CULTURE | 2018/09/04

アジアのファンたちが、バンドのクリエイティブもマネタイズも変えてくれる|シャムキャッツ+寺尾ブッタ(月見ル君想フ)【後編】

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※本インタビューは2018年3月14日に収録したものです
写真は2018年に行われたバンコクでのライブ...

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※本インタビューは2018年3月14日に収録したものです

写真は2018年に行われたバンコクでのライブのオフショット。左から、夏目知幸氏 (Vocal&Guitar)、大塚智之氏(Bass&Chorus)、菅原慎一氏 (Guitar&Vocal)、藤村頼正氏 (Drums&Chorus)

インターネットやLCCの普及に伴い、ヒト・モノ・コトのグローバル化がより一層進む中、草の根ネットワークのインディロックの世界において、台湾や韓国といったアジア諸国のバンドが次々と来日、また日本のバンドも進出する機会が非常に増えている。

前編では全体的な状況論として「なぜ日本のインディバンドのアジア進出が増えているのか」というテーマを扱ってきたが、いよいよ後編では「シャムキャッツはアジア進出によって何を得られたか」という話題へと移っていく。

これを読めば「日本の音楽好きと同じセンスを持った若者が、アジア圏にもたくさんいる」という、文字にすれば当たり前にもみえる感覚が、よりリアルに伝わってくるはずだ。その感覚をもってして、ぜひともお気に入りのアジアバンドを見つけてみてほしい。

聞き手・文・写真:神保勇揮

シャムキャッツ

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メンバー全員が高校三年生時に浦安にて結成。
2009年のデビュー以降、常に挑戦的に音楽性を変えながらも、あくまで日本語によるオルタナティブロックの探求とインディペンデントなバンド運営を主軸において活動してきたギターポップバンド。サウンドはリアルでグルーヴィー。ブルーなメロディと日常を切り取った詞世界が特徴。
2016年からは3年在籍したP-VINEを離れて自主レーベルTETRA RECORDSを設立。より積極的なリリースとアジア圏に及ぶツアーを敢行、活動の場を広げる。
代表作にアルバム「AFTER HOURS」「Friends Again」、EP「TAKE CARE」「君の町にも雨は降るのかい?」など。最新作はシングル「カリフラワー」。
2018年、FUJI ROCK FESTIVAL ’18に出演。

寺尾ブッタ

BIG ROMANTIC ENTERTAINMENT / 大浪漫娛樂集團代表(青山/台北月見ル君想フ、浪漫的工作室、BIG ROMANTIC RECORDS)

旅好きが高じて2001年北京短期留学、2005年頃青山月見ル君想フ入社、2014年に独立後、台北月見ル君想フ出店。以来東京と台北を中心に各種イベントプロデュースなどを手がけている。現在BIG ROMANTIC ENTERTAINMENTとしてライブハウス、レーベル、ツアーマネジメント等、を展開中。

東京・大阪の延長線上に台北・ソウルがある

―― ここからはシャムキャッツ自身の海外公演とかツアーの話をしていきたいんですが、行ってみてお客さんの反応がどうだったとか、印象に残ったエピソードがあれば教えていただきたいと思います。

菅原:それは台湾、中国、韓国、どこでも?

―― 「この国であった話」という感じで教えてもらえれば。

菅原:2016年に初めて台湾に行った時は、さっき夏目が言っていたのとは逆の意味で、「自分たちがやっていそうな音楽をやっている人たちが海外にもいるんだ」みたいな、共通の感覚を持てそうな感じの、同世代かそれより若いぐらいの人たちが結構いるんだ、というのを実感できて、安心したという印象かなあ。

2016年、シャムキャッツが初めて台湾遠征をした際のショット。ぼやけているが左側に寺尾ブッタ氏も写っている。
撮影:山口広太郎

しかも、日本とは似てはいるものの、やっぱり音楽要素の混ざりぐあいが違うというか、さっきブッタさんが言ったみたいにシューゲイザー的なインディーズの人たちもいれば、もうちょっとポップだったりワールドミュージック的なことをやるようなバンドもいる。台湾は特にいろいろなジャンルのインディ音楽が同じ時期にブレンドされている印象があるんです。

