文:FINDERS編集部
国内初公開作品はじめ約100点から思考を読み解く
画家、デザイナー、美術教師として知られるジョセフ・アルバースの展覧会「ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室」が 7月29日から11月5日まで千葉・佐倉のDIC川村記念美術館で開催している。
ジョセフ・アルバースはドイツの造形学校バウハウスで学び、また教師としても基礎教育を担当した。その後、アメリカの芸術学校ブラックマウンテン・カレッジ、アメリカの私立大学イェール大学に勤務し、数多くの芸術家たちを育ててきた。

イェール大学で色彩の授業を行うアルバースと学生 1952年 撮影者不詳 ジョセフ&アニ・アルバース財団 Courtesy of the Josef and Anni Albers Foundation
アルバースは教育者として授業の目的を「目を開くこと」だと述べ、ただ知識を教えるのではなく、学生に課題を与え、手を動かして考えることを促し、試行錯誤する過程で色彩や素材のもつ新しい可能性を自ら発見させようとした。
そして自身も探究を続け、バウハウス時代のガラス作品、家具や食器などのデザイン、20年以上続けられた絵画シリーズ『正方形讃歌』など多様な作品を生み出した。
本展では国内初公開の作品を含む絵画や関連資料など、約100点が展示される。制作者の側面だけでなく、教育者という側面にも着目し、実験的な授業をとらえた写真や映像、学生の作品も併せて紹介される。
展示はそれぞれ展示のテーマごと全4章で構成される。
第1章「バウハウス―素材の経済性 (1920–1933)」では、学生・教師として携わったバウハウス時代に焦点を当てられる。色彩への取り組みで知られる同氏だが、授業で一貫して重視したのは、素材の性質を把握し、効率よく扱う方法を習得することだったという。また、ガラス画工房や家具工房でも教え、家具、食器などのデザイン、ガラス作品なども手がけ、当時の作品が紹介される。

ジョセフ・アルバース《スタッキング・テーブル》1927年頃 ジョセフ&アニ・アルバース財団 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217 Photo: Tim Nighswander/Imaging4Art
第2章「ブラックマウンテン・カレッジ―芸術と生 (1933–1949)」では、バウハウス閉校後に着任したブラックマウンテン・カレッジでの15年間の取り組みが紹介される。自然物を素材として用いるという課題を授業に取り入れ、自身の制作においても抽象絵画や版画といった新たな取り組みがされた時期だという。

ジョセフ・アルバース リーフ・スタディ I 1940年頃 ジョセフ&アニ・アルバース財団 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217 Photo: Tim Nighswander/Imaging4Art
第3章「イェール大学以後―色彩の探究 (1950–)」では、イェール大学に着任以降の色彩への取り組みについて紹介される。色彩課程の授業では、さまざまな色の錯覚を作り出すことを学生に求め色彩をより“正確”に見て、選び出す経験を積むことを促した。

作者不詳[イェール大学の学生]色彩演習 1958–60年頃 ジョセフ&アニ・アルバース財団 Courtesy of the Josef and Anni Albers Foundation
また、アルバースを画家として一躍有名にした絵画シリーズ『正方形讃歌』は、正方形という決まったフォーマットに色彩を配置することで、隣接する色同士がさまざまな効果を生み出すという作品。色彩を移ろいやすいものと考え、そのはたらきを動的に捉えようとするアルバースの探究が反映されている作品として展示される。加えて、主著『色彩の相互作用』(邦題:『配色の設計』)にも使われた学生の作品も展示される。

ジョセフ・アルバース《正方形讃歌》1952–54年 DIC川村記念美術館 © The Josef and Anni Albers Foundation / JASPAR, Tokyo, 2023 G3217
第4章「版画集〈フォーミュレーション:アーティキュレーション〉(1972)」では、過去に制作した作品が元になっている版画集『フォーミュレーション:アーティキュレーション』から15点の作品が紹介される。各作品に付いている同氏のテキスト読みながら作品を巡ることで、同氏の造形に対する思考や色彩への探求を追体験できる構成になっている。
またアルバースが学生たちに出した課題に挑戦できるワークショップ・スペースも用意される。
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課題1 色のマジック:1つの色が2つに見える
課題2 3つの世界:同じ色から違う世界が生まれる
課題3 透明のトリック:透けていないのに透けて見える
課題4 ひだ折りの練習:しなやかな紙が立ち上がる
展示のほかに関連イベントとして、ジョセフ&アニ・アルバース財団チーフ・キュレーターのブレンダ・ダニロウィッツや美術批評家の沢山遼が登壇する講演会やワークショップ、コンサートなどが開催される。
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『ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室』
期間:前期 7月29日(土)~9月18日(月)
後期 9月20日(水)~11月5日(日)
会場:DIC川村記念美術館
料金:一般 1800円/学生・65歳以上 1600円/高校生以下 無料