CULTURE | 2021/09/29

InstagramがNFTを使って目指すものはユーザのインセンティブ?【連載】NFTが起こすデジタルアートの流通革命(8)

Photo by Shutterstock
小学生の夏休みの自由研究で作ったピクセル画が、NFTマーケットプレイスで3...

SHARE

  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • line

Photo by Shutterstock

小学生の夏休みの自由研究で作ったピクセル画が、NFTマーケットプレイスで380万円という金額で売れました。このニュースが出てきて、にわかに日本のメディアが騒ぎ始めています。ある番組で紹介していたのを見ていて、「この説明でNFTが分かるのかなぁ…」と思っていたら、某テレビ局から電話が掛かってきて急遽、リモート取材を受けました。

NFTをよく知らない初心者向けに説明してほしいとのことで、テレビ局の担当者が調べた中では、私の記事がとても分かりやすかったとか。調子に乗って、1時間、NFTについて質問を受けて答えていました。だんだんNFTも広がってきているのを感じます。

足立 明穂

ITトレンド・ウォッチャー、キンドル作家

シリコンバレーで黎明期のインターネットに触れ、世界が変わることを確信。帰国後は、ITベンチャー企業を転々とする。また、官庁関係の仕事に関わることも多く、P2Pの産学官共同研究プロジェクトでは事務局でとりまとめも経験。キンドル出版で著述や、PodcastでITの最新情報を発信しつつ、セミナー講師、企業研修、ITコンサル業務などをおこなうフリーランス。

リークされたInstagramのNFT機能

さて、日々、いろいろなニュースが出てくる中で、InstagramがNFT機能を開発しているのではないか?という情報がリークされました。今回は、InstagramがNFT機能を使って何を目指そうとしているのか考えてみたいと思います。

まず、今回のリークされた状況を整理しておきましょう。そもそもは、アプリ開発等をやっているアレサンドロ・パルッツィ氏が、「Collectibles」(コレクティブルズ)という新たに開発されている機能にNFTの機能も作られているというツイートでした。

ユーザーが投稿した写真をNFT化し、さらに他のユーザが入札できるような仕組みがあるということで、NFT化した写真を売買できるようになっています。購入するのは、仮想通貨ではなくドルで支払う(おそらくクレジットカード決済)ようになっているので、これがリリースされたら、NFTを購入する人たちが増えそうです。

この件について、Instagram側も新しい機能を開発していることは認めたのですが、詳細については何もコメントせず、まだ、発表できる段階ではないとしています。ただ、2021年5月に「The Information」というウェブメディアの取材に対して、InstagramのCEOアダム・モセリ氏が、NFT機能を検討していることは明かしているので、NFT化する機能は間違いないでしょう。

Instagram’s Mosseri Is ‘Exploring’ Subscriptions, Open to Creator Fund

Instagramの写真をNFT化することの意味

詳細は発表されていないので、ここからは推測になるのですが、InstagramにとってNFTはどういう意味を持つか考えてみようと思います。

SNSでの投稿がNFT化されて売買されるというと思いだすのは、Twitter共同創業者のジャック・ドーシーのツイートが約3億円で落札されたこと。

このツイートは、Cnetが運営するNFTマーケットプレイス「Valuables」で販売されました。「Valuables」は、Twitterと連動させることができ、ツイートをNFT化して出品することができます。また、面白いのは、欲しいツイートがあれば、入札してその価格などがツイートしたアカウントに通知されます。承認されれば、無事、落札できて支払いが行われる仕組みになっています。ただ、イーサリアムでの支払いやメタマスクの操作も必要なので、誰でも手軽にという状態ではありません。オファーがあったとしても意味が分からないTwitterユーザもいるかと思います。

「Valuables」は、Twitterと連動してはいるのですが、ツイートに含まれている画像については、Twitter側にあります。つまり、NFTマーケットプレイス側には存在していません。言い換えると、ツイートしたユーザーが削除すれば、NFTで所有権を購入したとしても消えてしまう可能性があります。

では、今回、InstagramがNFT機能を追加した場合はどうでしょうか。この場合は、Instagramが自らNFTマーケットプレイスを運営することになるので、Instagramにアップされた写真データをNFT化すれば、元々アップした人であっても所有権が変更されているから削除することはできません。これは、Twitterとは大きな違いです。

また、リークされた画像を見る限りでは、NFTの購入はイーサリアムのような仮想通貨ではなく、ドルで決済できるようです。こうなれば、これまでのハードルが高かった仮想通貨で購入するとかメタマスクを使うといったことも必要ありません。

Twitterのツイートよりも、はるかに大きなNFTマーケットプレイスが登場することになりそうです。

次ページ:NFTによって「いいね」が価値を生む?

next