台湾の4人組シューゲイザー~ドリームポップバンド、Manic Sheep。来日公演も複数回行っており、2014・15年にはフジロックへの出演も果たした。

一方で韓国はわりと日本に近いというか、もっと日本の今のインディロック的なものが多かったりする印象かな。今では国単位というより都市単位で見られるようになってきたというか、東京、大阪、京都、福岡、名古屋にそれぞれ音楽シーンがあって、さらにその延長線上に台北がある、ソウルがある、みたいな感覚になれた。

韓国の4人組ロックバンド、HYUKOH(ヒョゴ)。日本の早耳ファンからは「韓国のSuchmos」とも呼ばれ、2016・17年にはサマーソニックにも出演している。

菅原:ブッタさんがさっき言っていた「自然な流れ」はすごくある気がしていて。Spotifyに楽曲を登録していると、バンド側は「この曲が今月、どのくらいどこの地域で再生されたか」っていうことがデータで分かるんですけど、僕らの曲が3番めに聴かれている都市が台湾なんです

藤村:東京、大阪、台北っていう順番だね

大塚:名古屋とかより全然多かったりする。

―― なるほど。

菅原:それぞれの国で言葉は違えど、音楽的には共鳴するところも多いのかなと思えたから、行って演奏してお客さんの反応を見てというのが、日本でやるライブと完全に同じ感覚でやれた。だから「なるほど。海外進出するといっても、初めて北海道に行くのと同じかな」みたいな気持ちになれたというか、そういう気持ちでやっていけば広がっていくのかもしれないなと思えたという感じです。

―― 客層とか規模感は日本とそんなに変わらないんですか?

夏目:日本の地方に行くのと変わらないぐらいかも。でも、まだまだですけどね。「俺らがあっちで成功しました」という状態ではまだない。そう感じていて、ここからどうするかを考えているから。

菅原:ただ中国だけはやっぱり特殊で、ここまで言った話はあまり当てはまらなくて。

というのも、中国は最近やっと日本で言うところのクアトロとか渋谷WWWみたいな、設備の整った、音の良いライブハウスができたばかりの時期で、日本のインディ勢のライブもあんまりなかった。だから「オシャレスポットの一つとしてとりあえず遊びに行く」みたいな子も結構いて、そのスタート地点な感じがいいなと。

2017年の福州でのライブ後、地元DJとの打ち上げセッションの様子。写真中央奥でドラムを叩いているのは寺尾ブッタ氏。なぜイトーヨーカドーのCM映像が投影されているのかは不明。
撮影:山口広太郎

大塚:ただ一方で、すごく色んな音楽を聴き込んでる人もいっぱいいますね。僕らの中国ツアーの終演後に、「ポップミュージックにジャズ的な要素を入れたりすることを僕もすごくやりたいです」って話しかけられたんです。「初めて中国に行く、しかもインディバンドのベーシストを気にかけてくれるのか!」と驚きましたし嬉しかったです。

中国には潜在ファンが日本の10倍いる!?

菅原:中国はネットの閲覧に制限がありますけど、若い子はどうにかしてそれを破っていて、普通にみんなYouTubeの動画を観るし、SpotifyとかApple Musicも使っていて、なおかつ人口が日本の10倍。だから単純計算すると「今の日本のファン」みたいになり得る人が10倍いることになる。

シャムキャッツが2017年12月にリリースしたシングル曲「このままがいいね」。YouTubeのコメント欄にはさまざまな言語で好意的な感想が寄せられている。

藤村:上海とか北京は人口が2,000万人だから、それ以外の日本でいうところの地方都市でも700万人とか、そのぐらいあったりして規模がすごい。

菅原:中国ツアーの時に色んな細かいお手伝いしてくれた、お客さんなのかスタッフなのかよく分からない立ち位置の「カンナちゃん」という女の子がいるんですけど、その子のインスタのストーリーズを見ると、例えばEMC(Enjoy Music Club)が中国ツアーに出ていた時には、友達と20人ぐらいの集合写真で「EMCのツアーに行くぞ!」と投稿していて。それってすげえなというか、日本ではその規模でインディバンドのツアーめぐりなんてほぼ無いじゃないですか。

―― やってもせいぜい友達2~3人と、っていう規模ですよね。

菅原:そういうのを見ると、本当に人口が10倍なんだなと(笑)。しかも中国を回るのって、沖縄から北海道ぐらいの移動の連続ですからね。

――海外の若い子たちの音楽の聴き方は、今の日本と同じように「国内でも海外でもいいものはいいじゃん」というようなフラットな感じになっていると感じますか?

