが足りないままになり、一般ユーザーに見られるのは「表示されるためのスコアに達した」ごく一部ということになります。

そして、一度表示された後からでも「役に立たなかった」評価がされると表示が消えるようにもなっています。詳細は後述しますが、ただの多数決ではなく「役に立たなかった」に重み付けが大きくされているなどの工夫があります。

公開されたノートが後から非公開になることを「混乱がある」と評している記事も見かけますが、パッと見で正しいことが書かれてそうなノートが評価されたとしても、後から不必要だと再評価されるのは良いことだと僕は考えます。

もちろん最初から公開されないほうが理想ではありますが、「再評価の仕組み」があるのは良いことではないでしょうか。

感情的な同調や多数派を煽るようなノートが強くなり過ぎないよう、多数決ではなく複雑な評価アルゴリズムが用意されていて、これが唯一の正しい方法とまではいかないものの、2020年代だからこその新しい方法が使われています。

誰が背景情報を書いたか、どのノートに誰がどんな評価をしたか、データ公開されている

見出しの通り、コミュニティノートではどのポストに対して誰がどんな背景情報を書いたか、どのノートに誰がどんな評価をしたかは、透明性の高いデータ公開がされています。

 Xアカウントさえあれば誰でもデータをダウンロードできますので、データ分析が得意な方は、ぜひ触ってみて欲しいです(実際にデータ分析をして結果を公開している方もいます)。

膨大な量のデータがあって、どのノートにどんな評価がついたかの評価データだけで1GB(660万行)くらいあり、各ファイルやカラムの説明はこちらに書いてあります。

こんな感じで、どのノートにどんな評価がついたか、すべてデータが公開されているので、偏ったノートを書いてるユーザーや、評価が偏っているユーザーを探したり、傾向を分析することも可能です

例えば、ちょっと話題になったあるコミュニティノートがあるのですが、どんな評価がされたのか調べてみると「役に立った」と「役に立たなかった」など様々な150件程度の評価がついていることがわかります。

このノートに限らず、どのコミュニティノートユーザーが書いて、どのユーザーが間違った背景情報を役に立つと評価してしまったのか、すべて調べることも可能です。

敵対陣営のポストだけに躍起になって反論ノートをつけて回ったり、それを同じような仲間グループで評価したりする情報操作も発見可能、というわけです。

(ただし、コミュニティノートのユーザーIDとXアカウントのIDは紐づいていないので、誰が書いたか分かるといっても、コミュニティノート内のIDまでしか分からないようになっています。ここがなぜそういう仕組みなのかは後述します)

多数派の意見だけにならないよう、多様な評価によって役に立つノートが選ばれる

さらに、多様な評価を必要とする仕組みが、何よりも面白いポイントです。

このコミュニティノートの公式ドキュメントの一節を読むだけでも、かなり問題点を理解した上で、さまざまな配慮をしていることが分かるかと思います。

この問題をどのように解決しているか、概念を図にしてみました。

ノート①への評価が分かれた二人が、ノート②では一致。このように別々の考え方を持つ多様な人たちが評価した方が(意見が似ている人の評価よりも)高いスコアになる。

あくまで概念を分かりやすくするための図なので、詳細は是非とも「共謀による情報操作行為の防止」や「多様な意見の反映と、偏見形成の防止」などの公式ドキュメントを読んでみてください。また、このアルゴリズムのソースコードもGitHubで公開されています。

また、ノートに「役に立たなかった」がつくと、書いたノートが「役に立った」場合の5倍のマイナス評価がつき、マイナスの評価がつくことで表示されにくくなったり、書いたユーザーがコミュニティノートで活動できなくなることもあります。

つまり、役に立たないノートを書くイタズラ的なユーザーはすぐ退場になるだけでなく、賛否両論あるノートばかり書いているようなユーザーもマイナス評価されて行動が制限しやすいので、コミュニティが荒れにくくするようになっているのですね(理論上は、ですが)。

