文:岩見旦
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3次元の設計図を元に、樹脂などの層を細かく積み重ね立体物を作り出す3Dプリンタ。矢野経済研究所の調査によると、2017年の世界の3Dプリンタのメーカー出荷台数は、前年比18.4%増の27万台と大きく成長している。3Dプリンタは、着実に私たちの生活に身近な存在になっている。
3Dプリンタで製作したアメーバのようなギプスが画期的!
そんな中、3Dプリンタで制作したあるものがネット上で注目を集めている。
アメリカのソーシャルニュースサイトRedditで、1月19日に公開されたのは3Dプリンタで製作したギプス。「私のお母さんの3Dプリンタ製ギプス。これでシャワーが浴びられる!」というコメントとともに掲載されたこのギプスは、まるで青いアメーバが足に張り付いているかのような斬新なデザイン。その見た目のインパクトから、多くの反響が寄せられた。
さらに翌日、日本のTwitterユーザーがこの3Dギプスの画像を紹介すると、瞬く間に2万を超えるリツイートを獲得。「これは画期的」「ジョジョ感がすごい」「友達の寄せ書きできない」などコメントが殺到した。
この3Dプリンタのギプスを開発したのは、米コロラド州に拠点を置くActivArmor。耐水性があり衛生面で優れた革新的なギプスで、患者それぞれの手足の形状に合わせて製作できる。石膏製が一般的だったギプスが、3Dプリンタの力で進化したのだ。
このギプスような3Dプリンタによる技術革新が近年、世界中で同時多発的に起きている。
3Dプリンタ製の電気自動車を、イタリアと中国の企業が量産!
近年、最も大きな衝撃を与えたのは3Dプリンタ製の電気自動車だろう。
イタリアの電気自動車メーカー「X Electrical Vehicle(XEV)」は、中国のPolymakerと提携し、3Dプリンタ製の量産型電気自動車「LSEV」を開発した。
「LSEV」のパーツは、シャーシやシート、ガラスなど一部を除き3Dプリンタで製作。一般的な自動車は2,000点もの部品が必要だが、LSEVは3Dプリンタの技術により57点までその数を減らすことに成功した。重量も450kgと極めて軽い。
また、通常3〜5年かかる新車の開発期間を、3〜12カ月に短縮。投資コストを70%以上軽減した。昨年発表のリリースでは既に7,000台の注文が入っているという。
世界的な不足に光明!3Dプリンタによる人の角膜の生成に成功
3Dプリンタは医療の分野でも、そのポテンシャルを発揮している。イギリスのニューカッスル大学の研究チームが、3Dプリンタで人の角膜を製作することに成功したと発表した。
トラコーマなど目の疾患で、世界中で約1,000万人もの人が角膜移植を待っている。しかし、移植できる角膜の数は限りがあり、慢性的に不足している。
同大学のチェ・コノン氏ら研究チームは、この問題に立ち向かうべく、角膜を人工的に作り出すための3Dプリントが可能な「バイオバンク」を開発した。
これは健康な人の角膜の幹細胞とアルギン酸、コラーゲンを混ぜ合わせた溶液で、3Dプリンタにスキャンした患者の眼球データを入力することで、患者一人ひとりに合わせた角膜を10分ほどで生成することができる。これからテストを繰り返し、数年後には実際に移植できようになるという。
3Dプリンタが驚異的なスピードで進化している。この技術革新が近い将来、私たちの生活を一変させるのは間違いないだろう。
My moms 3D printed cast. She can take a shower with it! : pics
LSEV – World’s First Mass Produced 3D Printed Car – Polymaker
First 3D printing of corneas - Press Office - Newcastle University