飼い犬の世話を極めたくなり、需要が急増するペットシッターへ
―― 週7日で働くバイタリティがあったのはもちろん、「面白そう」という直感に従ってご自身の可能性を広げてきたわけですね。小市さんの興味の幅は広く、しかもそれが趣味で終わらないところも特徴です。ペットシッターをやるようになったきっかけについてはいかがですか?
小市:決して仕事にしようと思ったわけではなく、飼っている犬のためにベストを尽くしたくて勉強し始めたのがきっかけです。愛玩動物飼養管理士の資格を取ったり、動物行動学の先生が海外から来日すれば講座を受講したりしました。
そのうち、まずは友人周りからペットシッターの仕事が舞い込んできました。お客さんは外国人が多いです。飼い主がバケーションで帰国する間、某高級住宅地にある豪邸にひと夏泊まり込みで犬4匹の世話をしたこともありますけど、結構な体力仕事なんですよ。企業のペットシッター部門の立ち上げのお手伝いをしたこともあります。
欧米と違って日本では、飼い主の不在時はペットホテルに預けるのが主流ですが、ペットにとって普段の環境で過ごせるのはストレスにならないこともあって、ここ数年ペットシッターの需要は伸びているんです。
好きなことをじっくり学んで着実にアウトプット
―― 小市さんの中では好きなことや仕事が地続きでつながっているように感じます。お菓子が好きな小市さんですが、アイシングクッキーやデコレーションケーキの製作を手がける「Cherry’s party room」を主宰していて、そちらもプロの仕事として確立していますよね。
小市:小さい頃からお菓子を作るのも食べるのも好きでした。自由なデザインで作れるアイシングクッキー(クリーム状のカラフルなお砂糖で絵を描いてあるクッキー)の制作が楽しくて、はじめは本やYouTubeを参考に独学で学びましたが、一応師匠からひと通り習ってから仕事にしました。
私は、色々なところからインスピレーションを受けたらアウトプットせずにはいられない性質なんです。数年前から教室を主宰して自宅サロンで生徒さんに教えたり、撮影用の小道具としてのオーダーをいただいたりしています。
―― 内容がニッチなものほど横のつながりだけでは集客に限界があると思いますが、告知・宣伝はどのように工夫していますか?
小市:一度誕生日にオーダーいただくと、感激してリピートしてくださるお客さんも多く、そこから口コミでご紹介いただくことも多いです。公式サイトもありますが、それよりも最近はInstagramやFacebook経由で生徒さんが来てくれることが多いですね。
アイシングクッキーの仕事は全体から見ると収入としては微々たるものですが、お客さんに成果物を渡して喜ぶ顔がダイレクトに見られるのが嬉しく、とてもやりがいがあります。
かつてやっていたクライアントの意見に寄り添う必要がある「デザイン」ではなく、個性を前面に出せる「アート」に近いところがやっていて楽しいですね。
―― 好きなことの技能を伸ばし、やりたいことを仕事にして喜ばれるなんて、理想的な副業スタイルですよね。小市さんに撮影用のアイシングクッキーやライティングの依頼をした時に思ったのですが、多少無茶ぶりでも85点を目指すスタンスで、こちらの期待に応えようとしてくれたのが印象的でした。複数の仕事を続ける上で大事にしていることはありますか?
小市:イベント業界で磨いた、いつも笑顔で挨拶をきちんとすることはもちろん、ハキハキとした接客がどの仕事にも役に立っているかもしれません。それから企画趣旨に興味を持って接するフットワークの軽さでしょうか。
多くの仕事を持つことは時にリスクヘッジになる
―― 柔軟に副業をしていてよかったなと思うことはありますか?
小市:コロナ禍で一番影響を受けたのが、結婚式の司会の仕事でした。ご存知のように、あらゆるイベントが自粛に追い込まれる中で、結婚式をキャンセル・延期する人が続出していますから。それから対面でのアイシングクッキーの指導も同様にできなくなりました。
でも、ありがたいことに、ポッカリ空いたところに友人や知人から紹介された短期の事務仕事とか、歯医者の受付のバイトを身軽に受けることができました。
急に人出が足りなくなった時に、周りに声をかけても、基本的にはみんな固定の仕事があるからそう気軽には頼めませんよね。その点、私の場合は「ちょうどよかった。いいよ」とフットワーク軽く仕事を受けられます。
―― 小市さんと言えば、FINDERSの人気連載「ハズさない!接待メシ(後に持ち帰りメシに変更)」の取材・ライターを務めていただき、食べログでもあらゆるグルメコミュニティをお持ちです。今後、グルメライターとしての活動にも力を入れていく予定ですか?
小市: 食べログの点数ベスト100店が選ばれる各ジャンルの「百名店」というのがあるのですが、今年はコロナ禍で会食がしにくくなったので、1人で「スイーツTOKYO百名店2020」巡りをし始めて、半年ほどで制覇したんです。
制覇したのは全国で今のところ9人しかいません(12月21日時点)。これまではあくまで趣味でしたが、スイーツに関しては百名店を制覇できたことで、そろそろお金をいただいてもいいフェイズかなと思うようになりました。今後は製菓学校にも行きたいと考えています。
――最後に、「副業にチャレンジしたい」「副業に興味がある」というFINDERS読者に、6つの副業をこなす小市さんからアドバイスをお願いします。
小市:私の場合、好きなことから派生した仕事が多いですが、決して独立志向が強かったわけではありません。1社目を退職したら「じゃあフリーで仕事を受けてくれる?」と言われて、気づいたらさまざまな仕事をするようになりました。
戦略的に独立して着実に稼ぐフリーランスの友人からは、「甘いんだよ」なんて言われるし、ふわふわしているように見られることも(笑)。
でも、「面白そうだから」という理由で新しいことに飛び込むには、私なりに「報酬をどれだけ得られるか」という重要な点もしっかり見極めています。自分が楽しく仕事をするためのバロメーターとして、実は貯金のボーダーラインを決めていて、それを下回ったら仕事を選ばずがむしゃらにやる、といった調節は常にしていますね。
あとは私の場合、いい意味でプライドがなくて、「いい歳してこんなことを始めるなんてスタートが遅すぎる」といったことはあまり思いません。まずはプライドや垣根は取り払い、フットワークを軽くして、声をかけやすく、仕事を頼まれやすい人になることをおすすめします。