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自身の美容室で女性客に強制わいせつ。被害者が廃業を願っても煮え切らない発言の連続【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(33)
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  • 2022.01.25
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自身の美容室で女性客に強制わいせつ。被害者が廃業を願っても煮え切らない発言の連続【連載】阿曽山大噴火のクレイジー裁判傍聴(33)

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阿曽山大噴火

芸人/裁判ウォッチャー

月曜日から金曜日の9時~5時で、裁判所に定期券で通う、裁判傍聴のプロ。裁判ウォッチャーとして、テレビ、ラジオのレギュラーや、雑誌、ウェブサイトでの連載を持つ。パチスロもすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。

逮捕当初は犯行を否認

2022年最初の記事なので、あけましてお目立とうございます。今年も月に一度更新されますので、FINDERSを読んでいただけるとありがたいです。

年は新しくなりましたが、内容としては昨年11月と12月に行われた裁判の傍聴記です。

罪名 強制わいせつ
B被告人 美容師の男性(38)

起訴されたのは、2021年6月19日に東京宇都渋谷区内の美容室店内でB被告人が被害女性(26)の右手首を引っ張って乳首と陰茎を触らせたという内容。

検察官の冒頭陳述によると、B被告人はイギリスの理容専門学校を卒業後に美容師となり、2016年に現場である美容室を開業。B被告人はハントと称して、原宿の路上で、「60%オフにする」などと女性に声を掛けて、お客を見つけるスタイルで営業していたそうです。

犯行当日は、髪を切っている途中でB被告人が自分でTシャツをめくりあげて、「乳首触って」と言い、被害女性に無理矢理乳首を触らせ、さらに陰茎も触らせて射精したという。

聞いたこともないタイプの犯罪ですね。自分の店での犯行だと確実に足がつくわけで、そのあたりも理解しがたいといいうか。いろんな意味で気持ち悪い事件です。

法廷には実家からやってきたB被告人の母親が情状証人として証言台に立ちました。親戚がレストランを経営しているので、今後そこで働けないかと相談中とのこと。そして、今後は同居して監督していくと約束していました。

そして、被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「まず、今、被害女性に対してどう反省していますか?」
B被告人「髪の毛を美しくする立場でありながら、美容室でこんなありえないことをして、被害者の純粋な気持ちを深く傷つけ、そして、逮捕後も否認し続けて気持ちを踏みにじってしまいました」

言葉数が多くてポエム調なのが気になりますが、逮捕当初は否認していたようです。

弁護人「なぜこんなことをやったんですか?」
B被告人「男性と話すと緊張するんですけど、女性とは同性のように話せて、そこで魔が差してやってしまいました」

完全に相手を異性として見てる犯罪なんですけどね。その辺は後で検察官が追及することに。

弁護人「今後仕事はどうしますか?」
B被告人「大好きだった美容師という仕事を失いました。今後は両親と共に暮らし、新たな人生を歩んでいきたいと思います。妻がパティシエですので、小さな喫茶店でもやれたらと。そして、もし世間が許してくれたなら、その隣に小さな美容室でも…」

と、まさかの美容師再開宣言です。仕事中の犯行なのに、その仕事を続けると裁判で断言するなんて。職業の選択は自由ですけど、事件への向き合い方という意味ではちょっと疑問です。

すると弁護人も初耳だったのか、目を丸くして、

弁護人「え?えええ?美容師やらないでしょ?」
B被告人「ロンドンまで留学して、本当に好きな仕事なので世間が許してくれるなら…」

と、改めて再開したいと答えていました。世間が許すってのも、全国民にアンケートでも取るつもりなのか、何を意味しているのやら。

第2回公判でようやく美容師の仕事に見切りをつける

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続いて検察官からの質問。

検察官「今回の事件以外に同じようなこと、したことあるんですか?」
B被告人「美容師人生20年やってるんですけど、そういう関係になったことは何回かあります」

と、過去に似たようなことが複数回行われていたようです。

検察官「さっき、女性となら同性みたいに喋れたって答えてましたけど、完全に異性として見てる犯罪ですよね?」

B被告人「男性とは性的な話はできなくて、女性とならしやすくて…」

よくわからない答えですが、そもそも髪切ってるときにエロい話をしてくる美容師って一体…。

検察官「まだ美容師に未練があるんですか?」
B被告人「学校も含めると20年やって、美容師しか知らないので…」
検察官「被害女性はあなたの資格をはく奪して欲しいって言ってるんです!」
B被告人「被害女性が言っているなら、やりません」

と、今後は美容師廃業宣言です。10分の間に話が一転してしまいました。

最後は裁判官からの質問。

裁判官「被害女性が資格をはく奪して欲しいって言ってるの知らなかった?」
B被告人「はい、今、知りました」

多分、調書に書いているから検察官が言及したと思うんですけどね。調書をちゃんと読まずに初公判を迎えている印象を受けますね。

裁判官「さっき他にもあるって話してましたよね?」
B被告人「お客様と性的な関係になったことがあります」

性的な関係って「お互いが了承した上でホテルに行った」とかの言い回しじゃないんですかね。美容室の店内でのわいせつ行為を性的な関係って。

裁判官「今は認めてますけど、逮捕当初は否認していたんですよね?」
B被告人「はい。強制っていうのが無理矢理というイメージだったので否認してたんですけど、取り調べで『店内でこんなことしてるのがおかしい』とか『被害者も悲しい思いをしている』って言われて」

この答えを聞いた裁判官は驚いた顔をして、

裁判官「んん?じゃあ、この起訴状に書かれていることをやってる時はどう思ってたの?」
B被告人「その時は話の流れで犯罪とは思ってなかったです」
裁判官「じゃあ、逮捕当初の否認してた時が犯行時のホントの気持ちなんじゃないの?」
B被告人「いや…罪悪感はありました!」

どっちなのやら。ここでも話がコロコロとしてるんですよね。未だに何が悪くて何が問題なのか理解していないまま証言席に座っているようにも思えてきます。被告人質問はここで終了して、初公判は閉廷でした。

そして、3週間後の12月16日に第2回公判が行われました。弁護人としてはこのままではマズイと思ったのか、追加で被告人質問です。

弁護人「初公判の後、弁護士事務所でどんな話をしましたっけ?」
B被告人「こういうことをするのは病気かもしれないので、カウンセリングを受けたいですと」
弁護人「予定はどうなっていますか?」
B被告人「来週月曜日に都内の大学病院で先生に診てもらうことになっています」
弁護人「仕事はどうするんですか?」
B被告人「おじさんがレストランを経営しているので、そこで働くことになりました」

治療が必要だと自分から動いて、美容師の仕事にも完全に見切りをつけたようです。初公判の時点でここまで向き合えていればよかったんでしょうけど。

このあと、衝立もの向こうにいる被害女性の意見陳述です。冷静に落ち着いて朗読していたけれど、怒りに満ちているんだなとわかる内容になっていました。今後二度とハサミを持って欲しくないし、原宿にも来ないで欲しいとのこと。

そして、検察官が懲役2年を求刑して、第2回公判は閉廷となりました。

判決が言い渡されたのは、12月24日。結果は懲役2年執行猶予4年でした。裁判官は判決理由の朗読を終えると、

裁判官「前回、前々回の法廷で約束したことは非常に重いものですから、しっかりとやり直してください」

と付け加えて閉廷でした。

裁判中に誓ったことは守ってくれよというのが裁判官の想いなんでしょうね。何をもって反省と見るのかは難しい話だけど、「世間が許してくれるなら小さな美容室を…」は事件に向き合っていたら出てこない言葉じゃないのかなぁと。


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