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文:鈴木杏奈
ホームレス対策に頭を悩ませているのは、世界中どこの都市も同じだろう。五輪開催を見据える東京も例外ではない。
そんな中、スイスのバーゼル市が実施したホームレス対策がSNS上で物議を醸している。
一定期間スイス国内に戻らない旨の契約を交わす
スイス北西部のライン川沿いに位置するバーゼル市は、人口は17万人強で、スイスで3番目に大きな都市である。『20Minutes』によると、バーゼル市はホームレスから希望者を対象として、一定期間スイス国内に戻らない旨の契約を書面で交わすことを条件に、ヨーロッパ各国へ出国できる片道チケットを配布していることが明らかになった。
バーゼル市法務局の報道官であるトプラク・イェルグ氏は、「この契約に違反し、一定期間を経ずにスイス国内に戻ってきた場合、国外退去処分を適用する場合もある」と語っている。
これまでに、ベルギーやドイツ、イタリア、ルーマニア等への渡航を希望する計31人がこの制度を利用し、ルーマニアのブカレスト行きの60スイスフラン(約7200円)の航空チケットを手配したこともあったという。
過去にイギリスでも実施された同様の施策
驚くべきことに、こうしたホームレス対策を講じたのはスイスのバーゼル市が初めてではない。『Guardian』が2018年に行った調査によると、イギリス国内においても同様の対策が講じられたという。2015年以降、イングランドやウェールズにある83の自治体で、6810枚の片道チケットが配布された。
当時、イギリスのある自治体は、ゆかりのある土地に戻りたいと希望するホームレスに対する施策であり、自主的に制度を活用したことを強調した。しかし、初めて行く土地へのチケットを渡されたケースもあり「自分には選択肢がないのだと感じた」と漏らした人もいたという。
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