仕組みを理解し、コミュニティの健全性の維持に寄与できる

コミュニティノートは前述の通り、透明性があり、誰が書いたか、誰が評価したか分かるようになっています。

しかし、それはあくまでもコミュニティノート内のIDとコードネームであり、どの X ユーザーであるかは秘匿されています。それによって「匿名で好き勝手なことを無責任に書けるコミュニティノートは信頼できない」という誤解をされることがあります。

なぜ、どのXユーザーであるかを隠しているかは、「○○さんが書いたなら高評価しよう」とか「反対意見の陣営のヤツが書いたノートは全て低評価する」といった政治的な行動をとることを防止して、ノートの中身だけで判断するためです。

ノートを書く人にとっても通常のXアカウントと紐づかないことで、同調圧力や報復を恐れずに自身の陣営を批判したりできるようになることが調査によって明らかになっているそうです。

よくよく考えてみてください。

普段、仕事や料理のポストをしている人が「あの政治家にノートをつけた」と思われるならばノートを書いたり評価したりする人は減るでしょう。それでは、コミュニティノートは強い政治性のある人たちだけのものになってしまいます。それでは多様なコミュニティにはならないのです。

また、この記事で何度か説明している通り、低評価がついたノートを書いた人は激しめにマイナス評価されるので、コミュニティノート内での活動はすべて透明性があります。

偏ったノートを大量に書いたり、偏った評価をしているコミュニティノートユーザーを特定することも可能です。そのユーザーの書いたノートをすべて低評価することすらできます。

コミュニティノートの公式ドキュメントには「自身の投稿への評価について結果責任を負い」と書かれています。場合によっては活動が停止させられますから「匿名で好き勝手なことを無責任に書ける」のではありません。

「匿名で好き勝手なことを無責任に書けるコミュニティノートは信頼できない」というポストにいちいち反論ノートをつけているコミュニティノーターもいますが、それこそ自分のアカウントを使ってリプライでやってくれよと思います。あなたも含め多くの人がこの仕組みを理解するだけでも、コミュニティの健全性の維持に寄与することができると僕は考えます。

問題点も沢山あるけれど、バランスを取ろうとしている

もちろん、問題はたくさんあります。

そのひとつが、刺激的で誤解を生む情報やフェイクニュース・フェイク画像が物凄い勢いで広まっているときでも「評価が溜まるまで表示されにくい」という点。

僕自身も、フェイクニュース的なポストにノートを書いたものの、なかなか一般ユーザーに表示されないのをヤキモキしながら見ていることがあります。

しかし、前述のように大衆ウケするだけの刺激的な意見やイタズラ的なノートがすぐ一般ユーザーに表示されるようでは困ります。表示するノートを厳選するために評価に時間をかける力を強めれば強めるほど、誤解を生む情報を止めにくくもなるバランスの難しいものになっています。

さらに、現状のコミュニティノートのユーザー数が全世界でも数万人程度と少ないため、まだまだ多様な評価が集まりにくいという点があります。

そのため、現実的には、多様な評価になるまで表示しないというわけにはいかず、(多数決ではないが、理想形よりは多数決に近い形で)とりあえずノートが表示されているという問題もあります。

これにより、「なんなとく正しいっぽい」といった印象だけで評価された意見までがノートとして表示されてしまうということが発生しています。

本来であればデマやフェイクニュース、極端な誤解を招く投稿でなければノートをつける必要はないはずなのですが、特に誤解を招くポストではないにもかかわらず、間違いを正すためのノートが表示されるようになってしまっていることもあるようです。

体感として8割くらいのノートは、恐らく問題なく本当に「役に立って」いるのだと思いますが、不要なノートが表示されたり、(これは本当に極少数ですし、後から消せるのですが)ノートの方が間違っていたということも起こっています。

できることがある、僕にもあなたも。

コミュニティノートは、 Xを起点としたインターネットの情報流通をより良くすることのできるとても強力な仕組みです。

これだけで全てが良くなることはありませんが、現状の問題点だけに注目しすぎず、多くの人たちが関われば関わるほど良い状態になるという「インターネットらしい仕組み」であり、僕やあなたが協力すれば、嘘の情報や詐欺に騙されるなどの事故・事件を減らすことができる可能性があることにも注目してみて欲しいと思います。

