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食事のテイクアウトアプリがなぜ70億円超を調達?アフターコロナを牽引する可能性を秘めた「Snackpass」
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  • 2021.09.27
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食事のテイクアウトアプリがなぜ70億円超を調達?アフターコロナを牽引する可能性を秘めた「Snackpass」

毎週1社ずつ、気になるスタートアップ企業や、そのサービスをザクッと紹介していくシリーズ「スタートアップ・ディグ」。第1回は2017年にアメリカでローンチされた、食事のテイクアウトアプリ『Snackpass(スナックパス)』。

テイクアウトアプリといえば『menu』をはじめ日本にもいくつかあるので、「特別さ」をあまり感じさせないけれど、投資家からの評価は上々の様子。今年に入ってからもおよそ7000万ドル(約77億円)の超大型の資金調達を実施するなど、注目を集めているんだとか。さまざまな独自の方針を打ち出し「レストランでの体験の近代化」を掲げているみたいだけれど、一体なにが「特別」なのだろう?

文:赤井大祐(FINDERS編集部)

企業価値4億ドルの期待の新星

Snackpassはアプリを通して事前に注文を行い、食事をテイクアウトできるサービス。日本でも新型コロナの影響によって、主にファストフードやファミリーレストランを中心に事前注文型のサービスが普及してきた。けれど、2017年にサービスローンチということからも分かるように、こちらは出自が少々異なる。

共同創業者のケビン・タン、ジェイミー・マーシャル、ジョナサン・キャメロンの3人は、イェール大学の4年生であった2017年にSnackpassをスタートさせた。2017年といえば、日本でもUberEatsが対象エリアを東京23区全域に広げるなど、デリバリーサービスが勢いを増したタイミング。当然世界に先駆けるアメリカでは、すでにサービスが大きく普及した後だ。

しかし、UberEatsをはじめとしたデリバリーサービスは、人件費がかかるため価格も高くなる。アメリカと比べ物価の安い日本でさえ、マクドナルドで月見バーガーセットを注文するだけで1200円もかかるんだから、学生が気軽に利用できる金額ではない。そもそもキャンパス内ではデリバリー需要もそこまで高くない。これらに目をつけた3人は、イェールの学生たちをターゲットに、「キャンパス周辺の飲食店からテイクアウトしてきた食事を友人と一緒にキャンパス内で食べる」という建て付けでサービスをスタートさせた。

現在では全米13の大学都市に、およそ50万人を超えるユーザーを獲得。企業価値も4億ドル(約442億円)を超えるとされている。アメリカを代表するベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツが発表する「2021年最も大きな市場を獲得したスタートアップ企業ランキング100社」にも選ばれた。

Snackpassは飲食店のレジの前から行列をなくし、そして5年後にはレジ自体をなくすことを目標に掲げているというが、これだけ多くの期待が寄せられているとなると、あながち非現実的とも言えないはずだ。

サービスのキモはソーシャル機能にあり

Snackpassは「Food meets friends」という言葉をスローガンとして掲げている。これは同社の強みが単なるテイクアウトの予約システムにではなく、独自の「ソーシャル機能」にあることを意味しているだろう。そしてこれこそが数多のテイクアウトアプリと一線を画す部分かもしれない。

ユーザーはアプリ内でフレンドを作ることができる。TwitterやInstagramのように不特定多数の人とつながるのではなく、Facebookのようにキャンパス内の友人同士でつながるのが一般的な使い方のようだ。フレンド同士では、食事をギフトし合うことが可能だったり、誰が誰にギフトを送ったかがフィード上で確認することができたりと、積極的にアプリ内・外においてコミュニケーションを促す仕組みが備わっている。

また、Snackpassを利用して食事を注文すると、次回の注文時に使うことができるポイントを入手できるのだが、そのポイントもフレンドにギフトとして送ることが可能だ。そしてフレンド間でやり取りされたポイントは、ちょっとしたゲーム要素に使うことができる。アカウントは最初「卵」を所持した状態で始まり、ポイントのやり取りを行うことでそれを孵化させ、「Chickens」という鶏のキャラクターを生み出す。さらにポイントを使い、Chikensにサングラスをかけさせたりとカスタマイズしていくことができる。

Chickensを使ってポイントを増やすこともできるようだが、ユーザーのサービスへのモチベーションを絶やさないためのちょっとした仕掛けなのか、それ以上に発展性があるのかは正直よくわからない。しかし、1つの軸となるサービスに異なる要素を掛け合わせることで、ユーザー体験を向上させる手法は今後もさらに増えていくことを予感させる。

加えて、絵文字(emoji)を多用するスタイルも非常に今らしい。アプリ内の説明文から採用情報に至るまで、テキスト+絵文字、あるいは絵文字のみによっての説明が基本形として採用されている。大学生を中心とした若者世代にとっては非常に馴染み深い表現方法であるのは言うまでもなく、少し前に話題を呼んだ写真共有アプリ「Dispo」においても同じ手法が見られた。

アメリカの大学においてすでに絶大な支持を集めるSnackpassだが、今後日本にも進出してくる可能性があるのだろうか。学生御用達のラーメン屋や居酒屋こそあれど、大学スポーツや地域で生まれるカルチャー、企業との関わりなどを包括する大学都市という概念は比較的希薄。早稲田や京大など、それなりの規模感と地域とのリレーションを持つ場所においてはある程度機能するかもしれない。

日本においても、新型コロナウイルス収束後の社会において、人々が街に繰り出し、交流を重ねる動きがこれまで以上に活発化すれば、現在のデリバリー主体からテイクアウト主体へと移っていく可能性は十分にあり得るだろう。一方で、日本のデリバリー大手「出前館」が公募増資などによって800億円の調達を行うという発表もあったように、このタイミングで一気に勢力を伸ばす動きも見られる。ともあれ、食事へのアクセスの仕方は今後ますます変化していくだろう。


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