CULTURE | 2019/03/07

「本腰を入れる」という表現はテレビで使っちゃダメ? ありえない自主規制に大ブーイング

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文:岩見旦

テレビ局に日々舞い込むクレームの嵐。視聴者やスポンサーか...

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文:岩見旦

テレビ局に日々舞い込むクレームの嵐。視聴者やスポンサーからの抗議により、番組スタッフは萎縮。昔と比べ無難な企画ばかりになっている。

しかし、そんなクレームを恐れるあまり見当違いな自主規制をしていることもあるようだ。

番組スタッフ「他の表現にして下さい」

劇作家で演出家の藤沢文翁さんは、テレビで仕事をした際、「本腰を入れる」という表現を使ったところ、番組スタッフから「他の表現にして下さい」と言われたという。

藤沢さんは一瞬何が駄目なのか理解できなかったが、「性的描写に捉える視聴者がいるかもしれない」という説明を聞いて思わず爆笑してしまったとのこと。

3月3日に投稿したこのツイートは現在1万9,000件を超えるリツイートを獲得し、「言葉狩りのよう」「開いた口が塞がらない」「中学生かよ…」などのコメントが寄せられた。

また、「本腰を入れる」がNGなのであれば、「胸襟を開く」「精が出る」「手取り足取り」「一触即発」といった言葉も、同じく放送できないのではといった意見も挙がった。

「本腰を入れる」の語源は武道

そもそも、「本腰を入れる」とは性行為が元となった言葉ではない。

『新明解国語辞典』の編纂に携わった、東京大学名誉教授の故・柴田武さんの著書『知っているようで知らない日本語』(PHP研究所)によると、「本腰を入れる」とは、武道に由来する言葉だ。「本腰」とは本式の腰の構えのこと。腰が基本になっている武道において、腰の構えがおろそかでは決して上達しない。このことから転じて、真剣になって取り組むという現在の意味になった。

しかし、あるテレビ局のアナウンサー用の手引書には「本腰を入れる」という言葉は「この種の言葉は、やや卑俗な感じを持つ人もいるので注意して使う」という注釈が付いているという。

テレビに吹き荒れる自主規制の嵐

テレビには自主規制の波が及んでおり、クレームが来る可能性のあるイジメを連想させるような演出やハードなリアクション芸はやりづらくなっているという現実がある。

現在放送中の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』では、当時の喫煙シーンを再現したところ、公益社団法人「受動喫煙撲滅機構」からNHKに抗議が入った。

自主規制でがんじがらめなテレビを尻目に、Amazon Prime Videoなど動画配信サイトはブレーキなしの過激な企画で注目を集めている。

多大な影響力があるからこそ、表現に慎重さが求められるのは理解できるものの、テレビは今一度視聴者とともに、正しい線引きを考えてみる必要があるのかもしれない。