筆者とジェームズ・コリンズ氏の出会いは、共通の友人に誘われて長野県での花火大会に一緒に行ったことである。彼はヘッドフォンを身につけ、スケボーに乗って現れた。その時、私たちは片言の日本語と英語で音楽の話をした。
それから5年が経ち、Facebookの投稿で彼がメンバー全員外国人のアイドルグループ「COLORFUUUL(カラフ〜ル)」のプロデュースをしていることを知った。メンバーには『Youは何しに日本へ』で「ハンコ王子」として一躍有名になったロマさんも在籍している。
男女問わずアイドルグループが乱立する中で、サバイブしている原動力は何なのか。日本の芸能界というルールがすでに出来上がった業界で、「他の人が無謀だと言うことこそ自分がやる意味がある」と話す攻めの姿勢が気になり、話を聞きに行った。
聞き手・文:立石愛香 写真:神保勇揮
ジェームズ・コリンズ
日本の文化と言語を学ぶために2012年に初来日。ジェームズ・マディソン大学にて社会学の学位を取得し、首席で卒業。2013年に日本に移住し、わずか2年あまりで日本語能力試験の最高レベルに合格。現在は早稲田大学大学院ジャーナリズムコースに在籍。そのユニークな創造性と問題解決能力を通して、社会に貢献できるプロジェクトを生み出すことを目標としている。
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日本の音楽は来日してから聴き始めた
ーー 今のジェームズさんの活動を知ってとても驚きました。5年前に長野県でお会いした時から、どんな経緯があったのでしょうか?
ジェームズ:ちょうどお会いしたのは農業ボランティアやバックパッカーの宿で住み込みで働いていた時期ですね。その後一度アメリカに戻り大学を卒業しました。
ーー 専攻は何でしたか?
ジェームズ:社会学でした。卒業後再び来日し、英会話の先生を半年してから拓殖大学に通い、その後首都大学東京で宮台真司先生のゼミに入りました。そのまま大学院でも社会学を学ぶつもりだったんですが、先輩に向いていないと言われて。その頃、編集者の菅付雅信さんの事務所でアシスタントのバイトを始めたのですが、そこで働いていた方に早稲田大学のジャーナリズム専攻を勧められて今に至ります。
全員外国人というアイドルグループの社会学的な側面にも興味があった
現メンバーはロマ(フランス)とジェイ(韓国)の2名。プロフィール
ーー 学生をしながらプロデューサーの仕事もしているんですね。なぜ日本でアイドルグループを立ち上げたのですか?
ジェームズ:元々音楽が好きで、5年前からアイドルグループの構想を練っていたんですが、ある日AKB48を見て、単純に全員外国人のアイドルグループがあったら面白いなと思いました。その気持ちがだんだん大きくなり、思い切ってこの世界に飛び込みました。
それで今のグループの前身である『Guyjin48(ガイジン48)』というグループを作りました。社会学を勉強しているので、このグループが日本社会でどう受け入れられるのか、そういった意味でも興味がありました。
今年4月にリリースした1st Ep『Let’s Be Colorfuuul』
ーー COLORFUUULのプロデューサーとしての仕事はどんなことをしているのですか?
ジェームズ:プロデューサーと言うと音楽面も担当するというイメージもあると思いますが、僕は音楽は作っていないんですよ。講師仲間で、のど自慢優勝経験を持つマイクロ・ボデインさんの紹介で元SOUL'd OUTの SHINNOSUKEさんに曲を書いてもらいました。
ーー 自分が外国人だという理由で、日本で仕事をする上で難しい、やりづらいと感じたことはありますか?
ジェームズ:最近、大手広告代理店の方と会議をしたんですが、思った以上に本当に難しいと感じました。「外国人だけで売れると思わない方がいい」とか、そういったことも言われたりしましたね。
ーー 日本の芸能界は厳しい世界なんですね。
ジェームズ:はい、本当に厳しいと思います。Guyjin48を発表した時から反響が良くて、たくさんの取材を受けてきたんだけど、まだブレイクには至っていない。外国人グループならではの難しさは分かっているんだけど、日本の音楽業界での成功の糸口はまだ分からないですね。
「日本に住む外国人」の困難を知ってほしい
ジェームズ:あ、そう言えば、数日前にほかの全員外国人グループが発表されたんですよ。
ーー グループの名前は?
