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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)
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  • 2021.07.19
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反ワクチン派に負けないための経営コンサルタントからの提言。ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる!【連載】あたらしい意識高い系をはじめよう(18)

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おかげさまで先週半ばに、ワクチンの一回目を接種できました。住んでいる自治体がやっている大規模接種なので、モデルナの方です。

副反応についてみんなが煽りまくっているので、個人的にものすごく緊張していたんですが、まず刺した針もそんなに痛くなかったですし、副反応も次の日にちょっと痛みがあった程度で済みました。

なんかこう、「ほっとした」というか、「拍子抜けした」というか、もちろん、危機感を煽ってくれたおかげで、ちゃんと前日の睡眠を確保しようとか、水分をたくさん摂ろうとか、そういう準備が出来たことが良かったのかもしれませんが、それにしても、今のような

「ワクチン打とうかどうしようか迷っている層」を全力で躊躇わせるような周知の仕方

は変えてもいいんじゃないかと思います。

今回はそのあたりの「あるべき周知の仕方」も含めて、経営コンサルタント視点から、「反ワクチン派」に負けずにワクチン接種を進めていくために私たちが考えるべき課題について考えてみる記事です。

倉本圭造

経営コンサルタント・経済思想家

1978年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業後、マッキンゼー入社。国内大企業や日本政府、国際的外資企業等のプロジェクトにおいて「グローバリズム的思考法」と「日本社会の現実」との大きな矛盾に直面することで、両者を相乗効果的関係に持ち込む『新しい経済思想』の必要性を痛感、その探求を単身スタートさせる。まずは「今を生きる日本人の全体像」を過不足なく体験として知るため、いわゆる「ブラック企業」や肉体労働現場、時にはカルト宗教団体やホストクラブにまで潜入して働くフィールドワークを実行後、船井総研を経て独立。企業単位のコンサルティングプロジェクトのかたわら、「個人の人生戦略コンサルティング」の中で、当初は誰もに不可能と言われたエコ系技術新事業創成や、ニートの社会再参加、元小学校教員がはじめた塾がキャンセル待ちが続出する大盛況となるなど、幅広い「個人の奥底からの変革」を支援。アマゾンKDPより「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」、星海社新書より『21世紀の薩長同盟を結べ』、晶文社より『日本がアメリカに勝つ方法』発売中。

1:ワクチン接種は今後「マーケティング」の戦いになる

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まず、これはビジネス的な視点では普通の発想ですが、実際のワクチン接種に関わる「医療関係者」や「行政関係者」の方々にはひょっとすると新鮮かもしれない観点をシェアしたいのですが、

「接種を呼びかけるメッセージは、“その受け手の種類“によって変えることが望ましい」

という考え方があります。

たとえばスマホを売りたい時に、「スマホを使ったことがない、スマホとは何かがわからない」人にメッセージを送るのと、「日々スマホを使っている人」相手では伝えるべき内容が違いますよね。「競合他社のスマホを使っている人に乗り換えてもらう」場合と「自社のスマホを使ってくれている人に買い替えを呼びかける」場合とでもあるべきメッセージは違います。

これは非常に大雑把な例ですが、もう少し実際のビジネスに近い例を出すと、日本でデータ分析を元にしたマーケティングで大きな成果を出していることで有名な森岡毅氏(ユニバーサルスタジオジャパンを経営危機から立て直した功労者)が、独立後に丸亀製麺の立て直しに関わった事例では、「家でうどんを食べる層のうち実際に“外食で”うどんを食べるのは10人に1人しかおらず、まずはそこを掘り起こすために“プロが作る外食のうどんはすごいのだ、ハンバーグやラーメンと同様に外食の選択肢に挙がるべき食べ物だ”ということを伝えるメッセージを出した」ことが日経クロストレンドのインタビューで紹介されています。

このように、マーケティングにおいて、「メッセージの受け手」の像を描くことで「伝えるメッセージの内容を明確化すること」を「ペルソナ設定」と言いますが、ワクチン接種の呼びかけにおいても今後こういう発想が大事になってくるのではないでしょうか。

というのも、今はワクチンを打ちたくてたまらない人の数がワクチン接種の供給を上回っているので、「接種のロジスティクス」をうまくやるだけで接種が進みますが、ワクチン接種が進んだ他国の例を見ても、接種率が上がってからより重要になるのは「打とうか打つまいか迷っている」ような層にいかに打ってもらうか…という「マーケティング」的な部分だからです。

アメリカなどでは「ワクチン接種に宝くじが付いてくる」など、次々とキャンペーンを打っては、その効果をデータで確認して(“宝くじ案”は促進効果はいまいちだったそうです)ブラッシュアップされていっているようなので、日本でもそういう専門家が対策会議に入ると良いのではないか、と私は考えています。

ワクチン接種の「後半戦」には「ロジスティクスよりもマーケティング」が最重要になってくるでしょうし、そもそも今の「人流を制御する」ような対策でも、もう少し対象のペルソナを明確化したメッセージの発し方に工夫の余地があるのではないかと感じています。

いわゆる「広告代理店」的な専門家ではなくて、上記の森岡毅氏のような「対象ペルソナを明確化し、データに基づいて明確化したメッセージを発することができるマーケティングの専門家」の活躍の余地が、今後の日本のコロナ対策においては非常に重要になってくると私は考えています。

