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文:岩見旦
アメリカ国内の流通する書籍の約85%をカバーするNPD BookScanによると、今年6月の大人向けコミックスランキングで、日本のマンガがトップ20をすべて占めた。ちなみに1位は『僕のヒーローアカデミア VOL.28』。トップ20を日本のマンガが埋め尽くすのは3カ月連続だ。
日本のマンガがアメリカを席巻する中、長年『バットマン』などを手掛けたコミックライターのチャック・ディクソン氏が7月7日、自身のYouTubeで語った「日本のマンガがアメコミを圧倒した理由」が話題になっている。
アメコミのスーパーヒーローは作家の政治的意図のアバター
チャック氏は「日本のマンガには多くの献身、情熱、そして技術がありますが、マーベルコミックとDCコミックスにはほとんど見られません」「残念なことにアメコミにはバリエーションがなく、マンガのように誰もが楽しめるものではありません」と一刀両断。「マンガのイラストは魅力的で、変化に富んでおり、好きになる理由がたくさんあります」「一方、アメコミは一部を除いて、粗末な作りでアイデアに乏しく、明らかに政治的意図が感じられます」と述べた。
そして「私の好きなマンガのジャンルの一つに『釣り』がありますが、吸血鬼や魔女、ゾンビが釣りをする話ではありません。普通の男性が船や海岸、川のほとりで釣りをする話です。ストーリーは魅力的で、美しく描かれています」「アメコミのメインストリームの出版社はスーパーヒーローばかりで、作家の政治的意図のアバターにすぎません。うんざりしています」「アメコミにひとつのテイストしかないとなると、日本のマンガに軍配が上がるのは当然です」と辛辣に批評した。
チャック氏はアメコミの最大の問題点を、メインストリームにいる人たちが日本のマンガの悪口ばかり言っているだけだと指摘し、もっとマンガから学ぶべきだと主張。また、マンガに勝つ解決策をして「アメコミはもっと多様で複雑なストーリーを描いて、イラストに力を入れてください」と提案し、「薄いフォトコミックを止めて、厚いマンガを参考にしましょう」とフォーマットの変更を勧めた。
チャック氏はアメコミの追いやられている現状を嘆き、「子どもたちはみなマンガを読んでいます。アメコミを読んでいる人を知りません」「マンガを読んでいるのは普通の子どもたちです。オタクでもなく、コンベンションに行っているわけでもありません」と締めくくった。
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