文:藤枝あおい
自ら望んで保護施設に行く猫はいないだろう。
ひたすら自由になることを求めた保護施設のある猫が、SNS上で大きな話題を呼んでいる。
扉を開けることが得意な猫
米国テキサス州のヒューストンの保護施設「Friends For Life Animal Rescue and Adoption」のスタッフはある朝、すべての猫が部屋の外に逃げているのを目撃した。しかも一度だけではなく何度も同じことが起きた。スタッフは原因を掴むため、部屋にカメラを設置することにした。すると、そこには猫のキルティがドアノブに飛び上がって扉を開けている映像が収められていた。
イタズラが大好きな猫のキルティには、どうすれば扉が開けられるのか、お見通しだったようだ。
スタッフはキルティによるイタズラを防ぐため、ドアノブを紐でつなぐなどして対策を試みた。しかしいつもキルティに見破られてしまい、部屋の扉は開けられてしまった。
そこで、スタッフは仕方なくキルティを独房に移すにした。数日間、他の猫とは別の場所で孤立していたキルティ。その後ようやく元の部屋に戻ることになったが、部屋にはチャイルドロックが施され、扉が開けないように厳重な対策が取られた。しかしキルティは、またも扉を開けてしまうのであった。
SNSで注目を集め、里親希望者に巡り合う
部屋に閉じこもることを頑なに嫌がり、外に出ようとするのは、キルティの過去に理由があった。『USA TODAY』による保護施設のスタッフへの取材によると、キルティは元の飼い主が引っ越しの際に世話を続けることができなくなったため、保護施設に入ることになったという経緯があるという。その際、キルティは兄弟たちと数日間、狭いクローゼットの中に閉じ込められていたようだ。スタッフはその時の経験が影響しているのではないかと考えているという。
保護施設は一連のキルティの出来事をFacebookに投稿。すると1万9000件のシェアを記録し、キルティは一躍SNS上のスターとなった。そして、キルティの自由を叶えるため「#FreeQuilty」のハッシュタグで資金調達がスタートした。
SNSでの多くの広がりを受けて、全米のメディアもキルティについて報道するようになり、さらにはキルティの里親希望者も現れたという。保護施設のサイトによると、試験的な外泊が行われており、そこでキルティは人を毛嫌いせず、ソファで一緒に寝そべったりしてくつろいでいるようだ。
外に出て自由になりたいと願うキルティの執念に多くの人が心を動かされたようだ。保護施設を出てキルティが自由を得る日もそう遠くないはずである。