ETH Zurich / Iwan Hachler
文:岩見旦
人口増加と気候変動により、水資源不足が世界的に深刻な問題となっている。沿岸部であれば海水淡水化施設により解決できるだろうが、内陸部ではそうもいかない。
そんな問題を解決すべく、スイスのチューリッヒ工科大学が画期的な装置を開発したとの研究発表が、6月23日付の『Science Advances』に掲載された。
24時間稼働を実現
大気中に水は分子のカタチで存在している。これまでも大気中から水を取り出して液体に変える装置は存在していたが、大量の電力を必要としたり、それ以外のものは昼夜の温度差を利用するため夜間しか稼働できないなど、さまざまな課題を抱えていた。
そこで同大学の研究チームは、電力不要で24時間稼働できる空気から飲料水を取り出す装置を世界で初めて開発した。この装置は特殊なポリマーとシルバーでコーティングを施したガラス板で作られており、太陽光を反射するとともに、内部の熱を外部に放出する仕組みになっている。

またこれらのガラス板は円錐形の放射シールドに収められており、排出した熱がガラス板に戻ることを防ぎ、太陽光からの熱も遮断する仕組みになっている。その結果、装置は周囲より15度低い温度まで冷却することができ、大気中の水分を液体に変えることが可能となった。冬の時期、窓ガラスに結露が起きるのと同じからくりだ。また、ガラス板の下部には撥水性コーディングが施されており、水が効率よく収集できるようになっている。
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