文:山田山太
道端で昔の友人とばったり遭遇したり、仕事仲間が友達の友達だった。そんな、なんてことのない「偶然」なら誰しもが経験したことあるはず。
しかし、とある家族に起こった偶然と呼ぶにはあまりにも美しい出来事が今、SNS上で感動を呼んでいる。
同じ病院で生後間もなくを過ごした親子
今年1月、米国ニュージャージー州に住むレナタ・フレイディンさんは、婚約者であるデイビッド・コールドウェルさんとの間に男の子を授かった。ザイン君と名付けられたその子は、予定よりも10週間早く生まれてしまったため、十分に成長するまでの間、サン・ピエトロ大学病院のNICU(新生児集中治療室)でサポートを受けていた。
遡ること33年前。デイビッドさんもザイン君と同じように、予定より数週間早く生まれ、NICUに入った経験があった。そしてデイビッドさんが過ごした病院は、ザイン君と同じサン・ピエトロ大学病院。2人は同じ病院のNICUで生後数週間を過ごしていたのだ。
見覚えのある看護師
ザイン君が病院にいる間、自宅で過ごすレナタさんとデイビッドさんは、たまたまデイビッドさんが赤ちゃんの頃の写真を見ていた。その中で、看護師の女性に抱かれた、幼い頃のデイビッドさんが写る1枚の写真をレナタさんは見つけ、あることに気がついた。
なんとその看護師の女性は、ついこの前までザイン君を担当してくれていたリサ・マッゴーワンさんの33年前の姿だとレナタさんは確信したのだ。デイビッドさんも最初は信じていなかったが、写真を病院に持って行き、何人かの看護師に確認を取ったところ、マッゴーワンさんで間違いないことがわかった。33年前に生まれたばかりの夫の担当の看護師が、時を超え息子のサポートをしてくれていたというわけだ。
Facebook上で2万9000件ものシェア
デイビッドさんは子どもの頃にこの写真のことを母親に尋ねたのを覚えていた。デイビッドさんの母親が「彼女はとても素敵でした。いつも私たちを安心させてくれて、ほんとうに素晴らしい看護師でした」といたく気に入り、デイビッドさんが退院する間際、一緒に写真を撮ってもらったと聞いたと『Good Morning America』の取材に対して語った。
レナタさんは2月16日、自身のFacebookに「今までの2週間、本当に不安でいっぱいでしたが、すっかり気持ちが楽になりました。だって私の息子を看てくれている看護師は、私が愛する人の命を救った人ですから」と綴り、この写真とともに投稿した。すると、2万9000件以上も「シェア」を獲得し、ザイン君と家族への祝福や長年NICUに従事するマッゴーワンさんへの称賛のコメントが多数寄せられた。
長年に渡って新生児医療の現場を支えてきたマッゴーワンさんのような人々によって、命がつながれてきたからこそ起こった偶然であることを、今一度噛み締めたい。