EVENT | 2019/11/06

公取委のクッキー利用を規制する動きに警戒を強める日本企業。ウェブブラウザを提供するGoogle、Appleはプライバシー重視に

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伊藤僑
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伊藤僑

Free-lance Writer / Editor 

IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。著書に「ビジネスマンの今さら聞けないネットセキュリティ〜パソコンで失敗しないための39の鉄則〜」(ダイヤモンド社)などがある。

公正取引委員会がクッキーを規制する方向に

10月30日、公正取引委員会の山田事務総長は、ウェブ上の閲覧履歴を記録する「クッキー(Cookie)」による情報収集を、利用目的の明示や本人の同意を得ることなく行った場合、独占禁止法に違反する恐れがあることを指摘し、同手法を規制する方向で検討に入ったことを明らかにした。

これには、個人情報を独占するGAFAなどの巨大プラットフォーマーを牽制する狙いがあるとみられる。だが、収集した情報をビックデータとして事業に活用してるのはGAFAに限ったことではなく、既に広く行われていることもあって多くの日本企業からも反発が広がっているようだ。

氏名など個人を特定する情報を(単独では)記録しないクッキーは、これまで個人情報保護法の対象にもなっていなかった。それだけに、なぜ、いまクッキーがやり玉に上げられるのかと疑問を感じる人もいることだろう。

その背景のひとつと考えられるのが、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就活生のサイト閲覧履歴等を基に内定辞退の指標を顧客企業に提供していた問題だ。同社は、本来は個人を特定できないはずのクッキーを、学生が登録した「リクナビID」にヒモつけることで、個人の行動の分析に活用していたとされる。

大切なのはプライバシー保護と利便性のバランス

プライバシー意識の高まりからか、「まるでネット上の行動を監視されているようだ」とクッキーに嫌悪感を持つ人が増えているように感じられる。だが、その利便性も忘れてはならない。

FacebookやTwitter、LINEなどのSNSや、Amazonや楽天のようなショッピングサイトを快適に利用できるのは、クッキーがあればこそ。一度ログインしたサイトに、ID、パスワードを再入力することなくスムーズに入れるのはクッキーのおかげなのだ。

クッキーなど必要ないと思うなら、ウェブブラウザの設定でクッキーをすべて無効にしてみるといいだろう。その面倒くささにうんざりして音を上げる人が多いに違いない。

大切なのは、プライバシー保護と利便性のバランスをとることだ。

GoogleやAppleもクッキー対策に動き出す

実は、クッキーの乱用に歯止めをかけようとする動きは、個人情報の独占を問題視されているGAFAの一角であるGoogleやAppleからも始まっている。

Googleでは、ウェブブラウザChromeの開発チームが、ウェブサイトがどのようにクッキーを使用しているのかを示すことで透明性を高め、ユーザーがより簡単にクッキーをコントロールできるようにすると開発者向け会議Google I/O 2019で発表。

「SameSite Cookie」という仕様を採用することで、ウェブアプリケーションの脆弱性を悪用するクロスサイトスクリプティング(Cross Site Scripting)などの攻撃により、クッキーが収集した個人情報が漏洩する可能性を低減することを目指している。

ユーザーのプライバシーを重視することで知られるAppleも、当然ながらこの分野に注力。サードパーティーがクッキーを使ってユーザーを追跡できないようにする機能「Intelligent Tracking Prevention(ITP)」を強化し、バージョン2.0に上げることをWWDC(World Wide Developers Conference)2018で発表している。

ITPが検出する「トラッキングクッキー(Tracking Cookie)」とは、ユーザーの嗜好に合わせた広告を表示するために、ユーザーがどのようなコンテンツにアクセスしたかという閲覧履歴をチェックする役割を果たすもの。

バージョン2.0では、トラッキングクッキーを発見するとユーザーに確認ダイアログを表示し、アクセスを許可するかどうかを選択できるようにしている。

ウェブブラウザで大きなシェアを有す両社が動き出すことで、企業活動におけるクッキーの活用がユーザーのプライバシーを重視する方向へ向かうことを期待したいものだ。