文:佐郷顕
「自分の好きな人やチームを応援したい」という気持ちは、誰もが持ち合わせているもの。応援の仕方は人それぞれかもしれないが、その気持ちを笑う権利は誰にもない。
熱い心を持った少年が起こした奇跡が世界中で注目されている。
好きなチームを応援したくて作った自作のTシャツ
米国フロリダ州のアルタモンテ小学校では、好きなスポーツチームのチームカラーを身にまとって応援する「カレッジ・カラーズ・デイ」という催しが行われている。
この小学校に通う小学4年生の少年は、テネシー大学のアメリカンフットボールチーム「テネシー・ヴォランティアーズ・フットボール(通称Vols)」の大ファンで、チームカラーであるオレンジ色のグッズで参加しようと思っていた。
しかし、この少年はVolsの公式グッズを持っていなかった。しかし何とかして催しに参加したいと考えた少年は、担任のローラ・スナイダー先生に相談。すると、「応援の気持ちを伝えるためにも自分で作ってみたらどう?」とアドバイスを受けた。
少年はスナイダー先生の提案に従って、自らTシャツを作った。オレンジ色のTシャツにチームロゴの「UT」の文字を書いた紙を安全ピンで留めた。当日を迎えた彼は本当に嬉しそうにTシャツを見せてくれました」と振り返るスナイダー先生。「その誇らしげな姿がとても印象的で嬉しくなった」とも。
自作Tシャツをからかわれた少年に届いた贈り物
当日のランチタイム、少年は机に突っ伏して泣いていた。嬉し涙ではない。クラスメートの女の子たちから自作のTシャツを見てからかわれたのだ。
スナイダー先生は彼にもう一度元気を取り戻してもらいたく、一連の出来事をFacebookに投稿。Volsの公式Tシャツをもらえないか、サポートを呼びかけた。その投稿はVolsのファンの間で瞬く間に拡散され、たくさんの応援コメントが寄せられた。
間もなくしてテネシー大学から贈り物が届く。少年が箱を開けると、そこにはなんとVolsの公式グッズが全種類入っていたのだ。この出来事に少年やそれを見ていた子どもたちは衝撃を受け、中には泣いてしまう子もいた。
自作Tシャツが公式グッズに採用され予約注文5万枚
さらに、少年が作ったTシャツのデザインをVolsの公式Tシャツに採用し、販売するという連絡がスナイダー先生の元に届いたのだ。「フロリダの1人の少年の誇りをTシャツに身にまとって広めてほしい」とテネシー大学の公式ストアはTwitterでアピールした。
すると、少年のデザインしたTシャツは予約注文で5万枚を突破。一時はオンラインストアへのアクセスが困難な状況にさえなった。テネシー大学によると、販売の利益はすべていじめの防止に取り組む非営利団体へ寄付されるとのこと。また、テネシー大学は少年の熱意と行動を評して、2032年の名誉入学と4年間の奨学金の提供を約束した。
Tシャツが公式グッズになることを知った少年は、最初は口をあんぐり開けて驚いていたが、すぐに満面の笑みを浮かべて誇らしげな表情に変わったと、シドニー先生は言う。
例え不器用でも小さな熱意から現実は変えられる。1人の少年が起こした奇跡は、私たちに素晴らしい希望を見せてくれた。