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DNAマッチングサービスで出会った相手を愛せますか?【連載】DEAR HUMANITY(1)
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  • 2018.07.25
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DNAマッチングサービスで出会った相手を愛せますか?【連載】DEAR HUMANITY(1)

私たち未来予報株式会社は、さまざまな企業と共に未来像をつくる事を生業としています。(FINDERSでの未来予報インタビューはこちら

これまで数年間、新技術や新ビジネスをネタにした”ポジティブな面だけの未来像”を予報として発信してきました。しかし、技術の進歩と並行して価値観が多様化し、実際に社会の変化を目の当たりにしながら、それだけでは表現しきれないことが多々あることに気付かされました。この連載では、あえて見ようとしなかった面に焦点を当てていきます。どんなに技術が進歩し時代が変わっても、変わらない人間の本質を描くことで、未来の行く先を深く考えるきっかけになるのではと考え、自戒の意を込めてタイトルを「DEAR HUMANITY」としました。

第1回目のテーマは恋愛です。生涯未婚率が2割となり家族の形も変わる中、結婚をゴールとする恋愛の価値観は古いものになりました。子孫を残す事が重要と考えられる世界では、最も効率の良いのが<男女1対1>と教え込まれたため、恋愛にも多大なる影響を与えてきましたが、果たしてそこに縛られないとしたら? 年齢や性差を超えた自分らしい恋愛を求める人、 逆に何モノかに決められた運命的な出会いを重要とする人が多くなる<かも>しれません。そういう時代に出会った、とあるカップルの日常を覗いてみましょう。

未来予報株式会社

未来像<HOPE>をつくる専門会社

大手メーカーやスタートアップとともに、リサーチに基づく未来のストーリーやビジュアルを作り出している。『10年後の働き方』(インプレス)を発売中。

文:未来予報株式会社(曽我浩太郎/宮川麻衣子) イラスト:アベタケル

「ねぇ、トモヒロ。この娘どう?かわいいし、音楽の好みも合いそうだよ」

「うーん…そうだね。住んでるところも近いしとりあえずコールしてみるか...」

私はトモヒロと最近流行りのチェーン店チャンスにいる。

ここは趣味嗜好が合う人とビデオチャットで出会えるというカフェ・バー。彼の新しいパートナーを探す手伝いをして、まさにこれから連絡してみるところだ。

「あ、初めまして。トモヒロと言います。今、一緒にライブ行ってくれるような人を探しててコールしたんです。彼女はいますがポリアモリーなので、そういうのがOKであればぜひ。……あ、はい。わかりました。じゃあキープしておくので僕のプロフィール見てもらって、興味を持ってもらえたらメッセやりとりしましょう。では」

トモヒロはコールを切って、苦笑いしながら話す。

「でもさ、エリカ、お前、俺とまったく合わせるつもりないのな。趣味合わないのわかるけどさ、それってどうなん?」

私たちはジーン(遺伝子)マッチングで出会った。れっきとした彼氏彼女のカンケイ。

でも、たまにこういう事を言ってくるのが面倒くさい。

好きなものが違うって、小さい事気にしすぎ。わざわざ分かち合おうとしてくれなくても、十分トモヒロには満足なのにな。私たち二人に必要な会話じゃないって事をわかってほしいから、さらりとかわしたつもりが逆に火をつけたようだ。

「俺は運命だって思ってる。色んな出会い系やって探し続けて…。でもやっぱそこに答えは無いって気付いた。そんな時に、君、エリカ現るだよ。やっぱり遺伝子が決めてくれたことに間違いはなかったってすごく思う」

またこの話が始まった…。トモヒロは何度この話をしただろう?

「もっとエリカとわかりあいたいと思ってるだけだよ。好きな音楽の話しして、映画一緒に見てさ。趣味の合わない俺と行くよりも、いつもの友達やパートナーと行った方が面白いのもわかるけど、俺は君の好きなものに少しでも触れたい。そう思うのはダメなのかな?」

私もいつも通り、こう切り返す。

「私たちは、DNAレベルで相性がいいと認められているわけだし。結婚するかは別として、いつかは子どもを作れるかもしれない。だからこそ、あなたも私だけに依存しないで、他に色々なパートナーを探してみた方が、絶対うまくいくと思うの。一人の相手に何もかも求めても、重いだけよ。私たちは良い所を伸ばし合えばいいじゃない。しかも、私もあなたのパートナーと仲良くなれる。それって最高の関係だと思う!だからこうして喧嘩しないために、パートナーを探しに来てるんじゃない。話し合いよりも素早い行動よ」

私はポリアモリー(同時に複数の人と交際する恋愛関係。当事者全員が合意した、誠実で継続的な関係のこと)。トモヒロは最初は戸惑ってはいたものの、今は理解してくれてるはず。結婚や出産も今の段階でまったく考えていない私がこのサービスを利用した理由は「遺伝子レベルで惹かれ合う運命の人」が本当にいるのか気になったから。結果、些細なケンカがありつつも関係は良好なまま続いてるし、別に何もしてなくても一緒にいるだけで心地がいい。どうやらお互いのフェロモンが本能的に結びつきを強くしてくれてるんだって。頭で考えてもしょうがないってこと。理由なんて特にいらないって信じれるのが、さすがDNAマッチングだと思う。

