EVENT | 2021/06/10

社長とグラビアアイドルの2足のわらじ。令和のスターグラビアアイドル誕生!【連載】超副業論!(4)

突然だが、過去記事でインタビューした、冨樫真凜氏が、なんと今年の2月に週刊プレイボーイよりグラビアデビューを果たした。 ...

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「子どもの寝かしつけ」事業を通じ、実現したい育児環境

―― 現在、育児関連事業では具体的にどんなことを手がけていますか?

冨樫:まだ完全にかたちになったわけではありませんが、生後4〜6カ月の赤ちゃんを対象に、子どもの寝かしつけをサポートする事業に取り組んでいます。今、大人のスリープトレーニングが話題になっていますが、子どもの睡眠の習慣づけって実は、母親だけに負担が寄りがちなので、大変なんです。

―― 育児経験者ですけど、子どもが寝るまでは自分の自由な時間はやって来ないし、しかもなかなか寝てくれない日もザラにあって、確かに大変でした(笑)。

冨樫:親は電気を消した暗い中で、子どもに添い寝しながら謎の無の時間を過ごさなければならず、完全に瞑想に近い状態だからきついですよね(笑)。しかも親御さんにとってはそれが毎晩のこと。赤ちゃんにとっても睡眠は成長要因なので、ちゃんと習慣化することが大切だと考えています。

―― それはやはり、海外留学中のベビーシッター経験から来ているのですか?

冨樫:そうなんです。アメリカ留学中、夫婦の家にホームステイしながらベビーシッターをしていて、ちょうどその家の赤ちゃんがスリープトレーニング中だったんです。

睡眠習慣の自立をサポートするために、泣いてもすぐに抱っこせず、少し様子を見るなど、親御さんからの要望がありました。そのとき、赤ちゃんの睡眠の自立をさせる概念があることを初めて知りましたね。

しっかり子どもに睡眠の自立をさせることで、親の睡眠時間や余裕も確保できます。結果、それが育児の余裕にも返ってくるので、とてもウィンウィンな考え方なんですよ。

―― 寝かしつけをサポートする事業では、具体的にどんなサービスを考えていますか?

冨樫:寝かしつけのメソッドの提供のほか、実際に先輩パパたちと悩み事を共有できる情報コミュニティ、チャットサービスを考えています。

人員の派遣もやりたかったのですが、夜間、知らない人が来ると赤ちゃんが興奮してしまうし、コロナの影響で、今はなかなか家に人を入れにくい状況です。そんな事情で人の派遣は保留になっています。

育児の社会化で関係人口を増やし、子どもに幅広い選択肢を

―― 育児関連事業のその先に見据えているビジョンを教えてください。

冨樫:“育児の社会化”と呼んでいるのですが、育児世代だけでなく、社会全体で育児をする社会が理想だと考えています。健やかな育児が目的で、それによって、親も健やかでいられる状態が社会にとっての理想と捉えています。

子どもを主役に置いたとき、家庭内だけで育児が完結してしまうと、親の価値観がダイレクトに影響します。たとえば、大卒で医師の親がいる一方で、中卒でシングルマザーやシングルファザーの親もいますよね。金銭的なリソースも違えば、進学するかどうかの当たり前の価値観も違ってきます。

その点、育児の関係人口が増えて、まわりの多くの大人が育児に関与できれば、その子どもに与える価値観も多様になります。

たとえば、大学に行く人もいれば行かない人もいる。メインの仕事をしながら面白い副業をする大人もいるなど、子どもにいろんな価値観に触れさせることで、その子により多くの選択肢を与えることができると考えています。

―― やはりそれは、海外留学中に多様な教育をする幼稚園や学校を見学して得たものは大きいですか?

冨樫:海外の育児の現場を見て、その子の社会をいかに広げてあげられるか?ということが、先に生きている大人の役目だと感じました。

アメリカのモンテッソーリ教育の幼稚園では、お迎えに来る親御さんが持ち回りで園児たちの前で、「自分はこんな仕事をしていて、こんな生きがいがあって、将来はこんなことをしていきたい」といった話をする機会を設けていました。これは日本でもできることだし、とてもいい試みだと思いましたね。

―― 今後、実現していきたい企画はありますか?

冨樫:Z世代にフィットした、会社の福利厚生についてインフルエンスできるといいなと考えています。私と同年齢は大学4年になるので、就活生が多くいます。育児の社会化を目指すには、働き方が密接に関わるので、企業のワークライフバランスをサポートする事業に今、とても興味がありますね。

プライベートでは、ジェンダーギャップに興味があるので、国際女性デーでの企画のように、ハッシュタグをつけてみんなで盛り上がるような大きな企画ができたらいいなと思っています。

自分の中の常識を取り払える機会を作りたい

―― コロナ禍でも関係なく、大きなうねりを作れる冨樫さんなので、アフターコロナの時代もますます活躍が期待できそうですね。グランプリ受賞の賞金は何に使いたいですか?

冨樫:ファンの方とのオフ会に使いたいのですが、コロナの影響で今は難しいですね。でも、アフターコロナには絶対やりたいと思っています。その際、私の興味のある社会課題をテーマにコンテンツを作ることになるので、ただ撮影会をして終わり。というスタイルにはならないと思います(笑)。

―― 具体的にはどんなテーマを考えていますか?