夏目:全体的な傾向は分からないけど、現地に行って仲良くなるような人たちが聴いてきた音楽は、俺らとまったく一緒。同じバックボーンを持っている人たちが、別の国にも当たり前のようにいたんだなと

―― それはミュージシャン、お客さんのどちらも?

夏目:そう。イベントを組んでくれる子とかも含めてね。

菅原:たぶん、サブスクなんかでどれだけ聴ける音楽の数が増えても、リスナーが引っ掛かる音楽のタイプは昔とあまり変わらないと思っていて。だから、今でもビートルズとかストーンズから入って、みたいな流れがある一方で、それらを経ないで最初からインディロックにハマる子も当然いる。それは、日本でも中国でも台湾でも韓国でもあまり変わらないんじゃないかと。

中国は個人プロモーター戦国時代

―― 逆に、海外で苦労したとか大変だったことはありましたか?

菅原:いっぱいありますね。

夏目:ありますよ(笑)。中国が特に基本的な文化の違いを一番感じるから、音楽シーンがどうこう以前というか、何て言ったらいいだろう。俺らの感覚からすると時間にルーズというか、「物事に対してどういう準備をするのか」というアプローチの仕方が違うから、そこでストレスが溜まることは多少あった。

寺尾:いわゆる大陸的というか(笑)。

夏目:正直なところ、ライブでしっかりと自分たちの音を表現したいと思っても、それができなくなるようなアクシデントはちょこちょこ起こりますね。ただ向こうは向こうのルールでやっていて、それで何とかなるところもあるから、そこは郷に従えみたいな部分もある一方で、自分たちも「こうしたいんだ」っていうアピールしていかなきゃダメだと思ったかな。

―― それは機材トラブルとかですか?

菅原:それもあるけど、一番は時間に関する考え方だと思っていて。普通は「何時からリハをやって何時から本番です」ということを事前に決めるじゃないですか。で、こっちは限られた時間の中でベストを尽くせるように準備したい。でもそこがちょっと違うなというか、すげえ大変でした(笑)。

―― リハーサルやサウンドチェックができなかったことも結構あったりとか?

菅原:全然できなかったです。ただ面白かったのは、本番で「ウォームアップ」と書いてある時間があって。何のウォームアップかよくわからないですけど、要するにそれはオープニングアクトが各都市にいるということだったんです。

撮影:山口広太郎

―― バンド名とかの告知も全然ないんですか?

菅原:何もなくて、しかも「今日が初ライブです」みたいなバンドが多くて、すごく面白かったです。自分たちも半分主催だったはずなのに、全然それを知らされていなかった(笑)

―― そういうバンドは誰がブッキングするんでしょう。ライブハウス側とかですか?

寺尾:今回のツアーを企画したプロモーターの子ですね。

夏目:中国では2017年ぐらいから個人プロモーター戦国時代みたいな状態になっていて、そのうちの一人の女の子が僕たちを呼んでくれたんです。一人でもいろいろできるというのが向こうでも流行っているというか分かり始めて、私はこの人を呼ぶ、私はこの人を呼ぶといううちの一人の有力な人物ですね。

寺尾:中国の人が日本のバンドを呼んで、ライブをしてもらったりツアーをするケースが増えているんです。「あの人がやったら、うちもやりたい」な感じで、結構オファーがかかることが増えているみたいです。

シャムキャッツの2017年中国ツアーを一緒にまわった福建省出身の3ピースバンド、THE 尺口MP(The Romp)との集合写真。THE 尺口MPは「シャムキャッツ好きにオススメ!」とPOPに書きたくなるようなハネたギターポップサウンドが印象的。音源はBandcampで試聴・購入できるほか、日本でも大阪のFlake RecordsにてCDを入手可能。通販もできる。
撮影:山口広太郎

ただ、今回シャムキャッツを呼んだプロモーターはわりとまだ経験が浅い子だったので、非常に濃い中国テイストで(笑)。でも、これって中国特有とかではなくて、台湾でもそんな時期があったりしたんですよ。

