Adobe MAX 2018(Image by Adobe)
Adobeが主催するクリエイティブ・カンファレンス「Adobe MAX 2018」が、10月15日から17日の3日間、米国ロサンゼルスで開催された。世界61カ国から過去最大規模となる14,000人を超える参加者が集まった今年のテーマは、「The Creativity Platform For All」。Adobeの製品群が、学生からプロフェッショナルまで、すべてのクリエイターに向けたプラットフォームになることを宣言している。ここでは、多くのサプライズもあった基調講演の内容を紹介していこう。
伊藤僑
Free-lance Writer / Editor
IT、ビジネス、ライフスタイル、ガジェット関連を中心に執筆。現代用語辞典imidasでは2000年版より情報セキュリティを担当する。SE/30からのMacユーザー。
XD CCを核に、主要アプリがメジャーアップデート
Adobe MAX 2018の基調講演は、AdobeのCEOであるShantanu Narayen氏による、イベント全体のテーマ「The Creativity Platform For All」を紹介するスピーチで幕を開けた。
Adobe MAX 2018基調講演
続いて登場したCPOのScott Belsky氏らによって紹介されたのは、Photoshop CCやLoghtroom CC、Premiere Pro CC、InDesign CC、Illustrator CCなど主要アプリのメジャーアップデートや、Adobe Fonts、Adobe Stockの拡充について。中でも最重要アプリとして位置づけられていたのがXD CCだった。
XD CCは、高速かつ直観的な操作を可能にするUI/UX制作ツールで、ウエブサイトやモバイルアプリだけでなく、最近話題の音声テクノロジーによるプロトタイプにも対応。スマートフォンはもちろん、クルマのダッシュボードや時計、スマートスピーカーから拡張現実に至るまで、すべてを横断するクリエイティブ・プラットフォームとして機能するという。
モバイル端末やウエブブラウザ、音声入力など、多くのアプリにおいて利用形態の多様化が進む中で、これらの体験を一括でデザインすることができるプラットフォームの重要性は、今後ますます高まっていくことが予想されている。
顧客との接点であるUI/UXをデザインするXD CCは、現時点におけるCreative Cloud製品群のコアであるだけでなく、未来のクリエイティブ製品群においても核になるものといえるだろう。
オールインワンビデオ編集アプリPremiere Rush CCを発表
今回のAdobe MAXで最も注目を集めたアプリの1つが、動画クリエイター向けの新製品Premiere Rush CCだ。
オールインワンビデオ編集アプリPremiere Rush CC(Image by Adobe)
Premiere Rush CCは、ビデオ撮影から編集、カラー調整、オーディオ調整、モーショングラフィックス活用まで、ビデオ制作に必要な機能をすべて統合。さらに、YouTubeやFacebook、Instagramなど主要ソーシャルプラットフォームへシームレスに投稿する機能まで備えている。
専門的な知識がなくても高いレベルのビデオ作品を制作できるPremiere Rush CCには、Windows版、Mac OS版に加えて、モバイル環境でも利用しやすいiOS版、Android版(2019年提供予定)も用意されている。
iPhone等のスマホで動画素材を撮影したら、すぐにパソコンやタブレットで編集し、速やかにSNSへシェアすることも可能だ。
また、プロがデザインしたモーショングラフィックス・テンプレートを多数用意してるため、見栄えのいいワンランク上の動画を誰もが容易に制作することができる。
これからSNS動画の作成〜投稿に挑戦してみたいという初心者には、まさにピッタリのアプリといえるだろう。
2019年にはPhotoshopなどiPad版アプリが複数登場
今回の基調講演で最も驚かされたのは、Appleのワールドワイドマーケティング担当上級副社長のPhil Schiller氏がスペシャルゲストとして登場したことだ。
Adobe MAX 2018基調講演に登場したAppleのPhil Schiller氏(Image by Adobe)
そして紹介されたのは、約4年間にわたってAdobeとAppleが協調して行ってきた取り組みがいよいよ結実し、2019年には、簡略版ではなくiPadに最適化して移植されたPhotoshopをはじめとする複数のiPad版アプリの登場が予定されていることだった。
2019年登場予定のiPadに特化したPhotoshop(Image by Adobe)
講演では、実際にPhotoshopがiPad Pro上で動作する様子が紹介されている。
UIはiPad用に指やペンで操作できるように見直されており、ピンチイン、ピンチアウトによる操作も驚くほど軽快に行うことができる。ネイティブなPSDファイルをiPadで扱うことができ、レイヤー情報も維持されるため、MacやWindowsとファイルをやり取りしながら作業を進めることも容易になる。
続いて紹介されたのは、次世代のイラストアプリであるProject Gemini(ジェムナイ)だった。
次世代のイラストアプリProject Gemini(Image by Adobe)
Project Geminiは、Photoshopのパワフルなブラシエンジンをベースに開発されたドローとペイントに特化したアプリで、Photoshopのブラシに加え、精密でスケーラブルなベクターブラシ、ライブ感にあふれる油絵と水彩画のブラシを搭載している。しかも、扱うのはPhotoshopと共通のPSDファイルとなっている。
6月に発表済みのAR(拡張現実)オーサリングツールProject Aeroの紹介も行われた。
2019年にはAdobeから、これらの魅力的なiPad版アプリが続々と登場する予定だ。