文:佐藤敦子
米国テキサス州オースティンに作られた、ユニークな家が注目を集めている。
ここに暮らす元ホームレスの男性が「死ぬまでここにいたい」と漏らしたその家は、果たしてどんな家なのだろうか。
家賃はたった300ドル
ティム・シアさん(70歳)はかつて薬物中毒に苦しみ、長い間ホームレスで車中暮らしをしていた。ティムさんは、「以前のライフスタイルでは、私は完全に自分の殻に閉じこもっていました。不安でしたし、いつも身をひそめて孤立していました。人と触れ合いたいなんて全く思っていませんでした」と『New York Post』の取材に語っている。
ところが、ティムさんの人生は、ホームレス用住宅コミュニティ「Community First! Village」に来て大きく変わった。このコミュニティでは51エーカーの敷地に500軒の家が立ち並んでおり、ティムさんは3Dプリンターで作られた家に暮らし始めた。「昔とは真逆の生活です。今は、いろんな人たちとさまざまな活動をしていますよ」とティムさん。
ティムさんの家の広さは400平方フィート。ベッドルーム1室、バスルーム1室、フルキッチン、リビングルーム、夕日を一望できる大きなポーチがついている。関節炎を患っており最終的には車椅子になるかもしれないため、間仕切りのないタイプの間取りを選択したそうだ。
家賃はたったの300ドルで、さらにコミュニティ内の仕事で収入を得ることも可能だ。ティムさんはアメリカで初めて3Dプリンターで作られた家に住んだ人になった。
このコミュニティは、「Mobile Loaves&Fishes」というプロジェクト名で、オースティンの路上で20年間ボランティア活動をしてきた不動産開発者のアラン・グラハムさんによって、2015年に作られた。グラハムさんは単にホームレスに住居を与えるだけでなく、真の意味でのコミュニティにしたいと考えているという。
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