CULTURE | 2021/01/22

異例の話題作『ザ・エレクトリカルパレーズ』はいかにして作られたのか?監督の奥田泰に訊く

M-1グランプリ2年連続ファイナリストで、テレビ出演が急増しているお笑いコンビ・ニューヨーク。彼らのYouTubeチャン...

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『桐島』を彷彿?想定外だった視聴者の受け止め方

―― やはり、『エレパレ』の助演男優賞はニューヨークさんだと思います。自身のYouTubeチャンネルにも関わらずある種黒子に徹して、芸人さんたちをイジる悪意のさじ加減が絶妙でした。

奥田:ニューヨークは話を聞いて引き出すのが上手いですよね。インタビュアーというか、トーク番組のMCとしての腕があるんだと思います。

あと、登場するのは基本全員ニューヨークの後輩じゃないですか。RGさんもおっしゃってましたけど、ニューヨークは芸人としての姿を後輩に背中で見せてきました。まずネタで面白いと思わせるものをちゃんと作ってきて、紆余曲折あって始めたYouTubeでも再生数だけではない、自分たちが面白いと思うもの、舐められないものを撮ってきました。そういう背景もあると思います。

ニューヨーク(写真提供 ニューヨーク Official Channel/OmO)

―― 全体で言うと、最初はエレパレをイジって笑いにしていたのが、次第に青春群像劇のようになり、途中ある疑惑が沸いて、ラストに掛けて怒涛の展開になるわけですが、このような構成はあらかじめ想定していたのでしょうか?

奥田:最初の段階ではイメージしていませんでした。そもそもインタビューで全体をつなぐという構成すら決まっていませんでした。とにかくまずは話を聞くシーンがあった方がいいと思って、ただ撮り貯めていただけです。話を全部聞き終わった時、この事実が一番面白いから、このインタビューをつなぐだけでいけるなと何となく思いました。

なので、台本は一切ありません。この前、テレビ局の喫煙所で知り合いの作家さんに言われたのです。何人かのディレクターと『エレパレ』について話した時、単純に楽しんだ人もいれば、台本があっただろうと想像する人もいたと。『エレパレ』は、(最初のニューヨークのシーンを除いて)事実のみをつないだドキュメンタリーであることは言っておきたいです。

―― YouTubeの潮流で言うと、短時間の動画を定期的にアップするのが定石とされています。シリーズという形ではなく、2時間超えの動画を一気に出したのは、どういう意図があったのでしょうか?

奥田:そもそもYouTubeで映画のようなことをやるというボケだったんです。分割した方がいいかなという案もあったんですが、この方が面白いとなって。でも、これだけ時間を掛けて撮るものだから、予告とか特報みたいなことでもコントとしてたくさん動画を出せるとも思いました。

―― 『エレパレ』は公開以降、高い支持を集めて、再生数も右肩上がりです。2020年のベストコンテンツに挙げる方も見られましたね。

奥田:ありがたいです。狙ってやってたわけじゃなかったので、正直こんなに伸びるとは思ってませんでした。ネットのコメントを見ると、スクールカーストだとか、『桐島、部活やめるってよ』だとか言われてるじゃないですか。それを見て初めて、ああそういう風に受け取るのかと思いました。撮影していた時は、そんなこと考えてませんでした。ニューヨークも同じだったと思います。みんなに共感させたいとか全く考えてなかったので。

―― 『エレパレ』の今後の展開について教えてください。

奥田:評判が良かったので、中之島映画祭に出品することにしました。映画として色々な遊びが出来るなと思っていて、ノリノリでエントリーするという動画も撮れましたし、これで受賞できなかったら文句言う動画も出来ますし(笑)。あとは、ギャラクシー賞に出品できるらしいので、出したいですね。


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