文:米澤智子
アメリカでは16歳の誕生日を「スウィート・シックスティーン」と呼び、大人の階段を上る若者を祝福している。しかし、すべての16歳が盛大なパーティーが開いてもらえるわけではない。
16歳の誕生日を迎えた、苦しい生活を送っている少年に行われたサプライズが世界中の感動を呼んでいる。
苦しい生活を送る少年とバスケ部部員、コーチとの友情
アイダホ州アイダホフォールズにあるサンダーリッジ高校に通うディラン・ギルメット君は、1歳の時に母親を亡くし、父親の男手一つで育てられた。父親は現在失業中で、親子は小さなトレーラーで切り詰めた生活を余儀なくされていた。高校へも毎日同じ服装で高校に通っていたという。
高校のバスケ部のコーチであるリー・トッドソンさんは、そんなギルメット君を気にかけていた。2人は昨年、体育の授業で親しくなり、ギルメット君はバスケ部の練習に遊びに来るように。他のバスケ部員も自然とギルメット君に会話をするようになり、ランチを一緒に食べたり、家に呼ぶなど友情が芽生えていた。
そんな中、ギルメット君がもうすぐ16歳の誕生日を迎えることを知ったトッドソンさんは、サプライズが出来ないかと他のコーチに提案した。するとバスケ部員たちはためらうことなくお金を出し合い、ギルメット君のために新しい洋服や靴などを準備し始めた。ギルメット君とバスケ部員たちの友情は見せかけでなかったのだ。
しかしそんな矢先、とんでもないことが起きてしまう。アメフトファンであるギルメット君が肌身離さず持っていたアメフトグローブが、誰かによってトイレに投げ捨てられてしまったのだ。トッドソンさんは『NBC Sports Northwest』の取材に「本当に心が痛みました。何が起きたのか知りませんが、新しいグローブを手に入れなければならないことははっきりしていました」と当時を振り返る。
プレゼントのサプライズに歓喜
今年の2月27日、16歳の誕生日を迎えたギルメット君がいつものようにバスケ部の練習に顔を出すと、たくさんの仲間が待ち構えていた。そして、たくさんの洋服の入ったアディダスのリュックを、ギルメット君にサプライズでプレゼントした。驚きと嬉しさのあまり膝から崩れ落ちるギルメット君。リュックの中にはもちろん新しいアメフトグローブも用意されていた。
ギルメット君は「本気で気にかけてくれる友達に囲まれて、僕は本当にラッキーだよ」と嬉しそうに語った。