トモヒロがまだ納得していない事が少し怖くなったから、帰宅途中に念押しするメッセージを送った。

「ねぇトモヒロ。絶対3人でやりとりしようね。何してもいいけど、彼女と2人だけの秘密を抱えちゃダメよ」

その後、トモヒロは私をグループに追加した。

“私たち”は、もっとうまくやっていけるはず。

既にDNAマッチングサービスは始まっている

多様化する恋愛観の中で、お互いに自分の体に刻まれた「DNAが最適なパートナーを決めてくれるはずだ」という物語にとらわれる2人。

この2人のカンケイが、この後どのように続いていくのか気になるところですね。

実はすでに、DNAのマッチングサービスは始まっています。

10年で50カ国の実績を持つジーン・パートナーでは、HLA遺伝子(免疫系)が遠ければ遠い程惹かれる可能性があるとしています。進化の過程で近親交配をしないために遺伝的に遠い相手に惹かれるという仮説を示しながら、多くの良好な関係のカップルを被験者にしてデータを集め、それを基に相性を診断しているそうです。惹かれる匂いや生殖力(妊娠初期の着床不全の可能性が低くなる)、生殖能力が高まり健康的な子どもに恵まれやすい、という要素などからマッチングに導きます。

ジーン・パートナーによる日本語の検査キットの説明映像

夫婦間のセックスレス問題の救世主としてロボットが活躍する?!

一方、恋愛観の変化も著しいです。

出会い系アプリで次々と新しい人を探し求めることができる時代に「この人こそが運命の相手だ」という確信が得られにくくなっているという話も、現代ではよく聞く話題です。決め手を何に求めるか?その後押しの一つとして、DNAというものに運命的なものを感じてしまう人も出てくるかもしれません。

一方、ソフレ(添い寝友達)・セフレ(セックス友達)・キスフレ(キスをする友達)・カモフレ(恋人ごっこをする友達)...といったキーワードが世間を賑わせたのも記憶に新しいかと思います。

恋愛に限らず、小学生からスマホで知らない人と出会う事に慣れ、共通の趣味をもつ人を見つける事が当たり前になった世代の人たちは、趣味ごとの友達の延長として、役割別にパートナーを探していくことにも抵抗がなくなる世界もありえますよね。

もしくは、そのパートナーに人間を選ばないという選択肢もでてきました。実際に、米国でセックスロボットを開発するrealbotix社が、交換用顔面のパーツも含め今年販売を開始したニュースも記憶に新しいです。ついついセックスロボットとの孤独な恋愛を想像してしまいますが、セックスレスを原因に別れるカップルにとっては、セックスロボットの導入が関係を長続きさせる解決方法の一つにもなり得るでしょう。

セックスロボットを開発するrealbotix社のティザームービー

より自分らしい恋愛スタイルを求めて

また、性的マイノリティ(LGBTQ)など多様な性的嗜好への理解とともに、多様な恋愛観が話題に挙がることが多くなりました。1対1の恋愛関係に固執する考え方についても、疑問符がついてきています。エリカさんのような “ポリアモリー(浮気や不倫とは違い、全員を誠実に愛する複数愛。全てのパートナーに合意を得た上で関係を構築する)”は米国でも注目をあびており、ポリアモリー専門の出会い系アプリも登場。日本でもポリアモリーに関する書籍が発行されています。

いくつかの海外の出会い系アプリではポリアモリー/オープン・リレーションシップを明記する人々も出てきだしているのが現実です。2030年には生涯未婚率が男性で約30%、女性では約23%になると2013年の厚生労働白書では予測されてますが、その時にはこれまでとは異なる家庭観や恋愛観の変化が起こってくると言えるのではないでしょうか。

ポリアモリーのコミュニティアプリ「PolyFinda」

人生100年時代、「知らない人」との出会いよりも「知ってる人」との関係を強化したい欲求が強くなる

コミュニケーションアプリのトレンドに変化も現れ始めています。

米国の有名ビジネスイベントSXSW<サウス・バイ・サウスウエスト>では、2018年のテーマの一つとして「URL to IRL (In Real Life:現実世界)」が話題になりました。 今までは知らない人同士をつなげる事が多かったコミュニケーションアプリですが、身近な人との関係をより強くするようなサービスが注目される兆しも感じ取れます。

家族や恋人、友達同士との関係をマネジメントしてくれるマイクロCRMサービス「Go Happy」

平成30年版「情報通信白書」によると日本人は他国の人たちと比べてSNSやインターネットで知り合った人を信用しないというデータが出ていて、先日話題になっていました。同書によると、日本人はオンラインだけでなくオフラインでも、なかなか人を信頼しないという調査結果も出ています。関係性を深めていく事に苦手意識があるのかもしれません。パートナーとの関係をサポートするエージェントをはじめ、大切な相手とのコミュニケーションを促す技術がもっと出てきてくれるといいですね。

どんな出会い方をしても、良い恋愛になるかどうかはわかりません。

パートナーとの愛をどう育てていくのか、対話を忘れないようにしたいものです。

(次回の未来予報「DEAR HUMANITY」は8月20日頃公開です)


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