第二次大戦後、眠っていた通称“ミリタリー”の木型で復刻した「タンカーブーツ」
医療用矯正靴やカスタムメイドシューズを手がけてきたオールデンには、革靴のシルエットや履き心地の決め手となるラスト(木型)のバリエーションが数多く揃っている。
その中でも、今回紹介するオールデンのタンカーブーツは、第二次大戦中の1939〜1945年に開発された「379Xラスト」という通称“ミリタリー”と呼ばれる木型を使用したスペシャルモデル。
「379Xラスト」は終戦後の一定期間は子ども向けとして生産されていたものの、1980年以降は倉庫に眠っていた。それをオールデンの日本総代理店であるラコタの強い希望により、数十年の時を経て日本向けに復刻したのが始まりである。
艶と風合いが段違い!さらに履き心地のいい「コードバン」を使用
ということで、タンカーブーツの魅力を探るべく、素材やディテールについても見ていきたい。
まずはコードバンならではの艶やかな光沢と革の風合いが目を引く。
コードバンとは、大型役馬の臀部の革を使用したもの。その革素材を昔ながらの純天然植物タンニンでなめし、着色と艶出しまでの仕上げはすべて手作業で行われる。
かつてアメリカのドイツ系移民がニューヨークの革工街にその伝統技術を持ち込んだのが始まりと言われているが、今日では、その継承者は極めて希少。そのため純粋なコードバンの皮なめし技工は幻の匠の技となり、生産も限られているという。
タンカーブーツに使われているコードバンは、厚みがありながらしなやかで、形状記憶にも優れているので、履く人の足の形によりよくフィット。長年愛用しながら磨かれるたびに、美しさが増していくのが特徴だ。
熟練した職人による手縫いのため、量産不可の稀少性
靴のディテールもまた、履き心地や堅牢性を大きく左右する部分。タンカーブーツの代名詞でもある“ノルウィージャンフロントモカシン”と呼ばれるモカ縫いは、熟練職人による手縫いが特徴である。
木型に入れた状態でライニングまで縫わないよう細心の注意を払いながら縫っているため、履いたときにステッチが足に当たらないようになっている。
熟練の職人でも1日10足程度しか仕上げることができないため、希少性はもちろん、ミシン縫いとは違った温かみを感じさせてくれるのだ。
また、サイドにヘヴィーステッチを施すことで、どのアングルから見てもアメリカのトラディショナルシューズらしい印象を残すあたりも、老舗ブランドの意匠が感じられる。
足の負担をやわらげる弾力性のあるクレープソール
こちらのタンカーブーツのソールは、多くのセレクトショップの別注品にも選ばれ、アクティブに動きやすいプランテーションクレープソールを採用。
天然ゴムを主原料とし、まるでスニーカーのような柔軟性とクッション性のある履き心地を実現し、足への負担をやわらげてくれるのも嬉しい。
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重量感がありながら軽快に履けるオールデンのタンカーブーツ。ブーツは靴以上にカジュアルなスタイルにフィットするので、ビジネスカジュアルでもプライベートでも活躍してくれる。しかも秋から春にかけて意外と長く履けるアイテムである。
ビジネスパーソンにとって、靴もまた大事な商売道具のひとつ。“オールデン沼”にどっぷりハマり、長く愛用しながら、手入れをして愛でるのもまた一興だ。
コードバン タンカーブーツ価格13万5000円/ラコタ