はじまったばかりの新しい取り組みをダメだダメだと腐したり、 X のすることを評論するばかりではなく、僕やあなたのできる範囲でインターネットの健全さに協力する選択をしてもらえたら嬉しいなと思います。

コミュニティノートの「役に立たなかった」や「役に立たなかった理由」をつけることの意味も知って欲しい

今から誰でもすぐにできることのひとつとして、「役に立たなかった評価をする」というものがあります。

コミュニティノートは論敵に反論したり、バカを晒し上げる場ではありません。

「意見を潰す目的」のノートが増えると、フェイクニュースや詐欺対策(特に最近はお金配り系)などのコミュニティノートの威力が下がってしまうと僕は考えます。

もし、ノートがついているポストを見かけたときに、そのノートが正しい情報を提示していたとしても、元ポストをしている人が気に入らないとしても、ノートが「意見への反論」として書かれているのであれば、「このポストには不要なノートである」という評価をつけることを検討してみてください。

「正しい情報がつくなら良いのでは?」と思うかもしれませんが、ノートが必要になるのは元ポストによって誤解が生じるときであって、晒し上げるときや反論するときではないのです。

ノートが書かれてしまうことは止められませんが、バカを晒そうとするノートや、ポストで反論すればいいことをノートを匿名リプライのように使うことを止めることはできます。

「正しいっぽい情報」で相手を叩くためのラベルをつけるのは(そのノートに書かれたことが正しいとしても)、ただの扇動です。間違っていたら叩いて良いというわけではありませんし、少なくともコミュニティノートはその道具ではありません。それはリプライでやってくれ。

元ポストがフェイクニュースだとか詐欺商材を売っているといった誤解を招くものであればコミュニティノートをつける意味がありますが、単に間違ったことや自分と違う意見を言ってるだけならば「本当にこのポストを見た人は誤解をするのか?ノートが必要なポストか?」を考えて評価してみてもらえばと思います。

僕も含め、多くの人は間違ったことを言い(ポストし)ます。そして、間違ったことが言えなくなることや、それを恐れて口を閉ざすようになるインターネットは決して健全とは思えません。

ノートの内容が正しい場合、どうしても人は(表示する必要がなくても)「役に立った」と評価をしたくなるものですが、フェイクニュースや社会的に影響のある誤解が生じるポストにこそコミュニティノートが必要なのであって、間違ったことを言っている人をバカにして溜飲を下げるためのノートであれば(内容が正しくとも)本当に一般Xユーザーに表示すべきか考えてから評価されたるべきだと思います。

この記事を読んだあなたが、より良い評価者としてコミュニティノートに参加してもらえたら、僕はとても嬉しいです。

この壮大な実験に、未来を感じる。

エンジニアの西尾泰和さん@nishioがコミュニティノートについてこう書かれています(僕はまったく面識ありませんが引用させていただきます)。

「合計、平均、多数決」みたいに、しょぼい特徴量しか扱えなかった人類に、アルゴリズムで新しい可能性が提示されていて、それを実験してるところに立ち会ってると考えると、ちょっとコミュニティノートの見え方も変わってきませんか?

絶対に成功する凄い仕組み、、、とは言いません。この実験も失敗に終わるかもしれませんし。

でも、「どうせ良い結果になるわけないよ」と冷笑的な態度をとらずに、バカみたいに前向きに未来が良くなると信じる人が増えれば増えるほど、この仕組みは上手く回るんだと思うんですよね。

僕は X (Twitter)に限らず、インターネットが大好きです。情報流通の仕組みによって様々な考え方や知らなかったこと、楽しいことに出会える。

しかし、情報流通が多くなるということは素晴らしい情報以上にノイズも増えることを意味していて、それは構造上どうしても発生することです。

そんなデジタル社会に対して「人間は愚か」とか「Twitterはゴミ」とか文句を言うのは簡単ですけど、僕はインターネットという情報流通の仕組みによって様々な考え方や知らなかったことに出会えて幸せに生きているので、少しでもその良い部分を増やしたいと思っています。

そんなに完璧でなくても良いと思うんですよね、誤解を招くポストの5%でも10%でも「質の良いコミュニティノート」が書かれれば、それだけで沢山の人が助かるわけですから。