日本の「kawaii文化」を牽引するサンリオ。サンリオキャラの代表格と言えば、マライア・キャリーやレディー・ガガなど、ハリウッドスターたちにも愛されるハローキティであることに疑問の余地はない。
しかし、最近急激に海外で人気となっているサンリオキャラクターがいるのをご存じだろうか。2018年4月にNetflixで全世界に向けてオリジナルアニメの配信が始まった「アグレッシブ烈子(海外では「Aggretsuko」)」である。
文:6PAC
国内ではマイナーだが、海外女子からの支持率は高い
「アグレッシブ烈子」は25歳、OL、さそり座、A型、独身、メスのレッサーパンダという設定。烈子は、理不尽が往々にしてまかり通る会社という場所で、日々ストレスと向き合っている。上司や同僚が原因のストレスがマックスになると、取り憑かれたようにカラオケでデスメタルを歌って憂さ晴らしするというキャラクターだ。
先日、サンリオは「第33回 2018年サンリオキャラクター大賞」の結果を発表したが、総合順位での「アグレッシブ烈子」の順位は20位。一方、海外の国別の順位ではブラジルとイギリスで1位、イタリア・ドイツ・フランス・アラブ首長国連邦の4カ国で2位となっており、国内でのマイナー感とは真逆の存在感を示している。
この人気ぶりもあってかNetflixは「アグレッシブ烈子」シーズン2の制作を決定。2018年7月5日~8日までロサンゼルスで開催されたアニメエキスポで、シーズン2が19年に放送予定であることを発表した。「アグレッシブ烈子」の英語版公式Twitterでもシーズン2を告知したところ、海外の烈子ファンたちからの喜びの声が殺到した。
アニメの人気のバロメーターの一つはコスプレイヤーがどれだけいるかで推測することも可能では?と思い、Instagramで「#aggretsukocosplay」というハッシュタグで調べてみた。すると、8月1日時点で896件の投稿があった。どれもなかなかのクォリティで、列子の制服を自作したと思われる猛者も多い。
「烈子の職場環境には女性なら誰でも共感できる」
今回、実際に「アグレッシブ烈子」の英語版公式Twitterなどにコメントしている、烈子ファンの30代アメリカ人女性(カリフォルニア在住)に話を聞いてみた。
女性の友達同士の間で「アグレッシブ烈子」は本当に人気があるのか訊ねると、「私や周りの友達の間では烈子は人気よ。自分のTwitterのタイムラインを見ても、友達が投稿した烈子のファンアートを結構頻繁に見かけるし。烈子は人生の一部を切り取った感じのアニメよね。共感できるわ」とのこと。
なんでそんなに「アグレッシブ烈子」が気に入っているのかという問いには、「よくある非現実的なファンタジーアニメじゃないからいいのよね。ものすごく現実的でしょ。私は小売業の仕事をしているんだけど、烈子に共感する部分が多いから彼女の気持ちがよく理解できるのよ。うん、烈子に共感するからこのアニメを観ちゃうんでしょうね」という回答。確かに日本のアニメやゲームには非現実的な世界観のものが多く、それが海外でウケない理由の一つと聞いたことがあるが、まさにそれを裏付けるような回答だ。「日本のOLの日常」を描写したアニメだが、リアル感満載というところは日本人女性だけでなく、海外の女性にとってもツボのようだ。
英語版公式Twitterによるシーズン2告知には、多くのファンからのリプライが寄せられている。
彼女は、「烈子の職場環境には女性なら誰でも共感できるのよね。誰にでも上司はいるし、時には逆らいたくなるけど、それしちゃうと職場が生き地獄のようになっちゃうし。烈子みたいな立場の女性が多いから、みんな共感しちゃうんだと思う。さっき小売業の仕事をしているって言ったけど、私だって良い一日もあれば、悪いことだらけの一日もある。良い日でも悪い日でも、どちらであっても向き合わないといけない。向き合うことができないなら、烈子のカラオケみたいに誰も知らないところでストレス発散するか、転職するか、いい人を見つけて結婚して退職するかでしょ。でも列子はストレス発散しながらもなんとか働き続けている。それがこのアニメを女性が親しみやすいものにしてるんじゃないかしら。希望を持たせてくれるし、同時にしっかりと現実に向き合うことを教えてくれるのよ」とも語ってくれた。
サンプル数は少ないものの、こうして実際に海外ファンの生の声を聞いてみると、「アグレッシブ烈子」は世界中の働く女性たちの代弁者なんだと気付かされる。取材に対応してくれたこの30代アメリカ人女性も、日本語で言う“共感”を意味する“relate to”や“relatable”という単語を多用していたが、海外における「アグレッシブ烈子」の人気はこの一言に集約されているのだろう。言い換えれば、日本の特異性の一つでもある「kawaii文化」としてウケたわけではなく、世界共通の「女性が感じる職場の理不尽さ」に共感できる点がウケたと言えるのではないか。
サンリオは2013年度以降、4期連続の減収・現役となる業績不振が伝えられているが、復活の切り札の一つとして「アグレッシブ烈子」に対する期待は大きいようだ。アニメやマーチャンダイズだけでなく、烈子のアプリゲームなどの横展開もありそうだ。果たしてサンリオは世界中の働く女性を味方につけることができるのか、引き続き注目していきたい。