台湾でも最初の頃は、タイムテーブルがないうえに、機材の使い方に習熟していなくて、リハで時間が全部なくなっちゃったという、本番ができなかったライブがあったらしいという伝説もあるぐらい(笑)。

夏目:ヤバいですね(笑)。

寺尾:だから、いずれは中国もちゃんとできる方向に行くと思うんです。でも急に日本のやり方を押し付けても現状はうまくいかなくて、どうにか上手いことやるしかないかなと思いますね。一つ言えるのは「コミュニケーションをよく取るべし」かな

もう海外進出は「特別なこと」じゃない

―― シャムキャッツの海外展開に関する今後の展望を聞かせてください。

夏目:中国、台湾、韓国に行ってはみたけれど、まだまだ大成功というか「お客さんも大勢集まったし、おまんまの食い扶持を見つけました」という状態にはなってないです。でもなんで希望を抱いているのかというと、そもそも日本においても俺らは流行りの音楽をやっているわけじゃないし、ただ地道に活動してきてファンを少しずつ増やして状況を良くしてこられたから

バンビ(大塚)の話ともつながるけど、その延長としてもっと活動する地域、フィールドを広げて、日本でも同じように良くしていけるだろうと思っていて。しかも自分たちがコントロールできる範囲でそれをやっていくという、ずっと続けてきたスタイルを海外でもやる。ちゃんと、そういう意識があればやれるのかなという気はしている。協力者もいるし、という感じ。

香港の独立系レコードショップ「White Noise Records」にて。写真右端はオーナーのGary Ieong氏。日本でもそうであるように、こうした独立系ショップの存在が海外インディバンドと現地ファンをつなぐ重要なハブとなっている。

―― 「インディバンドは1,000人の熱心なファンをゲットできれば食っていける」みたいな話がありますけど、そのうちの何割かをいろんな海外の都市で見つけられそうだ、っていう感じですか?

夏目:そう。俺らも「各国の一番大きな都市では1,000人ぐらいを集めるバンドになりたい」っていう目標を立てている。でもそれはゆっくり達成できればいいとも思っていて。

そうした目標を実現している先達として、ヨ・ラ・テンゴっていうアメリカのバンドがめちゃくちゃ好きで。彼らは結成30年を超えてるけど、未だに東京でライブをすれば1,000人ぐらい集客してる。テレビとかでめちゃくちゃ話題になったわけでもないのに、30年経っても外国で1,000人集められるっていうのはやっぱりすごいと思う。そういうやり方があったんだと気付かされるから、同じようなことができないかな、アジアで。とは思っている。

菅原:今は全体の40~50%ぐらいが海外リスナーで、それはシャムキャッツだけの話じゃなくて、たぶん今の若い子たちが聴いている音楽の割合も結構そうだと思うんです。それは自然な流れでそうなっているから、あとはバンド側が合わせていくのが大事かなと思ってる。例えば台湾でやる機会を増やすとか、それが自然にできる時代なのかなと思うし。

8月14日に通販・ライブ会場および一部ショップのみで販売を開始した『「春の初ホールワンマン『らんまん』LIVE AT NIKKEI HALL」』より、中国・杭州でのライブ映像。なお、このDVDにはアジアツアーのドキュメント映像も収録されている。

大塚:まだ行けていない他の国も行きたいですし、それで足腰が強くなってきたらヨーロッパなりアメリカに行ってもいいかもしれない。

夏目:本当にそう。音楽は、わりと簡単に外国に届けられるメディアでしょう。だから、行かないといけないというか、行くのが普通にならないと。

大塚:誰でも普通に外国の音楽を聴くわけだし。

菅原:昔みたいに5,000人、1万人集められなくても海外でやるチャンスはある時代だと思うから、すごく良かったなと思います。会社の力とかパトロンの力じゃなくて、自分たちの力でそれを開いていかけるのは楽しいと思います。

夏目:大きな存在の力に頼らなくても、ということね。

―― 今までの日本の歌手・バンドの海外デビューって「アメリカ上陸!大々的にプロモーションして絶対に成功させる!」みたいなかたちばかりだった気もしますが、今はもう全然そんな気負いもなく、等身大というか普通に行けるっていう感じですかね。

