FINDERS

『エルデンリング』はなぜ1200万本売れたのか。「難しさ」もシェアするSNS時代のゲーム論【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(13)
  • CULTURE
  • 2022.03.19
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!

『エルデンリング』はなぜ1200万本売れたのか。「難しさ」もシェアするSNS時代のゲーム論【連載】ゲームジャーナル・クロッシング(13)

アーケード時代のコミュニケーションと非同期型ネットワークに見る、ヒットの予見

奇妙なことに、この『エルデンリング』を取り巻くコミュニケーションの在り様は、1980年代のアーケードゲーム文化に近いのではないかと思う。

当時は、一人用でも容易に攻略できない作品や、隠しコマンドや裏技など、対戦ゲーム等でも未知が多くあった。さらにインターネットも普及していなかったため、プレイヤー同士が一層攻略情報を共有したり、戦術について議論する余地が大きかったことで、一つの作品を巡るコミュニケーションが活発だった。

事実、ディレクターの宮崎英高が作った最初のARPG『Demon’s Souls』のコンセプトには原点回帰が含まれており、アーケード作品やファミコン作品など、ビデオゲーム黎明期の魅力を現代的に再構築した成果でもあった。つまり「難しい」「複雑だ」という作品からプレイヤー同士のコミュニケーションを促し、それが現代のSNS社会と相まって一層マッチしている。

ここで注目したいのが、宮崎が「原点回帰」に加え、ゲームの中に一種のSNSを導入した先見性である。宮崎は「同場性」を重視したネットワーク要素として、例えば、「メッセージ」と言ってプレイヤーがさまざまなメッセージを地面に書き残したり、「血痕」と言ってプレイヤーの死に様が他者に共有されるなど、それこそSNSのような機能を作中に備えている。(『エルデンリング』にもこの機能は継承されている)。

この「非同期ネットワーク要素」からうかがえるのは、まさに『エルデンリング』における困難を冒険によって克服していくゲームデザイン、その過酷さを裏付けるようなストーリー、そしてこれらを自分ごと化していくロールプレイにあって、プレイヤー同士のコミュニケーションを活性化しうる可能性だ。無論、最初から「SNS時代に向けたゲームを作ろう」と企画したわけではないだろうが、それでも本作には現代のデジタル社会に生きる人々に向けて、ある種の希望を与える作品だと思う。

事実、宮崎はインタビューなどで何度も重ねて「ユーザーさんに楽しんで欲しい」と話す。これほど難しいゲームを作っておいて、一体何が「楽しんで欲しい」なのかと憤る人もいるに違いないが、宮崎はそんな憤りさえもゲーム内で共有させようとしているのだ。

本作がヒットしたのは、圧倒的な完成度、そしてSNSにマッチするゲームの原体験もさながら、そもそも心の底からユーザーを楽しませたいというクリエイターの願いに最大の理由があるのは、言うまでもない。


ゲームジャーナル・クロッシング

< 1 2 3
  • Twitter
  • facebook
  • LINE
  • はてブ!
  • FINDERS_twitter

SERIES

  • 大麻で町おこし?大麻博物館のとちぎ創生奮闘記
  • あたらしい意識高い系をはじめよう|倉本圭造|経営コンサルタント・経済思想家
  • ゲームジャーナル・クロッシング|Jini|ゲームジャーナリスト
  • 高須正和の「テクノロジーから見える社会の変化」|高須正和|Nico-Tech Shenzhen Co-Founder / スイッチサイエンス Global Business Development
  • 阿曽山大噴火のクレージー裁判傍聴|阿曽山大噴火|芸人/裁判ウォッチャー
  • 幻想と創造の大国、アメリカ