写真左から坪田信貴氏、内藤賢司氏、堀江貴文氏、佐渡島庸平氏
文・写真:立石愛香
ホリエモンこと堀江貴文氏が主宰する、座学を目的とせず行動を目的とする新しい高校「ゼロ高等学院(ゼロ高)」が今年10月に開校する。そのメディア記者会見が、7月26日都内にて行われた。
ゼロ高の一番の特色は、約1500人を有するHIU(堀江貴文イノベーション大学校)と、さまざまな有識者、実業家のネットワークを活かしたプロジェクト活動の参加である。
生徒たちは、実際に宇宙ロケットの開発・発射等の活動、和牛の生産・販売、寿司職人になるための技術・経営、ファッションやエンジニアリングに関する体験等をし、第一線で活躍しているプロに学ぶことができる。机上の空論ではない、実在の社会活動へ参加しながら学べる教育機関である。
会見には、主催者の堀江貴文氏、顧問の坪田信貴氏(坪田塾、通称『ビリギャル』作者)、佐渡島庸平氏(『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』の編集、株式会社コルク代表取締役社長)、ゼロ高責任者の内藤賢司氏(SNS education株式会社代表)が登場した。
選択肢を知ることができない世界、未来を諦めなければいけない世界を解決する
まずはじめに、ゼロ高の責任者内藤氏による挨拶と学校の概要発表が行われた。
内藤:ゼロ高で解決する課題は、選択肢を知ることができない世界、未来を諦めなければいけない世界を解決することです。選択肢を知った上で自分で選択して、行動して、失敗して、学習して、また行動する、というサイクルを繰り返せる場所にしたいです。例えば生徒が宇宙に興味があって、事業に関わってみる。その結果、自分はもしかしたら違うかもしれないと思ったら、次に別のものに関わってみるという、その気付きのサイクルを何度もやって、自分の道を見つけられる世界をつくりたいと思っています。
ゼロ高等学院の概要発表
ゼロ高に入学できるのは、高校を卒業していない、全国に住んでいる人限定で、定員は400人(仮)。
入学式は10月6日に静岡県にあるゼロの郷(静岡県榛原郡川根本町壱町河内95)にて行う。SHOWROOMを使いインターネット上で参加することも可能。
既存の高等学校と教育提携することにより、在学中にあらゆる社会活動に参加しながら、通信制高校として高校卒業の資格が取得できる。
3年間の費用は、ゼロ高等学院が108万円。ゼロ高はサポート校なので、教育連携先の鹿島山北高等学校で約30万円。(就学支援金適用時)その他に別途教材費等も必要だ。
今後は、内藤代表がクラフトファンディング「ゼロ高の説明会と中学生のお悩み相談会をあなたの町で行いたい」を企画し、各中学校に出向く予定。
多動力で有言実行。わずか半年で学校を立ち上げる
続いて、教育についてのディスカッションが行われた。
坪田:僕がやっぱり、堀江さんってすごいなと思うのは、そもそもこの話が出たのって今年の2月で、ここまで半年しか経ってないじゃないですか。
堀江:ドワンゴのN高の本校舎が沖縄にあって、そこで「ホリエモン祭 in 沖縄」っていうのをやったんですよ。その時にFC琉球の社長が来てて、FC琉球高等学校はどうやって作ったんですか?って質問したら、通信制の高校と提携して立ち上げたと聞いたんです。一からN高みたいに、めちゃくちゃ面倒くさい手続きをしないといけないのかなと思ってたから、なんだ、こんな方法あるんだと思って。教えてもらったやり方を参考にさせてもらいました。
坪田:ここってめちゃくちゃ大きなヒントだと思ってて。教育業界にずっといて、学校の先生や塾の先生とかはもちろん、いつか学校つくりたいっていう人を2万人ぐらい見てきたんですよ。だからもう、いつつくるんですかと聞くと、いやまあ10年後、20年後、それが夢で、世の中変えたいです。みたいな。それだと、もうおじいちゃんになっちゃうよっていう話ですよね。
ところがなぜ、堀江さんが高校を作ると決めて、わずか半年で学校を作れたかというと、多動力を発揮して、いろんなイベントを開催して、いろんな人と巡り会うわけじゃないですか。そこが、ある種人材のストックみたいになってるんですよね。
堀江:やっぱり35年前とかの田舎って何も情報なくて、インターネットもないから、周りの大人も中学受験なんて誰も考えてなくて。でも、小学校3年の時の担任の先生に、君はたぶんここにいるとダメになるから、塾に行ったほうがいいって言われて。そういう道があることを教えてもらったから今の僕があるんですけど。だから、ちょっとしたきっかけとか出会いだったりで、コツを探してやればできると思う。
時代は変わる。教育もアップデートが必要
堀江:HIUもよく高校生から入れるんですか?と訊かれて、1万円払えば誰でも入れるよって言うんですけど、学校やめてHIU入ろうとするヤツは誰もいない。だったら、学校の殻は作ろうと。やっぱり親とか先生は、高校ぐらい卒業しておきなさいって何も考えずに言うんで。意志なく3年間普通科に通うと、無駄な時間になりますよね。高卒の認定資格は、取ろうと思えば自分で取れますし。それなら、通信制でもいいのかなと。
坪田: 今までの教育って、優良な労働者をいかに量産するかという、富国強兵の流れからのもので。でもゼロ高って起業家を作ろうとしているじゃないですか。ここが今までの学校と圧倒的に違うところだなと思って。
堀江:社会がテクノロジーで完全に変わって、スマホ・ブロードバンド・インターネットで、画一的な生き方をしなくても生きていけるようになった。昔は協調性がなかったり、会社で働かなければダメだったりだったり、家族とか作んなきゃいけない風潮だったけど、今はテクノロジーの力でいろんなものがシェアリングできるようになって、生きて行くのにお金がかからなくなった。昔は、まずはお金を稼ぐためにサラリーマンにならなきゃみたいなのがあったけど、今はもう完全に崩壊している。子どもは特にそれに気付いてて、なんで俺たちこんなことやってるんだろうって思っている。
あと、学校教育の弊害って、同世代としかつるまない文化を作っちゃうことですよね。自分と同じプロファイルの人たちとつるんで、多様性を受け入れられなくなる。その課題も含めて、場をつくって行かなきゃいけないし、実は、バラエティー豊かな選択肢があると思っていて、合うものをやればいいと思う。1カ月寿司職人コースに入ったけど、センスねえなと思ったら、次は、ロケットエンジン作ってみようかなってやってみたり。
学校に行く目的とは……言い訳や遠回りをし過ぎている
堀江:ロケット作ろうと思ったらまず何します?
