LIFE STYLE | 2023/08/02

「夏の欧州旅行」は気をつけた方が良い理由…いきなり日本同様の酷暑を迎える地域が多数発生

クロアチアのザグレブ。日陰にしか人がいない
【連載】オランダ発スロージャーナリズム(53)
いよいよ夏休みシーズンが...

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クロアチアのザグレブ。日陰にしか人がいない

【連載】オランダ発スロージャーナリズム(53)

いよいよ夏休みシーズンが到来。中にはざっくり「ヨーロッパが涼しそうだし旅行先には良いかも」と思う方もあるかと思いますが、オランダ在住の筆者としては、夏のヨーロッパ旅行を計画する際は現地の状況をちゃんと調べた方がいい、というのが正直なところ。理由はズバリ、記録的な酷暑が訪れているからです。

日本のメディアでも数多く報道されていることもあり、耳にした人も多いのではないでしょうか。イタリア・シチリア島のパレルモでは、7月24日に観測史上最も高い最高気温47℃を記録、ギリシャでも7月14日に最高気温40℃以上に到達、そのほか多くの地域でも30℃台後半の猛暑日が訪れ、北海道よりも少し高い位置にあり例年は夏でも涼しいドイツ(実際は今も10〜20℃台の日が少なからずあります)でさえ最高気温が37℃になった日があるなど、日本の暑さと変わらないほどの猛暑になっており、山火事の発生なども大問題になっています。

ということで、今回はヨーロッパのリアルをお届けします。

吉田和充(ヨシダ カズミツ)

ニューロマジック アムステルダム Co-funder&CEO/Creative Director

1997年博報堂入社。キャンペーン/CM制作本数400本。イベント、商品開発、企業の海外進出業務や店舗デザインなど入社以来一貫してクリエイティブ担当。ACCグランプリなど受賞歴多数。2016年退社後、家族の教育環境を考えてオランダへ拠点を移す。日本企業のみならず、オランダ企業のクリエイティブディレクションや、日欧横断プロジェクト、Web制作やサービスデザイン業務など多数担当。保育士資格も有する。海外子育てを綴ったブログ「おとよん」は、子育てパパママのみならず学生にも大人気。
http://otoyon.com/

過去最高に暑かった6月

イタリアのウディネはワインの有名な産地。写真は農家民泊のレストラン。暑すぎて外の席には誰も座らず

例年、ヨーロッパで夏といえば6月頃から始まります。日本のように梅雨がないので3、4月からどんどん暖かくなり、暗く、寒く、雨の多かった冬の雰囲気は一気に消えて、陽が長く晴れる日も多くなり、そして花が咲き乱れます。桜が咲く頃から、一気に夏に向かって陽が長くなっていくようなイメージです。

そして例年7月に入ると夏本番、という感じなのですが、今年はヨーロッパ全土で6月が異常に暑かったのです。筆者が住むオランダでも6月中にも関わらず連日30℃を超える日が続きました。普段は、というか今までは、30℃を超える日は一夏に1回程度でした。

筆者は6月にデンマークやスウェーデン、そして英国といわゆる北欧や北ヨーロッパに行ったのですが、もともと夏の訪れが早いデンマークやスウェーデンでは、もう夏本番な気候に。もちろん、流石に北欧ですから30℃を超えるようなことはなかったのですが、それでもその時期としては暑かった記憶があります。また、同じく6月に訪れた英国はすでにかなり暑く、食事で入った地元のラーメン屋さんでは、汗だくになりながら熱いラーメンをすすった記憶があります。

ドイツ・ベルリンの壁の跡地(左側の鉄柵がコンクリート壁の中にあった柵)。この写真を撮影したあと急に雨が降ってきて、気温は一気に20℃以下に。「ヨーロッパ全土が酷暑」というわけではなくこういう地域もあります

この時期、フランスやスペインや、ポルトガル、イタリア、ギリシャなどは連日のように猛暑である、というニュースが流れていました。

ここで、弊社の発行するニュースレター「Nレタ」でご紹介したフランスの国際ニュースチャンネル「フランス24」の記事をご紹介します。

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ヨーロッパは気候変動による致命的な熱波の増加に備えるべきだと、直近に世界気象機関とEUのコペルニクス気候変動サービスが発表した報告書が警告しています。世界で最も急速に温暖化しているというヨーロッパ大陸の昨年の気温は、産業革命以前に比べて2.3度上昇したとのこと。干ばつや氷河の融解などが農作物に大きな影響を与えているとも。また昨年は多くの国が記録的な暑さを経験し、熱波や洪水が問題となりました。一方で、日射量が増加したことで風力発電と太陽光発電の発電量が増加し、昨年、初めて化石ガスを上回る発電量が生産されました。気候変動の影響は深刻ですが、再生可能エネルギー技術が解決策としてますます注目されています。

