文:滝水瞳
周りの幸せを考えて行動するのは理想的だが、苦しい状況の中では難しいこともあるだろう。しかし、生活に困窮する1人のホームレスの男性がとった行動は多くの人の胸に感動を呼び、思いやりの輪が広がっている。
ゴミ箱から見つかった財布
米国カリフォルニア州でホームレスとして暮らすショーン・カリーさん(57歳)は、地域のゴミ箱の中をあさることを日課にしていた。昨年12月10日、カリーさんはコーヒーショップ裏のゴミ箱を覗いていたところ、小さな花柄の財布を見つけた。持ち主はこのコーヒーショップから約10キロ離れた場所に住む、80歳の女性、イブリン・トッパーさん。落とした人は焦っているに違いないと思ったカリーさんは、すぐにトッパーさんに電話をかけることにした。
『NBC』によると、トッパーさんは前日、このコーヒーショップに立ち寄っており、代金を支払った後、自身のベストのポケットに財布を入れたところ、ジッパーを閉め忘れたため、道中に落としてしまったようだ。トッパーさんは帰宅した時、初めて財布を落としたことに気が付き、すぐにコーヒーショップに電話をかけたが見当たらず、くまなく隅々まで探したが発見できずにいた。
翌日、カリーさんはトッパーさんに電話をした。そして、財布を拾った経緯と、渡したいと伝えると、トッパーさんは驚愕。すぐに近くのショッピングセンターの駐車場に向かい、カリーさんと落ち合い、無事財布を受け取ることができた。そしてカリーさんに、お礼としていくばくかのお金を渡したという。
奇跡的な出来事に興奮したトッパーさんは、帰りの車の中で娘と孫娘に電話をかけ、この出来事を話した。すると、感激した孫娘のミカイラ・グナードさんは、自身の12歳の誕生日パーティーでカリーさんのためにお金を集めることにした。新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、パーティーはドライブスルー形式で行うことにした。
パーティー当日の12月22日、自宅前にテーブルを設置し、カリーさんの写真とともに寄付金を入れるカゴを用意。すると、行列が途切れる頃には寄付金は総額475ドルになった。そして翌日、ミカイラさんは母親とともに駐車場でカリーさんと落ち合い、集まったお金を届けた。
次ページ:クラウドファンディングを通じて広がる“ありがとう”の輪