冨樫:平成31年の東大の入学式で上野千鶴子さんが語ったエピソードが好きなのですが、無自覚な強者が一番怖いと思いました。

東大生に向けて上野さんは、「あなたたちはがんばってここまで来たと思っているけど、がんばれたのは、まわりの大人たちのおかげ。がんばっても報われない人も世の中にはたくさんいることを自覚するべき」ということを仰いました。

とても重要で素敵な話だと思いました。多くの政治家をはじめ、JOC会長を辞任に追い込まれた森善朗氏の発言にもあるように、非難される発言をしてしまう“当たり前”を作ったのは、環境によるものです。

その環境に対して思うことは多々あって、官僚や政治家などの日本のリーダーや重鎮を多く輩出する東大の卒業式でそのスピーチをすることの意味は大きいと思いました。

東大生の中には、当たり前のようにお受験し、好きなだけ本を買い与えられる環境で育ってきた人も少なくないでしょう。でも、自分の当たり前や常識は、世界のすべてではありません。

自分が思うよりも世界は広いものです。自分も相当恵まれた環境で育ててもらったからこそ、がんばりが報われず、がんばる環境さえなかった人たちが世の中にはたくさんいることを知るきっかけを作りたいと考えています。

―― そう思うようになったきっかけはなんですか?

冨樫:23歳以下の学生を120人ほど選抜して集めたイベント「U-23サミット」2021年の代表を務めています。選抜基準はさまざまありますが、やはり選抜される人は優秀で、ある種、育った環境も含めてたまたま恵まれた環境にいる人たちです。

そういう人たちに、現実の社会構造をどうやって伝えたらいいかを考えるようになったのがきっかけですね。

―― 冨樫さん自身は大学に進学せず、起業されているわけですが、ひとつの大学に所属せず、あらゆる大学の優秀な上澄みを集めていることがすごいですよね。

冨樫:同世代でも、環境問題や性教育など、興味の幅はそれぞれで、上場を目指して頑張っている子、フェアトレードで国レベルの平等を実現しようとしている子もいて、刺激を受けています。それに大学に行ってないからこそ、積極的に友達を作りたいというのもあります(笑)。

―― 社会課題をテーマにしたイベントだと、反体制派のイメージになりがちですが、冨樫さんの活動を見ていると、いい意味でゆるさがあって入りやすい印象ですね。

冨樫:対立構造にはしないように気をつけていますね。対立構造だと、白熱したり熱狂させたりしやすいとは思いますが、それだと誰かを排除することにつながりますから。

―― 冨樫さん自身のライフプランについてはどのように考えていますか?

冨樫:以前、FINDERSの記事で紹介した、私の結婚と育児のプランをプレゼンした当時の彼氏とは別れちゃったのですが(笑)、世の中にはびこる「そろそろ適齢期だよね」といった押し付けの固定概念には突っぱねたい気持ちはありますね。今は結婚や出産については、時が来たら、タイミングがあればいいなと思っています。

プレゼンしたときに、一度出産において重要な卵子の働きについてもいろいろ調べて勉強しました。だから、どのタイミングでどんな選択肢が減って、いかに選択肢を増やせるか?といったことをわかっているので、安心材料にはなっています。

今、「プレコンセプションケア」という妊娠前のケアをする医療分野があるのですが、専門医の方と以前ワークショップをしたこともあります。それは今後、同世代に広めていきたい概念ですね。

―― 「一生懸命仕事してきたら、いつの間に30歳をすぎていた」という女性は多いと思いますが、その先に待っているのが、不妊治療だとしたら切ないですよね。それをどうにかする働きかけをしていきたいということでしょうか?

冨樫:まさにそのとおりで、女性の社会進出と並行した妊活、出産ケアがなにも作られていないのが現状だと思います。ワークライフバランスはもちろん、女性の不安感を払拭するような妊娠前のケアの知識をつけておくことは重要です。妊娠を望む前の世代に届けられたらと考えています。

たとえば、「20代後半の女性と付き合ったら結婚もセットで考えないと」みたいな話って飲み会でも悪気なく出がちですよね。でも、結婚の意思決定を押し付けるのは違いますし、妊娠に関して正しい知識を学んで対策することが重要だと思うんです。

―― 現在、21歳の冨樫さんがイメージする、将来の育児社会の理想はどんなものですか?

冨樫:育児の関係人口を増やす考え方ですが、たとえば、離乳食を作りすぎたらお裾分けし合うなど、友達と一緒に育児できるような環境です。

既婚は既婚、独身は独身で付き合いが分断されがちですが、どちらかが独身だとしても、身近な人の育児に参加することで、育児に対して解像度が上がる経験になると思うんです。逆もまたしかりで、子どもがいる側も、用事があるときに子どもを預かってもらえるなどウィンウィンですよね。

―― 最後に、今後のグラドルと実業を合わせたビジョンについて教えてください。

冨樫:男性の育児休暇が8割を超える社会になったらいいなと思っています。それからもうひとつ、どの世代に対しても、ジェンダーギャップにおける下駄の概念を知ってほしいと考えています。

採用に関しても、能力がないのに女性というだけで採用されるのか?といった見方をされますが、そうではなく、いままでさまざまな要因で「女性というだけで不採用になっていた」構造的差別を取り除いていくためのアクションです。

女性というだけで入学できない医大の例もありますが、女性に下駄を履かせるのではなく、男性が履いていた下駄を脱ぐのが正しい考え方だと思います。

ジェンダーギャップは年代や性別を問わずあるものなので、まずは自分が履いている下駄を自覚することが重要です。こうしたことをグラビアの活動と並行して、まだ育児やジェンダーに関心がない層も巻き込みながら、広めていけたらいいなと思います。


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