文:神保勇揮(FINDERS編集部)
特集「続かない・進まないテレワーク 2021年の課題」を開始します
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発出されてから約1年、「テレワークが可能な業務」に携わっていて、実際に導入・継続できた企業はどれだけあっただろうか。
テレワーク導入率に関する調査は官民ともに膨大に存在するが、その中からいくつか見てみよう。
■リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」(21年5月発表)
→1回目の宣言下で急速に伸びたテレワーク実施率(32.8%)は、20年5月の宣言解除後に18.1%まで減少し、21年1月に行われた2回目の宣言下でも25.4%に留まっている。
■東京都「テレワーク実施率調査」(21年5月)
→今年5月の都内企業(従業員30人以上)での実施率は64.8%で、過去最高の数値。ただし内訳を見ると従業員数の多い企業の方が導入率は高く、300人以上が82.8%、100〜299人が68.3%、30〜99人が59.7%となっている。
医療・販売・物流などテレワーク不可能な業種は確実に存在するが、こうした調査では「週に1度だけテレワークできる」というケースも含まれていることを考えると、あまりにも少ない数字だと言わざるを得ない。政府が叫ぶ「テレワーク実施率7割」など到底達成できはしないだろう。
そうした状況改善に少しでも資するような知見をお伝えすべく、今回「進まない・続かないテレワーク 2021年の課題」という特集を企画した。
特集では「なぜ日本でテレワークが進まない、続かないのか」という直球の質問を皮切りに、
・では導入するために何をすれば良いのか
・部下の育成はどうすれば良いか
・正社員にテレワークを実施させるべく非正規社員に出社を押し付けていて良いのか
・急増する「テレワークうつ」にどう対応すれば良いか
・「テレワークは生産性が落ちる」説は本当か
という5つのテーマに基づきインタビューを実施している。ご登場いただく識者とテーマは下記の通りだ(敬称略)。
沢渡あまね:日本でテレワークが進まない「5つの要因」。経営陣・中間管理職・現場が明日からすべきことはこれだ!
片桐あい:「テレワークで社員監視ばかりするダメ上司」が生まれるワケ。部下を病ませもサボらせもしないマネジメントを考える
青木耕太郎:「派遣社員だけテレワーク禁止」「求めたらクビ」は違法の疑いアリ。ブラック企業と戦うユニオン共同代表が語る実態と対策
渡辺佐知子:産業医が警告!放置すると危ない「テレワークうつ」の実態と対処
石倉秀明:「テレワークは出社時より生産性が落ちる」説は本当か?約800名テレワーク企業のCROが語る「仕事の本質」
テレワークは新型コロナ感染防止対策のひとつではあるが、そのためだけに実施するものでは決してない。そして単なる社員向け福利厚生でもない。デジタルツールを駆使し、場所を問わず仕事ができるようになることはまずもって採用力強化に結びつくし、子育てや介護で泣く泣く社を去る人も減らせるはずだ。その積み重ねが企業の競争力アップにも結びつく。今後人手不足が常態化する日本では喫緊に対応すべき課題だ。
なお、今回はあえてテレワークを導入している企業の取材はしなかったが(「大企業だから」「トップが先進的な考えを持っているから」と敬遠しないで欲しかったからだ)、FINDERSではテレワークに限らず先進的な働き方や考え方を今後も紹介していきたいと考えている。我こそは、という企業や研究者の方はぜひFINDERSのTwitterアカウントのDMやinfo@cnsmedia.jpまでご連絡いただきたい。