文:汐里
仕事や勉強、スポーツで困難な局面に遭遇した時、乗り越えるべく必死に立ち向かう人もいれば、逃げ道を探す人もいる。
そんな中、とあるダウン症の男性が、前代未聞の記録に挑み、話題となっている。困難な挑戦を通して彼が伝えたかったメッセージに、多くの人が心を打たれた。
ダウン症を持つ人として初の偉業を達成
アメリカ・フロリダ州に住むダウン症を持つクリス・ニキッチさん(21歳)にはとある夢があった。それは、ダウン症を抱えた人として初のアイアンマンレース制覇者になることだ。
アイアンマンレースとは、2.4マイル(3.862キロ)のスイム、112マイル(180.247キロ)のバイク、そしてフルマラソン(42.195キロ)を完走し、17時間以内にゴールしなければならない非常に過酷なレース。大会主催者によると、ダウン症の人がレースを制覇したことはおろか、レースに参加した人さえいないという。クリスさんは、まさに前代未聞のチャレンジをしようとしていたのだ。
クリスさんは、毎日少しずつ成長することを大事にしながら、1年以上練習に取り組んできた。練習をサポートしているのは、過去16回、アイアンマンレースを制覇したダン・グリーブさん。『Triathlete』によると、2人は、1日6時間の練習を週6日で続けたという。
レースに先駆けて行われた『TODAY』の取材に、クリスさんは、ダウン症の人として初めてアイアンマンレースを制し、「歴史を作るつもりだ」と自信に満ち溢れた様子。
一方のグリーブさんは、クリスさんのパフォーマンスに少なからず影響力を持っていることをプレッシャーに感じていると心の内を明かした。しかし、「この若者と彼の家族のために神が自分を選んでくれた」と、前向きに考えているという。
11月7日、ついに本番の日を迎えた。クリスさんは、並走するグリーブさんのサポートを受けながら競技に挑んだ。結果、クリスさんは16時間46分でゴール。宣言通り、ダウン症を持つ人として初の偉業を成し遂げたのだ。
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