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ネカフェで強盗を試みた元自衛官男性。店員の「何なんですか!」に怯む姿に見る「焦りと苦悩」【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(36)
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  • 2022.04.29
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ネカフェで強盗を試みた元自衛官男性。店員の「何なんですか!」に怯む姿に見る「焦りと苦悩」【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(36)

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阿曽山大噴火

芸人/裁判ウォッチャー

月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

10カ月にわたる放浪生活の果てに行った無計画な強盗事件

新年度になったので人事異動で裁判官や検察官が入れ替わり、戸惑っている方も多いのではないでしょうか。でも、2カ月も経てば新しい人の特徴もわかってくるし、「この検察官面白いな」とか「この裁判官好きかも」という所感が出てくるでしょう。だからそんなに悲しむ必要はないのです。すぐ慣れます。そんな春を20回以上経験している者からのアドバイスです。

で、前年度末の3月24日に行われた裁判の話。

罪名 銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗未遂、建造物侵入
E被告人 住居不定無職の男性(29)

起訴されたのは3つ。

・今年の1月1日に、E被告人が秋葉原にあるネットカフェに客を装って侵入した件

・翌1月2日午前8時33分にE被告人がネットカフェのレジ前で女性店員に刃渡り15.1センチのナイフを示して、「カネを出せ」と要求をしたが、他の店員が助けに入り未遂に終わった件

・ナイフ2本を所持した件。

検察官の冒頭陳述によると、E被告人は大学卒業後に自衛官になり、その後原発警備の仕事をしていたが、2021年2月に無断で寮を出て無職になったという。その後は貯金を切り崩しながらネットカフェを泊まり歩く生活をしていたとのこと。

そして犯行当日の1月1日。所持金が75円になったE被告人は強盗してカネ得ようと決意して、午後7時55分に被害店舗に入店。翌朝、レジで女性店員から利用料金の2510円を請求されるとバッグの中からナイフを出して「カネを出せ」と脅したが、隣にいた男性店員が「あなた何なんですか!お金払ってくれないんですか?」とE被告人に問いかけたらしい。そしてE被告人は男性店員に「警察を呼べ」と要求し、駆け付けた警察に逮捕されたというのが事件の流れです。

カネの要求に全く応じない男性店員の態度がりりしくもあり立派ですが、それ以上にE被告人の潔い諦めの良さも印象的ですね。

取り調べに対し、E被告人は「去年2月に寮を出てからは全く出勤していない。職探しはしていたが住居不定で仕事が見つからなかった。犯行当日は男性から『あなた何なんですか!』と言われて強盗は失敗したと思い『警察を呼んでください』と言った」と供述しているそうです。

10カ月にわたる放浪生活の果てに行った無計画な強盗事件といったところでしょうか。

法廷には実家からやって来た母親が情状証人として証言台に立ちました。

弁護人「今、どんな気持ちですか?」
母親「親としての責任と無力さを感じています。何故、一言連絡くれなかったのかと」
弁護人「親子関係としては良好でした?」
母親「普通だったと思います」
弁護人「どんな性格のお子さんですか?」
母親「どこにでもいる普通の子。優しくて人を思いやれる性格だと思います」
弁護人「今後の更生はどう考えていますか?」
母親「再就職先を探し、同居します」

と、実家に戻らせて一緒に暮らすと約束です。

続いて検察官から。

検察官「今まで突然いなくなったことは?」
母親「ないです」
検察官「悩みの相談とかありましたか?」
母親「ないです。親が心配すると思って一人で抱え込んでいたんだと思います」
検察官「再犯しないために何をしますか?」
母親「普通に接すると思います。当たり前のことを当たり前にできるようにしか私にはできませんので」

と、普通の子なんだから今後も普通に生活すれば再犯は起きないという考えのようです。

そして、被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「今回逮捕されるのが初めてで、事件起こしてからどう思ってますか?」
E被告人「バカなことをしたと、やるべきではないことをしたと思います」
弁護人「被害者と被害店舗に対しては?」
E被告人「恐怖心を与えてしまったこと、営業を妨害したこと、申し訳なく思ってます」

と反省の弁を述べると、去年2月の寮を飛び出してからのことに質問の方向が変わります。

弁護人「失踪した理由は何ですか?」
E被告人「自分自身の能力が足りなくて仕事についていけなくなり、それで逃げ出しました」
弁護人「普通に、仕事辞めますと上司に言わなかったのは何故ですか?」
E被告人「上司が親身になってサポートしてくれていたので、能力不足が情けなくて言い出せなかったです」
弁護人「かなり追い詰められていたと?」
E被告人「そうだったと思います」

具体的にはわからないけど、許容量を超えた仕事にパンクしちゃったんでしょう。それにしても“普通”がよく飛び交う法廷だ。

次ページ:「能力不足で仕事が続かないというのが申し訳ないという気持ちで…」

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