2025年3月6日(木)、グランドプリンスホテル新高輪 「飛天の間」 において、ビジネスエンジニアリング株式会社が主催するフラッグシップイベント 「BE:YOND 2025」 が開催された。「DXを再考しこれからのデジタル経営時代に備えよ」 をサブタイトルに据え、製造業のデジタル変革に向けた知見を深める機会を提供、製造業界に関わる約1000人が来場した。本記事では、メインのイベントとなった基調講演から、K1、K2の内容を中心に紹介したい。
デジタル化の現状と課題
イベントのスタートと同時に、Keynote1 「これまでのDX、これからのDX ~グローバルリーダーと再考する真のDXへの道筋~」 が行われた。2018年の経産省DXレポート以降、日本企業のDXへの関心は高まったものの、その進展は依然として遅れている。本セッションでは、グローバル企業のリーダーとアカデミアの専門家を招き、日本の製造業におけるDXの実現方法について議論が交わされた。
モデレーターを務めたビジネスエンジニアリング株式会社
代表取締役社長 羽田 雅一氏は、日本の製造業のデジタル化の現状について触れ、コロナ禍を契機にサプライチェーンのデジタル化が急速に進んだことを指摘した。

これに対し、グローバル企業のリーダーであるSAPジャパン株式会社 代表取締役社長 鈴木 洋史氏は、ERPの導入が進んでいるものの、その活用が十分でない点を指摘。同じくグルーバル企業のリーダーを務める日本マイクロソフト株式会社 代表取締役社長 津坂 美樹氏も、生成AIの登場により製造業のデジタル化に新たな可能性が開かれており、今後のチャンスは大きいと述べた。


DXの本質と日本企業の課題
一方、アカデミアの立場から登壇した慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 研究科委員長 白坂 成功 教授は、DXを3段階で捉え、現在は第2段階にあると分析。第3段階では、産業横断的な連携が重要になると説いた。この見解を受け、鈴木氏はERPのクリーンコア化の重要性を強調。また津坂氏は、AIの活用による業務効率化と人材の有効活用について具体例を挙げて説明した。これに加えて、白坂教授はデジタル人材の育成には技術面だけでなく、ビジネスアーキテクトのような俯瞰的な視点を持つ人材の育成が不可欠だと主張した。

日本企業のDX推進に向けて
セッションの締めくくりとして、羽田氏は日本企業がデジタルカンパニーへと変革する必要性を強調。登壇者たちは、トップダウンとボトムアップの両面からのアプローチ、AIの積極的な活用、そして継続的な学習と適応の重要性について共通の認識を得た。
本セッションを通じ、日本の製造業がDXを推進するためには、経営者のリーダーシップ、技術の適切な導入と活用、そして人材育成が鍵となることが浮き彫りとなった。グローバル企業の知見と学術的な視点を融合させることで、日本企業が世界に伍して競争力を維持・向上させていくための道筋が示された。

三菱重工のDXブランド 「ΣSynX」 とは?
続いて行われた、Keynote2 「製造業のDX最前線~DXグランプリ2024を受賞した三菱重工流DXとは~」 では、三菱重工業株式会社
理事 デジタルイノベーション本部長 田崎 陽一氏と株式会社INDUSTRIAL-X 代表取締役 CEO 八子 知礼氏を迎え、Keynote1に続きビジネスエンジニアリング株式会社 代表取締役社長 羽田
雅一氏がモデレーターを務めた。
三菱重工業は、多岐にわたる事業分野を持つ巨大組織でありながら、「DXでデジタル技術とものづくりを『かしこく・つなぐ』」 をコンセプトにグループを挙げてDXに取り組み、2024年5月に経済産業省が選定する 「DXグランプリ2024」 を受賞した。このセッションでは、三菱重工業のDXの取り組みや様々な企業における事例を通じて、製造業DXの現状と未来に迫った。

田崎氏は、三菱重工業のDXブランド 「ΣSynX (シグマシンクス)」 について説明。このブランドは、多様な事業分野の強みを組み合わせ、標準化された部品を組み合わせながら、新たな価値創造を目指すもので、「かしこく・つなぐ」 をコンセプトに、IT領域とOT (運用技術) 領域を融合させ、プロセスの改善やお客様との距離を近づけることを狙いとしている。
具体的な取り組みとしては、ガスタービンの遠隔監視や、プラントの無人化技術、セキュリティ対策などが紹介された。田崎氏は、これらの技術を横断的に活用することで、エネルギー転換や物流自動化など、社会課題の解決に貢献できると述べた。

また、様々な製造業のコンサルティングを手掛けている八子氏は、製造業のDXにおける標準化の重要性を指摘した。多くの企業で 「俺標準」 と呼ばれる個別最適化が行われているが、全社的な標準化によって競争力を高められる可能性があると述べた。

モデレーターの羽田氏が、ITとOTの融合における文化の違いについて質問すると、田崎氏は当初は反発もあったが、セキュリティという共通の課題を軸に協力関係を築いていったと回答した。八子氏も、競争領域と協調領域を明確に分けることの重要性を指摘した。
セッションの最後に、田崎氏は三菱重工業のDXはまだまだクリエイティブな価値創出までには至っていない状況と自己評価しつつも、社員の知識やノウハウをデジタル化し、次世代に継承していくことの重要性を強調した。八子氏も、重工業からソフトウェアカンパニーへの変革の兆しを感じ取り、他の製造業にとっても大きな示唆になると述べた。
このセッションを通じては、製造業のDXが単なる効率化だけでなく、企業文化の変革や知識継承の手段としても重要であることが浮き彫りとなった。三菱重工業の取り組みは、多くの製造業にとって参考になるモデルケースとなりそうだ。
グランドプリンスホテル新高輪にて開催された今回の 「BE:YOND 2025」。ご紹介したKeynote以外も、19のセッションが行われたほか、B-EN-G及びパートナー企業など、36の展示が行われた。製造業界のDXをリードするB-EN-Gのフラッグシップイベントとあって、会場には多くの製造業界のビジネスパーソンが集まった。
尚、「BE:YOND 2025」 の公式サイトでは開催レポートがUPされているほか、スポンサー企業によるお役立ち資料のダウンロードもできるようになっている。

「BE:YOND 2025」 公式サイト
https://forum.b-en-g.co.jp/beyond2025/
ビジネスエンジニアリング株式会社 B-EN-G
https://www.b-en-g.co.jp/jp/