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「ロシアと大日本帝国は似ている」からこそ、日本人にしかできない仕事がある 【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(32)
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  • 2022.04.30
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「ロシアと大日本帝国は似ている」からこそ、日本人にしかできない仕事がある 【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(32)

Photo by Shutterstock

ウクライナ政府のSNSアカウントが、ロシア・ウクライナ戦争における自分たちの正当性を国際社会にアピールする動画の中で、昭和天皇の画像をヒトラーやムッソリーニと並べて「打ち倒されたファシストたち」の例として使ったことが日本国内で「炎上」し、抗議が殺到した結果ウクライナ側が謝罪するという事件がありました。

結果としては当該動画を削除し、昭和天皇の写真を抜いてヒトラーとムッソリーニだけにしたバージョンを再アップロードしたようです。

インターネットで毎日繰り返される「炎上」小さな一件ではありますが、個人的には色々なことを考えさせられる事件でした。

今回の記事は、よく指摘される「今のロシアと大日本帝国」が似ているという話から、今後の国際社会に対して「日本人ならではの貢献」について考えるものです。

プーチンとロシア軍を「全く理解できない野蛮な敵」と断罪するのは簡単です。「彼らの行動を全く理解できない」という人も多いでしょう。

しかし日本人なら、自分の祖父母や曽祖父母の世代が集団的に実際にやったことに近いことから、もっと直接的にロシアを理解することもできるはずです。

そしてその「直感的に理解できる」ゆえに、第三次世界大戦もありえないことではなくなった人類社会に対して新しい視点を提供することも可能になるでしょう。

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年生まれ。京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感。その探求のため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、カルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働く、社会の「上から下まで全部見る」フィールドワークの後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングで『10年で150万円平均給与を上げる』などの成果をだす一方、文通を通じた「個人の人生戦略コンサルティング」の中で幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。著書に『日本人のための議論と対話の教科書(ワニブックスPLUS新書)』『みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか(アマゾンKDP)』など多数。

1:「雑などっちもどっち論」を乗り越えるには「本質的などっちもどっち論」が必要

とはいえ、まず誤解を避けるために言っておきますが、私は今回の戦争について「どっちもどっち」論的なことをしたいわけではありません。

この戦争に関してはロシアが絶対的に悪い。

れいわ新選組などが主張している「NATO東方不拡大の約束を西側が破った」という話についても、細谷雄一慶大教授によると「会議で一瞬そういう話が出ただけで確約などされていない」そうです。

東欧諸国にも主権があるわけで、それを否定するわけにもいかない。そもそも侵略戦争を仕掛けていいはずがない。民間人虐殺なんてさらに問題外です。

日本は平均的な日本人が考えている以上に「結構な大国」なので、G7の一員としてロシア制裁に一切加わらず、中立を守るなどという選択肢はありえません。

そんなことをしたら国際社会の制裁に巨大な穴が空いてしまいますし、「軍事力があればいくらでも領土を奪い取れる。糾弾されても突っぱねればお咎めなしに終わる」みたいな前例が許されたら人類社会に平和などありえない。

だから戦争に関して「どっちもどっち論」をやりたいわけではない。

しかし!です。

我々が考えるべきは、世界中でここまで「どっちもどっち論が湧き上がる真因」の方です。

「どっちもどっち」的な話をしているのはロシア人だけではない。

アメリカや欧州をはじめとする自由主義社会のあちこちで、主に「今の国際秩序」的な取り澄ました存在への反感から、プーチンに肩入れする感情が渦巻いている。

さらに「シリア内戦の時と国際社会の態度が違うじゃないか」的な意味で、第三世界には非常に冷めた感情が渦巻いてもいる。

結局「国際秩序」とか言ったって「欧米人に都合の良い秩序」ってだけでしょう?

…こういう感情的反応が人類社会全体で渦巻いているからこそ、「どっちもどっち」論を止められなくなるわけです。

だからこそ今必要なのは、

「もっと本質的などっちもどっち論」

であり、

「国際秩序」に対して「これは皆のためのものだ」と立場を超えて思ってもらうためのメッセージの送り方を真剣に考えること

です。

2:「鬼滅の炭治郎」のような解決方法が必要

『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎は、鬼を斬ることに対して決して容赦はしませんが、「鬼が鬼になってしまった理由」を慮ることも同時に深くやります。

この2つは「どちらか」でなく「両方」やらなければいけない。

「一つの秩序を安定させる」には、「その秩序形成によって負け組になる側の感情的課題」を繋ぎ止めるための深い配慮が不可欠であるはずが、今はここが一切顧みられていない。

「完全なる善」が「悪」を排除した状態で無理やり秩序形成をしてしまうので、その秩序の「辺境」において溜まりに溜まった反感がいずれプーチン的存在を押し上げてしまう。

以下の図は私の著書でずっと使っている図なのですが…

グローバルに共通なルールを普及させて人類社会を一体的に統御しようとする力と、現地社会の独立性を担保し、ローカルな細かい事情を丁寧に拾い上げて統治をするための事情がぶつかりあっている。

ソ連崩壊以降、アメリカが人類唯一のスーパーパワーであった時期には右側から無理やり押し込むこともできましたが、今や「アメリカ」と「非アメリカ」の力が拮抗してきてどちらにも押しきれなくなってしまっている(そもそもアメリカ国内ですらこの注射器の左右に分かれて強烈に争っている)。

上の図で言えば、注射器の「針先」に穴が空いていないので、両側から押し込んだエネルギーの行き場がなくなってしまっている。

古代イラン帝国の王は、「すべてのイラン人と非イラン人の諸王の王」を名乗ったそうですが、この表現はなかなか含蓄があるなと私は思っています。

今の欧米による国際秩序を代表する存在だけでなく、それ以外の存在も共に「代表」することを引き受けるような振る舞いが、このロシア・ウクライナ戦争以降、人類社会には切実に求められることになるでしょう。

とにかくどんな立場の人だろうと認めないといけないことは、

どう言い訳しようと国際社会はロシアとのコミュニケーションに失敗した

…という厳然たる事実です。

もちろんそれはいわゆる「アメとムチ」の両面があります。

「もっと強くNOと言うべきところもあった」こともあるでしょう。

そして同時に、「無意味にロシア側の感情を逆撫でし、プーチン的存在を押し上げる結果になった西側の態度」自体を反省することも当然必要なはずです。

そしてこの「アメとムチ」は相互に結びついており、どちらかだけでは上手く機能しない。

炭治郎くんの例で説明したように、「鬼を斬る」を徹底してやるためにこそ「慮る」ことも同じだけ必要になる。

片方だけでは決して押し切ることはできない。

「慮る」の感情問題の方を放置したまま「斬る」だけをやろうとしても、世界中で「どっちもどっち論」が巻き起こり徹底的にやりきることができなくなってしまうからです。

「慮る」を徹底するからこそ「鬼を斬る」ことも徹底できる、そういう「本質的などっちもどっち論」こそが今必要なのです。

そしてそれは、「両側の納得を得ることよりも、誰かを土下座させたい」という暗い欲望が激しく渦巻く人類社会に対して、新しい視点をもたらすことになるでしょう。

その課題を真剣に考えられるのは、背負ってきた歴史的経緯から言ってまさに私たち日本人の役割と言ってもいいのではないでしょうか。

3:覚悟無く相手を土下座させるような態度には、より大きな報復が襲いかかる

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