アパレルやマスコミ業界など、流行に敏感なクライアントをもてなす際には、店の場所や料理以外にも、空間の完成度にも気を配りたいもの。そんな感度の高いクライアントも満足させられる、アート作品に囲まれながら美しい料理を味わえるレストランが、今回ご紹介する南青山の「ristorante misola(リストランテ ミソラ)」だ。
トップ画像デザイン:大嶋二郎
チェリー先生
食べ歩き部・部長
東京生まれ東京育ち。10代では外食好きな家族と、20代では目上の方々にあまたの東京レストランガイドをしていただき、30代以降は自分で開拓するのが楽しくなり、あらゆるスタイルの「外食」を楽しんできたグルメ女。プロならではのこだわりが見える瞬間、女王様気分を味わえる接客、味というよりも人に惹かれる瞬間などに魅力を見出し、レストランの楽しみ方を広げている。
アート好きもワイン好きも楽しませてくれる一軒家レストラン
華やかなハイブランドショップが軒を連ねる国道246号線から路地を1本入ると、ほどなく瀟洒な一軒屋が現れる。1階は系列店のイタリアン・ワインショップ「SASALA」。23時まで営業しているので、気に入ったワインがあれば食事帰りに購入することもできるし、生ハムやチーズをワインとともに楽しみながらウェイティングバーとしても使えるのだ。
2階へと階段を上るとメインダイニングが現れる。3階の個室へと広がる吹き抜けはお店のキーカラーである落ち着いたグレイッシュパープルに塗られ、彫刻家・大森暁生のカササギが飛翔している作品がリズミカルに配置されている。
こんなアート作品ありきの空間を作った審美眼の高いオーナーが選んだシェフもまた、アーティスティックな料理を生み出す名手だ。
ディナーコースは8000円からで、内容は月変わりでも週変わりでもなく、その日によって変わるスタイル。シーズン毎に基本の構成はあるが、季節感を大切にするシェフはその日の食材によってイメージを膨らませていく。
ペアリングのワインは3杯で3,500円前後。イタリア全土から集められたワインの中からベストマリアージュをセレクトしてもらえるのは、ワインショップ併設のリストランテならではだろう。
この日の2つめの前菜は、程よく脂が乗ったジューシーなウサギ。アクセントに散らしたクルミは軽く砂糖がけしてあり、ウサギの深みのある脂に実によく合う。前菜から早速ワインが進んでしまうが、力強い味付けというより、むしろ素材に寄り添ったアプローチを感じるお皿が多い。
パスタはタリアテッレ。シェフのスペシャリテとも言えるこちらは、松の実のコクとともにネーブルオレンジや柑橘が優しく薫る、まとまりのある一皿。
美しいデザートに思わず声をあげるゲストも。メレンゲやソルベ、フレッシュフルーツなど、さまざまな食感が楽しめ、美しいだけではなく、シェフの構成力の高さもうかがえる。
3階の個室の壁面にも、鷲とツバメをモチーフにした大森暁生の作品が飾られている。洗練されたインテリアではあるが、邸宅のダイニングに招かれたような落ち着いた雰囲気で、肩ひじ張らずに食事を楽しめる空間となっている。
ワイン好きにもアート好きにも喜んでもらえる上、美味しく美しい作品のような料理を味わえる同店。次の接待では、空間にもこだわったこんなレストランをセレクトしてみるのも面白いのではないだろうか。
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ristorante misola(リストランテ ミソラ)