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太陽光業界が大反発する「パネル税」の是非、一方で増える地方の行政コストを誰がどう負担すべきか【連載】ウィズコロナの地方自治(4)
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  • 2022.02.24
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太陽光業界が大反発する「パネル税」の是非、一方で増える地方の行政コストを誰がどう負担すべきか【連載】ウィズコロナの地方自治(4)

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谷畑 英吾

前滋賀県湖南市長。前全国市長会相談役。京都大学大学院法学研究科修士課程修了、修士(法学)。滋賀県職員から36歳で旧甲西町長、38歳で合併後の初代湖南市長(4期)。湖南市の発達支援システムがそのまま発達障害者支援法に。多文化共生のまちづくりや地域自然エネルギーを地域固有の資源とする条例を制定。糸賀一雄の発達保障の思想を社会・経済・環境に実装する取組で令和2年度SDGs未来都市に選定。

菅直人元首相が推進する「ソーラーシェアリング」とは何か

1月27日、日本外国人特派員協会が小泉純一郎、菅直人元首相らの記者会見を行った。「EUの原発グリーン認定に抗議」と題された会見だったが、2人の首相経験者がこの場でともに会見を行うのは2回目である。

会見の終わりには2人に対して「3回目の会見では新党の結成を発表してほしい」という注文がされた。中継しているニコニコ生放送のコメントには、新党脱原発、新党脱自民党、原発から国民を守る党、立憲共産再エネ党など皮肉に満ちた新党名称が流れたが、小泉元首相は「政界にはノータッチだ」とこれを煙に巻いた。

本稿は、この2人の元首相による脱原発という政治的立場を論じるものではない。ましてやこれからの政界再編を予想しようというものでもない。この会見で菅元首相が提示したソーラーシェアリングについて少し考えてみたいと思うのだ。

ソーラーシェアリングは農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組みで、農林水産省は「営農型太陽光発電」と称している。2020年3月に閣議決定された政府の『食料・農業・農村基本計画』では、「地域経済循環」の一環としてバイオマス発電や小水力発電と並んで「営農型太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入」が位置づけられている。

ソーラーシェアリングは、太陽光パネルの隙間から差し込む適度な光で農産物は十分に生育し、パネルが強い陽光や風雨を一定防ぐことで農産品の品質が確保される上に、パネルで発電された電力の利用や売電益が期待されている。

『食料・農業・農村基本計画』によれば、農水省が目指そうとしているのは農村の所得の向上と地域内の循環である。すなわち農産物販売収入と売電収入によるダブルインカムと電力の地産地消を同時に実現しようとするものである。

この「営農型太陽光発電」は、2013年の農水省農村振興局長通知で導入が可能になった。以来、2018年、2020年の2度にわたり規制が緩和されたが、2019年度までに一時転用が許可された農地と共有される太陽光発電は全国で2653件、742haであるとされる。

一方、会見で菅元首相は、500kW×1000h×400万ha=2兆kWhという数式を示した。この数字は、500kWが1haの太陽光発電パネルによる発電量、1000hが1年間の日照時間(1日3h相当で積算)、400万haは日本の農地面積と説明された。

2019年までに許可された742haは400万haと比べればわずか0.02%に過ぎず、まだまだ前途は遥かなるものであるが、畢竟、その目指すところは2兆kWhの発電ということになる。それは日本の年間電力消費量1兆kWhを賄って余りある。これだけの発電量が確保されれば蓄電技術の進展に伴いベース電源としてのポテンシャルも期待される。

岡山県美作市議会が議決した「太陽光パネル税」の衝撃

しかし、こうした農地のほとんどが都市部にはなく、いわゆる人口が疎な地域にあることは容易に理解できるだろう。また、エネルギーの多くは電力というかたちで人口が密集する都市部が消費していることも自明である。そして、人口は地方から都市へと移動し、農地を守る人手は減り続けている。

総務省が設けた自治体戦略2040構想研究会が2018年4月に取りまとめた第一次報告では「若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏」という衝撃的な内政上の危機が提示されたが、2014年以降続けられてきた地方創生の取り組みにも拘らず、その後も東京一極集中の流れが止まることはなかった。それをわずかに足止めしたのが新型コロナウイルスだったというのは歴史の皮肉である。

そうしたウィズコロナの時代に、農地を抱える地方においては、減り続ける税収を補うべく、国が支出する地方創生推進交付金や地方創生臨時交付金にますます依存しながら地方創生政策を展開しているが、効果を生じていない場合が多いばかりか、こうした中央から地方への税の流れそのものが国と地方を水平関係に置く地方分権改革を始めた当初の趣旨からすれば健全であるとは言えない。

地方分権推進計画』に基づき「事務の実施主体がその費用を負担するという原則」を踏まえつつ行われた国と地方の財政関係の基本的な見直しでは、地方一般財源の充実確保が謳われ、いわゆる地方分権一括法により新たに「道府県又は市町村は、条例で定める特定の費用に充てるため、法定外目的税を課することができる」(地方税法第731条)とされた。

法定外目的税は宿泊税や遊漁税、使用済核燃料税のほかは環境保護目的であることがほとんどである(産業廃棄物税、乗鞍環境保全税、環境未来税、環境協力税、廃発事業等緑化負担税など)。そこに昨年12月21日、新たな税目が加わった。岡山県美作市の「事業用発電パネル税」だ。市議会で2019年に提案されて以降、廃案や継続審議を繰り返した末に議決した美作市事業用発電パネル税条例は即日公布され、今後、総務大臣の同意を得ることになる。太陽光パネルを設置する売電事業者にパネルの単位面積当たりで課税しようとするものであるためパネル税と称されている。

去年発生した熱海市の土砂災害の例を引くまでもなく、森林を大規模に伐採して太陽光発電施設を設置することで山地の保水力が低下し、線状降水帯のような集中豪雨により災害につながりやすくなっている。新たな災害や環境破壊を生み出す原因者に対して予防や対応にかかる一定の費用負担を求めようとすることは理解できる。

美作市の試算ではパネル税は年間約1億1000万円の税収増につながるとしており、新たな地方財源として注目され、もし総務大臣の同意が得られれば全国の自治体に広がるのではないかと見られている。だが一方で固定資産税との二重課税ではないかとの指摘もある。課税標準(どの数値に税率を乗じるかという基準)が同じだからだ。太陽光発電普及の大きな障害となるとして業界では「断固として反対」する向きもある。

このパネル税は美作市に設置された国内最大の「パシフィコ・エナジー作東メガソーラー発電所」(出力約260MW、事業区域約410ha、パネル面積約236ha)がメインターゲットであることは公然の秘密であるが、それだけに政策税的側面が色濃く出ていると言える。その点、ここまで巨大なメガソーラーのない全国の自治体にはストレートに波及しにくいのではないか。筆者としても現行案には問題があると感じられるため、これを一般化していくことは望んでいない。

次ページ:「メガソーラー狙い撃ち」ではない、広く薄くの「利活用税」を作れないか

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