寺尾:とはいえ、今でも日本のバンドやシンガーソングライターが試しに1回台湾に行ってみて、残念ながらお客さんがあまり入らなかったっていう時に、すぐ諦めちゃう人も多いんですよ

でも、シャムキャッツは長期的にじっくり考えてくれている。最初に台湾でライブした時からもちろん手応えはあったと思いますが、そんなにウハウハでもなかったと思うのね。

夏目:収益的にというか客入り的には。

寺尾:「そこからやっていくぞ!」という感じで、コツコツ積み重ねてブレイクスルーしたバンドは、実はまだいないと思うんです。少なくとも台湾では

だから、シャムキャッツが今後も頑張ってもらって、このままの勢いでドンと行ってくれれば自分も嬉しいし、日本のインディバンドにとっても希望になると思うんです。シャムキャッツの犠牲の上で(笑)。

藤村:犠牲?(笑)。

―― 獣道を切り開いてくれると(笑)。

寺尾:そう。僕も持てるものは全部つぎ込んでいますけど。

大塚:「自主運営のインディの人が、インディのまま活動していくこと」に関して、自分たちの上の世代なら曽我部恵一さんや向井秀徳さんとかがいたし、世代ごとにあり方が更新されているなとも思うので、若い子たちもそれを見習うでも憧れるでもいいけど、自分たちよりもうまくやっていって欲しいと思いますね。

海外リスナーの存在が、クリエイティブのあり方も変えてくれる

夏目:…あっ。とっても大事なことを言い忘れてた。今回話してきたのはバンドの運営のことについてだと思うんだけど、海外に行ってライブすることで一番デカかったのは「クリエイティブのあり方が変わった」っていうことなのかもしれないと思ってて

今までは曲を作るっていう行為が、無意識に日本のリスナーに対してだけに向けたものになっちゃってたけど、台湾にも中国にも韓国にも聴いてくれる人がいることがわかると、そういう人たちのことも思い浮かべられるようになる。

そうすると、自分たちの表現がより強いものになっていくと思うし、もっともっといいものに変わってきていると思う。そういうことが大事だったかな、という気がするね。

2018年、香港にて行われたライブ後の集合写真。香港のプロモーター、「domiproduction 島米制作」と一緒に。

藤村:バンドを成長させるものにはなると思う。

寺尾:経験と、お客さんとのコミュニケーションとで変わると。

大塚:夏目は具体的にどう変わったと思う?

夏目:今までよりも曲が書きやすくなった。「日本国内でやらなきゃいけないしがらみ」がなくなったというか。

菅原:そうだね。

―― 日本人の好みってこういう感じだよな、みたいな。

夏目:そうそう。「もともと本当に自分がやりたかったことをやっていいんだ」という気持ちにはなれたかも

菅原:逆に、俺は「元に戻れた」という感じがしたかな。

夏目:自分たちを変えるには環境を変えるのが早いというか、むしろ環境を変えないと自分たちも変われないとは思った。行って初めて思ったけど、やっぱりそうだなというか。

寺尾:ミュージシャンはそうした変化が曲なりライブとして外に表現されるのがやっぱりいいですよね。

* * *

「日本の音楽産業の売上が低下し、ミュージシャンも苦しんでいる」という話はこの20年で何度も聞かされてきた。それでもなお、インディ、アンダーグラウンドまでを見渡すと、日本の音楽のクオリティは下がるどころかむしろどんどん上がっているように感じる。

いち音楽ファンとしてもっとも悲しいことは、自分の好きなバンドが解散、もしくは活動休止に追い込まれてしまうことだ。金銭的な理由が要因ならなおさらである。夏目氏が後半に指摘していたように、日本のミュージシャンがアジア圏へと出ていくことで「日本(だけ)で売れること」を意識しなくなることに起因するクリエイティブの変化、そして新しいマネタイズ方法が浸透してくれば、日本の音楽シーンも今後まだまだ大きく変化していくかもしれない。

ただ、そういった堅苦しい話を抜きにしても、アジア圏に魅力的なバンドがどんどん出てきていることはこの数年ほんとうに痛感しているところだし、ショップやフェスでもプッシュされる機会が如実に増えている。今までは日本や米英のバンドしか聴いていなかったという人も、何かの機会に見かけることがあればぜひ一度聴いてみて欲しい。


シャムキャッツ

台北月見ル君想フ