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都会の住宅地で魚が野菜を育てる?俳優・小林涼子さんが挑戦する農福連携「AGRIKO FARM」
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  • 2022.07.01
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都会の住宅地で魚が野菜を育てる?俳優・小林涼子さんが挑戦する農福連携「AGRIKO FARM」

取材・文/庄司真美 写真/高橋宏幸 取材協力/TANK

今年4月、東京・桜新町の人気カフェ「OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町」の屋上に突如現れたのは、水音が心地いい循環型農業アクアポニックスを用いた農福連携「AGRIKO FARM」。

一見、観賞用かと見紛うが、さにあらず。近年、環境負荷を軽減する農法として世界的に注目される「アクアポニックス」と呼ばれる農業スタイルで、水耕栽培と魚の養殖をかけ合わせたものだ。

さまざまな魚が泳ぐ大きな水槽の水には、食べ残りのエサや排泄物が含まれる。それをバクテリアが分解しレタスやハーブなどの水耕栽培の養分となる。植物が栄養として吸収したことにより浄化された水は水槽に戻り、繰り返し循環される仕組みだ。

日本でもまだ事例の少ないこの「アクアポニックス」事業を始めたのは、俳優の小林涼子さん。

俳優として28年のキャリアを持ち、パラレルキャリアで活躍する小林涼子さんに、事業を始めたきっかけをはじめ、目指すビジョンについて伺った。

小林涼子

俳優・モデル・株式会社 AGRIKO代表取締役

1989年11月8日 東京都出身。昼ドラ「砂時計」「魔王」でヒロインを演じ注目を集める。2021年10月期TBS系「 婚姻届に判を捺しただけですが」ほか多くのドラマに出演。テレビ東京系「花嫁未満エスケープ」にレギュラー出演。2014年より農業に携わる。家族の体調不良をきっかけに株式会社AGRIKOを設立。農林水産省「農福連携技術支援者」の資格を取得し、AGRIKO FARMを開園。

都会育ちだからこそ感じた、食の成り立ちの大切さ

現在32歳ながら、子役時代から28年のキャリアを持つ小林さん。

―― 4歳から子役やモデルとして芸能界でキャリアを築いてきた小林さんですが、子役時代に大人ばかりの世界で学んだことは?

小林:6〜8歳のとき、七五三の広告のモデルをしたことがありました。着ている着物にシワを付けられないので、休憩中も座れないし、何も食べられなくて、本当に大変なんです。そのとき母に言われたのは、「自分でやりたくてやっているのだから、最後まで責任をもってやりなさい。やりたくないなら俳優業をいつでも辞めればいい。」という言葉でした。一人の人間として、責任や自覚を持って働くことを教えられましたね。

―― 俳優としてさまざまな役を演じる以前に、一人の人間として意識していることは?

小林:金銭感覚を含め、普通の感覚を大事にしています。朝から仕事がない日でも、家族と一緒に7時には起きて、なるべく夜は12時には寝るなど、規則正しい生活を心がけています。

ときには素敵なレストランに連れて行っていただく機会もありますが、華やかなお料理の先には、農家の皆さんが365日を費やす生産の現場があって成り立っていることを忘れてはいけないと、2014年より新潟で農業に携わるようになってから、強く意識するようになりました。

父から受けた食育の影響も大きいです。子どもの頃から、よくぶどうやりんご狩り、たけのこ掘りなどに連れて行ってもらいました。

そのため東京で育ちながらも農業に興味を持つようになり、どうやって作物が育つかを子どもながらに理解していました。それが今につながっていて、東京でも食育の場を作りたいと思うようになりました。

直面した農家の厳しい現実。持続可能な農業のスタイルを求めて

―― そもそも農業に携わったきっかけと、「AGRIKO FARM」を始めることになった経緯は?

小林:駆け抜けた10代を経て、20代のときに仕事で躓いて落ち込んでいる時期に、家族に連れられて、新潟の父の友人の農家さんでお手伝いをするようになったんです。それがとても楽しくて、「小林涼子」という一人の人間として満たされる実感がありました。

地域で顔を合わせる人もごく限られていて、そこで自分たちが作ったお米や野菜を食べる生活は東京では味わえないものがあります。深い充実感を感じて以来、新潟へ通うようになりましたね。

しかし昨年、家族が体調を崩したことから農業を手伝えなくなり、離農を考えざるを得ない状況に直面したんです。病気や高齢化で働けなくなってしまったら、おいしいお米を作り続けられなくなり、結果として美味しいものが食べられなくなってしまうことに危機感を感じました。

いざ起業したものの、新潟の農地は、冬は雪が3メートルも積もる豪雪地帯。農業初心者の私にはとても手に負えません。そこでまずは生まれ育った世田谷の地で農業をスタート。知見を貯めて、ゆくゆくは新潟でも実践したいと考えました。

アクアポニックスの技術を活用し、レタスやハーブなどの葉物野菜を育てている。ここで育てた野菜はOGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町でも提供されている。

「現在は屋外で温度管理をしなくても育つ淡水魚を選んで育てています」と語る小林さん。

「この魚はもうすぐ出荷予定です」と小林さんに紹介された魚。イズミダイという淡水魚ですが綺麗なお水で育てているので臭みもなく、淡白で鯛のようなお味。どんなおどんなお料理にも合うとのこと。

OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町では、シェフの手によってAGRIKO FARMの野菜が「桜新町ランチコース」の中で提供されている(魚メニューは発育状況により順次提供)。※収穫状況によりご提供出来兼ねる場合もございます。

―― 小林さんは農林水産省認定の講習を経て、「農福連携技術支援者」の資格を取得し、AGRIKO FARMではGifted(障がい者)が活躍していますが、その仕組みを作ることになったきっかけは?

小林:障がいを負ったり、高齢になったりしてもみんなが続けられるバリアフリーな農業のあり方はなんだろうと考えたときに出会ったのが、「農福連携」の考え方でした。

私の取得した農福連携技術支援者は、具体的に農業を細分化し、アドバイスできる専門人材です。その資格を活かし、AGRIKO FARMでは、農業を誰でもできるように細分化。さらにGiftedと企業をマッチングすることで、継続可能な農福連携農園を目指して運営しています。

AGRIKO FARMは農園を貸し出し、企業に地域のGiftedの方々を雇用してもらい、実際にFARMで働いていただくことで、農園がまわっています。

私一人だけの力で農園は運営できませんが、こうした連携を勧めることで、持続可能な農業の仕組みができるし、Giftedの方々が自立した人生を送るお手伝いができればと考えています。

次ページ:ITを取り入れた農法で、3K職業からのイメージ脱却

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