このように、実はすでに気候学者などによって、ヨーロッパの急激な気温上昇の警鐘は鳴らされており、体感的にもここ4、5年、夏がかなり暑くなっている実感があります。そして、実際にこの6月は過去最高の暑さになったのでした。

エアコンがないホテルも多数。暑さから逃れる方法はない

プラハの名所、カレル橋を望む。暑さによりビーチ感満点の川

7月に入ってから、オランダの暑さは少し落ち着いたようにも感じますが、南ヨーロッパは相変わらずの猛暑日が続いています。北ヨーロッパから、スイスアルプスを超えて南に行くと、その暑さを全身で体感することができます。気温も35℃、36℃と日本と同じくらいです。ただ、日本と比べて確かに湿気がないので、汗が噴き出てくるということはないのですが、それでも刺すような日差しの元に少しでもいるとジリジリと肌が焼けてくるのが感じられるほどです。炎天下でのサッカーなどはとてもできない感じです。

筆者は7月にオランダから南ヨーロッパに向けてドライブ旅行をしているのですが、ルクセンブルグ、スイスあたりでも、日本同様すでにかなり暑いです。

空気は乾燥しており過ごしやすかったが、日差しが痛かったルクセンブルグ

さらに南下して、イタリア、スロベニア、クロアチアまで行くと、なんとなく、もうアフリカに近い感じがしてきます。空気は乾いていますし、海岸沿いなどは岩肌が露出して、大きな木を見かけない景色が続きます。刺すような日差しは眩しく目を開けていられないくらい明るいです。ギリシャでは暑さが原因で大きな山火事が起こり、3500人もの観光客が避難を強いられています。そのくらい異常な暑さです(BBCによるニュース記事はこちら)。

海が綺麗なことで有名なクロアチアなどでは、ビーチは人で賑わっていますが、街を歩いている人はほぼいません。100m歩くたびに、喉が乾いてビールが飲みたくなるような気候です。

クロアチアのシュコサン。ビーチ沿いのローカルエリア。36、,7℃の半端ない暑さだったが、泊まった宿では、全く効かないのに音だけがうるさいエアコンが虚しかった。寝苦しさ倍増

またこの辺りの地域は、基本的に国が貧しいこともあり、さらにごく近年までは必要なかったかエアコンがない家や店も非常に多いです。ちょっと郊外や田舎に行くと、ホテルでもエアコンがないところも多く、暑さからは全く逃げ場がないような印象も受けます。

夜も暑いので窓を開けて寝ると虫が入ってきたり、遅くまで近所で騒いでいる声が聞こえたり、近所からのタバコの煙が入ってきたりと、なかなかに劣悪な環境になったりもします。

ハンガリー、スロバキアや、チェコなどの中央ヨーロッパも暑い日々は続いており、同じように地方はエアコンもなく、旅行などに来ると予想外の暑さにちょっと後悔をするかもしれません。

ここまで書いて、昨年の7月に北ドイツに行った時に、たまたま38°Cだったことを思い出しました。その時に泊まったのもエアコンがないホテルで、まさに蒸し風呂のような中で寝れない夜を過ごしたのを思い出しました。

ヨーロッパと一口に言ってもかなり広いですが、ここまで書いてきたようにまだ暑さ対策が十分でない地域も少なくありません。大袈裟ではなく熱中症対策なども気にしながらの観光をした方が良いかと思います。また、最近の気候の傾向として、急激に変化することも多く今週は30℃を超える猛暑日が続く一方、来週は最高気温が20℃、というようなこともしばしば起こります。

オランダの我が家も、暑い日は朝からカーテンを閉め切って太陽光を部屋の中に入れないようにします。それでなんとか室温を上げないようにして一日を過ごすのですが、それくらいしか方法がないのです。

ちなみに、こちらも弊社のNレタで取り上げたBBCのニュースなのですが、今年、太平洋でエルニーニョの発生が確認されたので、2024年が過去最高に暑くなる年になると警告されています。エルニーニョの発生は干ばつや森林火災、作物の収穫量減少を招き、経済的にも大きなダメージを与えると言われています。

ヨーロッパに限りませんが、我々は年を追うごとに暑くなっていく地球に住んでいることを、改めて認識しておいた方が良いかもしれませんね。


過去の連載はこちら