2:「強い反ワクチン派」の人に無理やり打たなくても集団免疫は可能である

私は「森岡毅氏のようなバリバリのマーケティング専門家」とはとても言えないぐらいのもっと一般的な経営コンサルタントなのですが、とりあえずウェブ記事的なレベルで、この「マーケティングの発想」をワクチン接種に応用することを考えてみましょう。

ここで大事なのは、

SNSで目立つ「反ワクチン派」に引っ張られず、むしろ「打つ気は一応ある」層を取りこぼさないことが接種率向上のカギなのだ

という発想だと思います。

つまり、接種率向上のためにはあの“敵”である反ワクチン派を「やっつける」ことが必要だと感じてしまいがちな人が、医療関係者・行政関係者には多いように見受けられるのですが、そこの優先順位を変えることが大事な「ビジネス的発想」ではないかと思っています。 そもそも、反ワクチン派の人はどれくらいいるのでしょうか。

少し古いデータですが、1年前にグローバル調査会社のイプソス・モリが去年7月から8月にかけて世界27カ国で行った調査によると

日本では「やや賛成」が51%、「強く賛成」が24%と、4人に3人が肯定的に答えていて、「やや反対」が20%、「強く反対」が5%だった

だそうで、元々日本人の75%は今回の新型コロナワクチン接種に前向きであることがわかります。これは想像より案外多いと私は感じました。

もう少し新しい調査を探すとむしろこの数字は上昇傾向にあるようで、今年2月に国立精神・神経医療研究センターなどのグループが行った調査では、「接種したい」が35.9%、「様子を見てから接種したい」が52.8%と、「一応は接種に前向き」な層が合計9割近くいることになります(「接種したくない」は11.3%)。

日本は国際的に見ても新型コロナワクチンが信頼されていない率が非常に高いというインペリアル・カレッジ・ロンドンの有名な国際調査(リンク先PDF)もあるのですが、他の日本語で行われた接種意向調査との乖離が非常に激しく、英語の質問表の翻訳におけるよくある「日本人の答える癖」的なバイアス(偏り)があるのではないかと私は思います。

英語直訳調に「あなたはワクチンを“信頼”していますか?」と聞かれると、「えー、そりゃあちょっと怖いですよねえ」

半数近くの人が答えるんだけど、

「ワクチン接種しますか?」と聞かれると、「はい、まあ一応様子を見て受けようとは思っています」

と9割近い人が答える

というのが、日本人的には「その感じ、わかる(笑)」と目に浮かぶような気分の実情ではないでしょうか。

これをさらに踏み込んで考えると、日本においては「一応接種する気がなくはない層」のボリュームは大きい(9割近い)が、その“心理的抵抗感”は世界一レベルに高いので、「接種するつもりはなくはないがダラダラと先延ばしになってしまっている」的な状況に陥る人が多くなることが予想されるため、そこをしっかり狙ったメッセージを発していく必要がある…という仮説が立てられるかもしれません。

ともあれ、集団免疫に必要な接種率は諸説あって、というか変異株によって基本再生産数があがればそれだけ必要な接種率も変動してしまうので、確定的なことは言えないわけですが、上記調査の数字を勘案すれば、

・接種に非常に前向きな層に確実に打ってもらう

・「迷っているが一応打つ気はある層」での打ちもらしを防ぐ

これだけで、おそらく集団免疫レベルの接種は可能であると考えられます。

つまり少なくとも当面の間は、

「強固な反ワクチン派」を必死に転向させるよりも、「元々賛成派」あるいは「やや反対」派を、いかに「なんとなく接種しない」的なことにならないよう誘導できるかにかかっている

ということですね。

むしろ、「打つ気がないわけじゃない」というような層に確実に接種会場に行ってもらうことや、「一回目打ったけど二回目が面倒くさくなってやめちゃった」みたいな層をいかに取りこぼさないか…について全力で対策を打っていく必要があると言えるでしょう。

この「グレーゾーン」にいる人にはいろいろな「ペルソナ」があるはずで、例えばマーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが今年5月に実施した調査には、もう少し年齢・性別などに細かく分類した接種動向のデータなどが出ています。

特に20代男性や30代女性といった若年層は「順番が回ってきても、あまり接種したくない」の回答割合が他世代より多く(20代男性が20.0%、30代女性が21.8%)、一方で上の世代は言われなくても打ちたい気持ちが高い人が多いので、「対策担当者が出すメッセージ」の焦点をどう作っていくべきか、「老人だけの話だろ」で終わらせないためにどうしたらいいか…について練られたメッセージを、タイミングを見計らって出していくことが今後重要になるかもしれません。

また、「一応打つ気はなくはない」ぐらいの層に「アクション」を起こしてもらうためには、かなり明確なペルソナ設定で「自分ごと」だと思ってもらい、そのウェブ広告なりを見た瞬間「お!そうだった!」とその場でスマホを取り出して予約作業をしてもらえるようなコミュニケーションが必要になってくる可能性があります。

このあたりへのアプローチについて、対策担当者がマーケティングの専門家の手を借りられるといいと思うのですが、どうでしょうか。

次ページ 3:とはいえ大事なのは「空気」のマネジメント

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