坪田:まず、ペットボトルロケットから作りますかね(笑)。
堀江:それはめちゃくちゃいい方。普通の人は、高校で一生懸命勉強して、工学科行って、大学院まで8年ぐらいいて、そのあとJAXAとか三菱重工入るわけですよ。でも、その中でロケットエンジンの開発に関われるのなんか、100分の1くらいですよね。それには運も必要で。
坪田:運が良ければそこにのれるけど。人によって決められる人生というか。
堀江:筋が良くない。でもゼロ高にきたら、ロケット科のエンジンの開発現場にすぐいけるから。行って、見て、センスが良かったら雇われるから。しかも小さい会社だから見ようと思えば全体を見れるんですよ。自治体との交渉までも。
坪田:現場で生徒さんに一番訊かれるのが、なんのために学校に行くのか、何のために勉強するのかということです。で、周りの大人は何て言ってるのって訊くと、集団行動を学ばなきゃダメだとか、論理的な思考を学ぶためだとか。じゃあ、集団行動って学校じゃないと学べないのかというと、そうじゃないんですよね。論理的な思考だって、数学じゃなくてもいい。何が言いたいのかって、学校の行ってる目的って、すごく遠回しに説明してますよね。直接これっていうものがない。でも、ゼロ高だったら、まず訊かれないですよね。何のために学校行ってるのかって。だって、自分がやりたいことが明確で、それを素敵な大人たちから学ぶから。
堀江:僕たちがゼロ高でやるのは、本当に必要とされているものを作ることが最終目的なんで。
知識とか教養って、一生使える哲学が学べる本を読めば、ある程度つくんですよ。例えば今だったら、『サピエンス全史』とか、『嫌われる勇気』だったり、竹中平蔵さんの『経済ってそういうことだったのか会議』とか、これ読んでおけば大丈夫だろっていうものを何冊か勧めておくだけでも、実は高校3年間分の哲学が学べたりする。
〜ここで佐渡島氏到着〜
時代にあったカリキュラムやサービスを考える
堀江:いい漫画を作れる人ってすごく少なくて、いい漫画が作れる人って、ネームっていう絵コンテみたいのを作るのがうまい人なんですよね。でも、その絵コンテを作ることは、まったく論理化されていない。
佐渡島:ゲームソフトで、『マンガ・カ・ケール』っていうのがあるんですけど、それに、告白するシーンとか、質問されるシーンとか、さまざまなシーンごとにどんな構図が最適かがわかるテンプレートがあるんですよ。それで1000種類ぐらいテンプレートをつくって、その組み合わせを変えたり、途中自由に描いたりすれば漫画ができる。
堀江:それ頭いいですね。
佐渡島:既存の漫画を機械に読ませて、構図の整理したら結構パターンはでてくるはずだと思っていて。
堀江:そういうのも作りたいんです。
これからの時代に必要なのは座学より行動。とりあえず行動した人が一番得している
堀江:僕らがプレリリース出して「やるよ」って言ったら、周りの大人たちが俺もなんかやらしてよってどんどん言ってきてくれて。中には外食業界の大物とかもいるんだけど、彼の理論を学んだら、レストラン経営できるようになりますよ。
あと、まだまだ講座を開きたい人も募集中です。1カ月でも3日でもいいんですけど、いろんなコースを生徒に用意したい。うちでインターンしてもいいよっていう会社があれば、募集します。
(※学校顧問には元マイクロソフト社長である成毛眞氏、モテクリエイター“ゆうこす”こと菅本裕子氏の就任が決定。(順次追加予定))
とにかくこれからの時代に必要なのは、座学より行動なんですよ。行動したやつが一番強い。何もわかんないんだけど、とりあえず行動したやつが一番得してますよ。
坪田:ゼロ高はあらゆる枠を取ってくれる気がしますね。
堀江:そういうものを作りたいです。何が起こるかわからないですけど。一期生はすっげー面白いやつが来ると思います。こういうのに一期生で来るヤツはめちゃくちゃ才能があると思う。
時代が変わるにつれて、教育現場やカリキュラムも変えなければならない。これは当たり前に思えるが、学校現場はなかなか変わらない。そんな教育界で「ゼロ高」が先陣を切って、あらゆる凝り固まった風潮や概念を壊し、再構築してくれるだろうと期待が膨らむ。
「ゼロ高」にどんな一期生が入学してくるのか、そしてどう成長していくのか、非常に楽しみである。