文:山本久留美
法律を変えるため、政府と根気強い交渉
インド西部の街・プネに住むアディティヤ・ティワリさんは2014年9月、ある孤児院を訪れた。その孤児院では一人の子どもを除いて、全員養子になることが決まっていた。残された最後の子どもとは、当時生後6カ月のアヴリッシュ君。ダウン症であるため、親に捨てられたという。
『THE EPOCH TIMES』によると、職員から「彼には身体障害があり、知能の発達も遅れている。彼の人生に価値はない」と伝えられたという。すると、アディティヤさんは「それなら彼を養子にください」と、アヴリッシュ君を引き取る決意を固めた。
しかし、インドでは独身の人が養子を引き取るのは30歳以上と法律で定められており、当時27歳だったアディティヤさんがアヴリッシュ君を養子にすることが出来なかった。さらに、世間からは「男性が子どもの世話を出来るわけがない」と社会的偏見があり、実の親でさえも反対したとのこと。
ところがアディティヤさんは決して諦めなかった。この事情を考慮してもらうため、首相をはじめとした国の指導者たちに手紙を書き、その想いを訴えたのだ。ディティヤさんと政府とのやりとりは18カ月にも及んだ。
そしてついにインド政府はアディティヤさんの主張を認め、法律を改正。独身の親による養子縁組の年齢制限を25歳にまで下げたのだ。2016年1月1日、アディティヤさんは正式にアヴリッシュ君を養子として迎えた。