ジェームズ:ASE BOUND(アセバウンド)です。TWIN PLANETというタレントエージェンシーがつくっていて、僕たちとコンセプトが似ている。ライバルになるんですが、そもそもこういうグループがあまりないから、盛り上がるという意味では良いことだと思います。
ーー COLORFUUULの売り出し方や曲の系統はJ-POP寄りで、このジャンルではジャニーズとEXILE系列がほとんど二強状態です。いわゆる洋楽的アプローチをとらずに、競争の激しいこの市場を狙ったのはなぜですか?
ジェームズ:このグループを考えた時にはわからなかったんですよね。EXP EDITIONを知っていますか? 韓国でデビューした全メンバーが外国人のKポップグループです。
ーー 韓国で活動する韓国人以外のグループ? アメリカ人とかですか?
ジェームズ:そうです。COLORFUUULを発表した時に、このグループのJ-POPバージョンと言われたんだけど、K-POP的つまりアメリカ的なサウンドを選ばなかったのは「日本には日本の問題がいっぱいあるということに対して、何らかのかたちで貢献したい」という気持ちがあって、より多くの日本人の間で根付いているJ-POPにしたんです。
メンバーの国がバラバラで、共通点は日本で生活して日本で歌っているということだけですから、USとかKポップはコンセプトにまったく合っていないし、J-POPが一番だと思うんです。EXILE系でもないんですよ。
最近、ほかの日本人女性アイドルのプロデューサーと会ったんです。彼が最初に言ってくれたのは「本当に尊敬するよ」と。誰もこういうことにタッチしないのは、ビザをはじめとする外国人ならではの問題があり過ぎで、大変なのはみんな分かっていることだからと(笑)。でも難しいからこそやった方がいいでしょう。誰もやっていないし。
アイドルプロデューサー、翻訳者、ジャーナリズム専攻の学生の3本柱
ーー ジェームズさんが学校に通っているのはビザのためでもありますか?
ジェームズ:そうですね。そうしないと日本にいられない。もちろんジャーナリズムにも興味はありましたよ。このグループをつくっている上で基礎的なジャーナリズムの知識は本当に役に立つんです。あと、将来は本を書きたいなとも思っているので、そのためにもジャーナリズムは勉強しておきたいです。
ーー 翻訳者の仕事、ジャーナリズムの勉強、プロデューサーの仕事、三本柱でこれからもやっていく予定ですか?
ジェームズ:そうですね。全部つながっていると思います。将来は枠にとらわれずにいろんなことをやりたいと思っている。多分野のトップと関わりたい気持ちがありますから、まだがんばらなきゃ。
まだまだ模索中の日々
ーー 現在、一番問題と感じているのはどういったことですか?
ジェームズ:資金不足ですね。全部自腹でやっているので。
ーー 今働いているのは編集アシスタントの仕事だけですか?
ジェームズ:はい。だから、今は金銭的な支援で出してくれる事務所を探しています。
僕のグループは、みんなビザの問題があるし一生懸命働いている中で、時間をつくってこのグループをやっているんです。お金があったら仕事を辞めてこれを中心にしたいんですけどね。他のグループとは明らかに違うんです。
ーー 日本に居づらい外国人と日本をつなぐ架け橋になりたいと。それこそ、メンバーそれぞれの生活やバイトがあるなら、ドキュメンタリーとか作ってみるのもいいかもしれませんね。YouTubeにライブの映像や新曲をアップする中で、ドキュメンタリーを少し入れてみる、そんなプローモーション戦略も面白いかも知れません。
ジェームズ:まずはベースをつくってと思ったんですけど、昨日アメリカ人のメンバーに抜けますと言われたから、もう一回がんばらなきゃ。本当に3回、4回ぐらい、こういうことがあったんですよ。良い方に進んでいると思っていたら急に大変なことになる(笑)。(現在は2名で活動している)
10月中旬に川崎にて行われたフェスティバルの様子
ーー でも、今売れているアイドルグループやバンドも、何回も解散したりメンバーが替わったりしていて、ベースをつくるというより面白いことをたくさんやって、それで人気が出てきてっていう、多分そっちのほうが先なんだろうなという気もしたりしますね。
ジェームズ:周りには、「ジェームズがメンバーに加入するしかないね」と言われるんですがそれは避けたいですね(笑)。
ということで、COLORFUUULはメンバー募集中です!